過去最高数の製品開発(ロッド&ルアー)が併行し、いっぱいいっぱいの小塚です。
“専用”ロッドが必要な釣り、および日本人気質で開発された特化型国産ルアーの世界は、言うまでもなく奥深い……面白い!!
だからこそ超汎用・Dear Monsterの、その粋(すい)を集めたとも言える“Z”のスピニングモデルの価値を再認識している今日この頃です。
前置きが長くなりましたが、(個人的には)遂に遂に「MZ-6S」の詳細ページが公開となり、受注が開始の運びとなります。
長かった……思いついた究極的(=“Z”)なアイディアを、何年も寝かせ黙っておくことの苦痛ったら無い!笑
まずは詳細ページを熟読いただければと思いますが、今回は「前編」として「MZ-6S」単体、これ1本でできること、1本の中での使い方の多様性について、釣果写真や開発の流れと対応させ説明します。
(夫婦竿「MZ-7」との互換性と、それに伴う圧倒的な拡張性の展開は「後編」で!)
ディアモンスターのM“X”やM“V”シリーズ、ディアモンター以外のハンターズ(HTシリーズ)含め、モンスターキス社製のロッドは全て50cm以下仕舞寸ですが、中でもM“Z”シリーズは更にコンパクト「40cm以下仕舞寸」です。
まずここが、ひと目でわかる大きな特徴。
下写真、上が仕舞寸50cmの「MX-7S」、下が今回深掘りする「MZ-6S」です(また後述しますが、ガイドサイズ・ボリューム感にも注目を)
50cmと40cm……この10センチの差は、写真以上に、実際に携行する際に実感するかと思います。
50cmは機内持ち込み可能サイズのスーツケースや、30Lの日帰りハイキングクラスのバックパックにも収まるサイズ感ですが、40cmとなると、普段A4サイズのノートパソコンや書類を持ち歩くビジネスバッグに収まってしまいます。
50cm仕舞寸(ケース込みでゆとりを持って機内持ち込み可能なサイズ・長辺60cm以下)でも充分に短いし、モンキス以外ここまで追い込んだ仕舞寸規格を設けているブランドを知りませんが、その仕舞寸へのこだわりを、更に発展させると、キリよく10cm短くなりました(50cm以下しかり、キリよく、が好きです)。
先行して発売された「MZ-7」同様、Zシリーズのガイドセッティングは、破損が多くなるトップガイドのみSiCリング(チタンフレーム)、その他の負担の少ない他ガイドはトルザイトリング(チタンフレーム)という、耐久性に配慮しながら、最軽量の組み合わせ。
その上で、スピニングロッドにおけるこれまでの常識ではあり得ない「Wフットガイド」かつ「シングルラッピング」セッティングを選択しました。
下のイメージ図をご覧ください。
“ファイト時、スピニングロッドはガイドを内側に巻き込む方向にブランクがベンドするため、力を逃がせないWフットガイドはカーボンブランクに両脚(Wフット)が刺さって破損につながる”……と言うのが「MZ-6S」開発以前の常識でした(少なくともモンキスの開発スタッフの中では)。
ですので、Wフットガイドを使う際は、クッションとして1層下巻きし、その上からガイドを乗せてもう1層ラッピングするWラッピング構造(モンキスでも「MX-5S」「MX-7S」「MX-9S」に採用)がモンキスのスピニングロッドの基本構造。
現状、例外的に、力を逃がせるシングルフットガイドで下巻き無しで巻く、シングルフット・シングルラッピング構造も選択肢にしてきました(“ディアモンじゃないから”と言うことでハンターズ「HT-6×4S」には採用)。
誤解無きように書き添えれば、スピニングロッドに関してシングルフット・シングルラッピング構造がむしろ主流で、片脚のぶんガイドパーツ自体が軽い&構造がシンプルなため安い、巻きつけるスレッドもWフットWラッピングと比較すれば単純計算で1/4の重量・巻きつける手間となるなど、軽量化およびコストダウンに合理的なため、他社の多くのスピニングロッドにはメインに採用されています(わざわざ“ウリ”にはならない)。
……この辺りのことを気にすることなく、Wフットをシングルラッピング仕様で使っているブランドもあるかもしれませんし、「MZ-6S」発売以後は採用するブランドも増えると思いますが、少なくともモンキスは、考えた上で、これまでやってこなかった。
こと「HT-6×4S」は(最後まで迷いはしましたが)強度に関して検証不足でダブルフット・シングルラッピングセッティングを搭載するよりも、他社さん含めた長い年月による最適解を、“常識”を尊重し、結果、シングルフットガイド&シングルラッピングの(耐久性はある程度犠牲にしつつも)軽量化・コストダウン方向への恩恵を選択したわけです。
……が、「過去の“常識”は(一定の敬意を払いしつつも)疑え」が僕(小塚)のモットー。
コロナ禍で開発期間を長く確保できたこともあり、試しに「MZ-7」のプランクにダブルフットガイドをシングルラッピングして個人的に納得がいくまで……あんまり公表したくないですがとある魚を散々イジメて強度劣化を検証した結果……モンキスの“Z”シリーズのブランク(“X”や“V”とも素材グレードや構造が違う)に関しては、意識的に結構無茶に使っても強度低下は見られませんでした。
ガイドは位置含め、夫婦竿「MZ-7」との互換による爆発的に拡張性が高まるアイディア(「後編」に詳しく)は「MZ-7」の開発が終了した2019年の時点で、既に固まっていました。
ただ「Wフット・シングルラッピング」の検証は、時間をかけて自らやらなければ“Z”とは言えないだろうと、リリースが遅くなりました(「MZ-7」の発売開始当初から「必ず、いずれ“Z”のスピニングモデルも出す!」と明言していたのはそのため)
その後、チラ見せできる程度までデザインを整えてからは、実際のフィールドでも、負荷の大きいフロッグや、瞬発的な力がかかるロックフィッシュなど、意識的にブランクをイジメる釣り、バットが曲がり込み“脚が刺さる”(刺さりそうになる)までベンドする釣りを優先的に行い、検証を重ねてきました。
脱臼肩の手術など、2022年秋、ブランクの仕様確定に前後してドタバタしたのも良き思い出……上写真のキジハタは、写真映えするので固定具を外して写真撮影しましたが、この日は下写真のような体調でした笑。
医師には絶対安静を言い渡されており、肘を脇腹に固定した状態でしか釣りができなかったけれど、この状況・タイミングでも、最終テストをやらないと“Z”として自信を持って送り出せないなと。
繰り返しになりますが、“Z”シリーズの特徴として、ガイドには現状利用できるリングパーツで最軽量のトルザイトリングモデルをメインに採用していますので、フジ工業さんのパーツ手配に時間がかかるんですよ(「MX-39」でもメチャクチャお待たせしましたね……)
ガイド自体は、ブランクの仕様確定の更に何ヶ月も前に、ゆとりを持って(最終的に使わないかもしれれない分のガイド含め)発注してありましたが、ブランクの使用感調整には、ガイド設定決定後も執拗に最適解を模索しました。
標準ティップ変遷(上画像)。
最上段が開発着手前、叩き台としてスピニング仕様で曲げ込んでみた「MZ-7」のティップ、それを元に中段が「MZ-6S」用にパワーと整えたプロト、下段は最終的にガイドを3つ→4つに増やした最終プロト。
開発初期は「MZ-7」で感度向上に卓効のあった“段差レングス”(ベリーからティップにかけて仕舞寸を短くする)にこだわったけど、最終的にはそれを手放しても、実際の使用感の良い方を。
“スピニングロッドにダブルフット・シングルラッピング”という“非常識”(=新常識?)は別に、この竿で特徴的な構造は、ディアモンスターシリーズとしては初の“替え穂”を付属すること。
あくまで“Dear Monsterであること”(オールWフットガイド)を大切にしながらも、これまでディアモンスターではできなかったことをやろうと。
“付属”(替え穂)と言う形で、シングルフットガイド&シングルラッピングと言う領域に一歩踏み込む、2023年のテーマたる「Make Progress」することに。
下画像、上段がWフットWラッピングの標準ティップ、下段がシングルフット・シングルラッピングの替え穂ティップです。
「MZ-7」のブランク流用による叩き台サンプルでのWフット・シングルラッピングの強度検証を終え、「MZ-6S」専用ブランクの本格テストに移ったのが2022年夏。
「シングルフット・シングルラッピング、だからこそのティップのパワー感じゃないと“替え穂”を作る意味がない」
標準ティップとのバランスで仕上がったベリー〜バットのパワー感とバランスが取れる範囲ギリギリで、ブランクに負担をかけにくいシングルフットガイド(&シングルラッピング)だからこそ可能なパワー感(弱さ)を、径は思い切って細くしよう……この辺りは「HT-6×4S」の開発における経験を根拠に、パワー感を設定しました。
「NUDE」の経験を根拠に、一時はソリッドティップも考えましたが……ベリー〜バットはショートレングス(6フィート弱)のスピニングロッドとしては類を見ないほど強く作った結果、チューブラー(中空構造)のティップでもベリー以下との強度のギャップで、ソリッドティップ的な使用感(穂先にアタリを濃縮する感覚)が出せた。
「“ディアモン”にソリッドにまでは……要らんな」
実際に工場でサンプルを作って以降、これまでのディアモンに無かった穂先感覚がクセになり、国内では9割替え穂で使うことに。
替え穂の変遷(上画像)。
ガイド数4つでテストを進めましたが、最終的に思うところあってガイド数は5つに。
替え穂のプロトが届いてまず向かったのは……川のチヌ、それもフロッグ縛り!
コロナ禍の日本で、「MZ-6S」で想定するコロナ明けの海外釣行に最も近い釣りが、自分の引き出しの中ではこの釣りでした。
僕の中で「MZ-6S」は、“ややこしい”場所でレアな珍魚を獲るための一撃必殺系の竿。
具体的には、アジアに30種以上生息する小〜中型ライギョを釣り歩く為に開発した、“(アジアの)ライギョ用スピニングロッド”。
そんなニッチすぎる個人的モチベーションを、コロナ禍の日本国内事情(=地元北陸)でテストできる数少ないシチュエーションが、清流域でブッシュに絡めて食わすクロダイ釣りでした。
ライギョ類同様にやたら口が硬く、障害物に依存して潜む……そこに対応して求められる強度を。
……後日談になりますが、仕様確定後に店頭イベントに足を運んでくださったパストーナメントに出場するプロアングラーに触ってもらったところ「(口の柔らかい)バス用パワーフィネスロッドの、その1段階上のバットパワー」と表現していただきました。
「こんな竿見たことないッス」……(替え穂ティップの繊細さに対して)異様に強いバットパワーを持ってます。
アジアの美しき小〜中型ライギョ達を求める旅は、清流・渓流域まで広がっていくでしょう……そこには、日本の渓流トラウト(ヤマメやイワナ)の感覚を振り切ってしまうパワーを見せる渓流系コイ類(マハシール)も生息する……もちろん、それも釣りたい!笑
せいぜい50cmのイワナが最大魚という日本(本州)の渓流とは異なり、アジアの渓流釣りは、突然メーター絡みの魚が、重戦車のようなコイ目がヒットする。
そんなマハシール類と比較すれば鈍重とはいえ、「MZ-6S」のパワー感が日本でズバッとハマるのが、ヤマトゴイ(ややこしいですが外来のコイ、コモンカープ)のサイトフィッシング。
日本国内どこにでもいるターゲットで、場所・状況によってはパンで一撃なわけですが、上写真のように小型フロッグやトッププラグで狙って釣り重ねると、結構シカトされたりもして、それはそれで面白い。
オープンスペースでの中型サイズ(〜70cm程度)なら「MX-1」なんかで遊ゔのが楽しいですが、本気でコイを狙う場合、最大個体(80アップ)を選んで掛けたり、障害物がらみのポイントで狙うことを考えれば「MZ-6S」くらいあると安心です。
その気になればいくらでも釣れる釣りなので真面目に写真は撮ってませんが、先述の“Wフット・シングルラッピング”の強度検証に際したイジメ……近所で「MZ-6S」をバットまで曲げてくれるターゲットとして、コロナ禍のヤマトゴイには“テスト”で大変お世話になりました笑。
そしてコロナ禍と共に“テスト”は終わり、“検証”の舞台は、冬の日本を離れ地球の裏側へ……。
「細かいことできる竿“シングルの穂先”やっぱいいわ!」
2023年1月、仕様はすでに確定し、量産を待つタイミング。
“華向け”的な気持ちでアマゾン・ブラジルへ行ったつもりでしたが……正直「MZ-6S」無かったら更にキツかったわという状況。
同じ釣りを繰り返すのが嫌いな僕ですが、改めて見てくださいな、魚の口にはことごとくフェザージグという現実!笑
こんな海外、アマゾンもあるわけで。
「海外で“テスト”を繰り返す」……なんてことはコロナ禍ではできませんでしたが(誇張も嫌いだし)、その存在意義・価値をしっかり“検証”、“確認”して、受注開始になります。
70ある無しクラスの中型ピーコックなら、何の不安も感じない……スピニングなら、意識的に暴れさせないこともできますからね。
モバイルロッドのパイオニア・Dear Monsterとしての“誇り”。
海外遠征のトップランナー・Monster Kissの“誠意”。
海外での実釣や実績無し、机上の空論(妄想)だけでリリースはできない。
大好きな海外遠征を、“売り”(にだけ)はしない。
過去の実績にアグラをかかず、常にチャレンジャーとして今現在に汗をかこう!
だって、“Z”(現状の到達点)を世に問うが、この竿だから。
ディアモン全機種そうですが、ハイエンドカテゴリたる“Z”は、実用品でありつつも、アート作品でもあると考えています。
工業製品として機能面の突出したのであること、“用の美”の追求は必須として、そこに思想・精神性(メッセージ性)が有るか、無いか。
ホントに“Z”を冠して恥ずかしくないか?
真に“かつてない”を世に問うているか?
……アマゾンから帰り、暖かくなってきた春の富山で、受注開始を前に今一度プチ使い込み。
しばらく使わない期間を経て、一度クールダウンしたマインド・フィーリングで、改めて投げ直す。
テストが進行中の“専用”系・特化型ロッド群と比較しても、「あらためて、なんちゅー尖った……でも、ラクな竿だ!」と再認識。
(ディアモンとしては)極端に繊細なティップと、世にある6フィート以下のスピニングロッドとしてはおそらく最“硬”レベルの異常に強いバットの共存。
尖っているけれども、使えるシチュエーションはめちゃめちゃ広い。
「行けば釣れるんだろ」と思われガチな、海外のハイポテンシャルフィールドでの実績だけでもダメ。
逆に超地元、近所の富山湾でも“この竿を作ってよかった”と言う感動が、確かにあった。
「痩せてれば50アップ(個人的な長年の目標)だったな〜また会おう!」とリリースした、春のホタルイカ食いキジハタ47cm……でも、まだまだ。
別日には、ウデが試される(比較される)舞台、乗合船でのシーバスジギングに「MZ-6S」で1本勝負。
見回せばボウズの方の方が多かった状況・船団の中で、値千金のデブデブの個体を掛け、PE0.6号で取り込んだ。
“ダブルフットガイド・シングルラッピング”、“シングルフット・シングルラッピングの替え穂”の2大特徴に続き、より細かいレベルでのこだわり。
中でもまだわかりやすい「MZ-6S」の特徴として、上写真でも映るスピニングロッドとしては極端に小さいバットガイド、(そのまんまですが)“スモール・バットガイドシステム”(KW12M)。
このクラスのスピニングロッドなら20〜25mmガイドをバットガイドとして入れるのが一般的だと思います(一例として「MX-7S」は25mm、今一度の下写真)。
でも、旅に心を置くならば、スピニングロッドであってもより小さなバットガイドが最適解(モーメントが小さく破損が少ない)だと信じて疑わない。
改めて使い込んで、使用感の部分で、今後スピニングロッドはこういう方向に向かう製品が増えていくんじゃないかな?とまで思ってる。
「“飛距離”(=常識的な方向性)に囚われすぎるな、魚に近づく方法はそこだけじゃないんだ!」
騙されたと思って使ってみてほしい、あからさまに感度・使用感の向上が体感できると思います。
スピニングロッドにおける“スモール・バットガイドシステム”……突飛な構造ではなく、古くは「MX-6」のスピニングモード(バットガイドKW12mm)に始まり、10年来トライ&エラーしてきたこと。
最近では「MX-1」のリールモード(バットに誘導ガイド5mm)で自分なりの検証を重ねてきた部分。
マルチピースロッドだからこそ……旅に心を置くゆえに、といった制限要因が、少しずつクリアにしてきた景色。
その可能性を、“サブモード”としてではなく、ハイエンド機種に搭載するに至るレベルに感じているということ。
お行儀の良いマーケットイン(求められてるものを作る)じゃなく、プロダクトアウト(「ホントに求めてたのはこれでしょ?」と提案)が、ディアモンスターの本懐。
実際、細いPEライン(1号以下)を使う限り、飛距離低下は気になるレベルかというと自分はそうは感じない。
その時々の風や、ルアーの飛行姿勢のばらつきの方が、よほど飛距離に大きく作用する印象……。
この辺り、ガイドのサイズ設定については、夫婦竿「MZ-7」との互換も考慮した結果になるので「後編」で!
最後に、その他特徴的な構造を駆け足で。
ディアモン・スピニングロッドのお家芸、アップロック・ダウンロックの2WAYシステムも、もちろん搭載。
デザインの好み云々も、ないではないけど……アマゾンで使って確信したのは、どちらが良い、じゃなく、握りを変えられる(使う筋肉を多少なり動かす)こと自体に価値があると思ってます。
握りを変えるだけで、疲労感は軽減する。
また、上画像3セクション、グリップにロゴデカール部(Dear Monsterと印字)まで繋いで、ブランク仕舞寸の40cmピッタリ。
逆にいうと、このグリップレングスから逆算して、ブランクのパワーを下げていきました。
この辺りの“キリよく”加減、使用感を損なわない範囲での整合性・整然性が、僕が“Z”に求める“美しさ”。
……とりあえず、「MZ-6S」単体編はここまで。
(スピニングロッド「MZ-6S」の登場で、ベイトロッド「MZ-7」の潜在能力も一気に花開く!)
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