「常識など、変えてしまえ」。“ゲーチェン”受注開始に寄せて、1年弱の釣果を総ざらい。

テスターの川上克利です!

拠点を新潟から関西に移しまして、遠征に加えて、新しい居住地の周辺環境の把握(ライギョ・アリゲーターガー)など、まぁ釣り狂っています(笑)


ロッドはもちろん「HUNTERS HT-∞∞ “Gamechanger”」、通称“ゲーチェン”。

先のレポートでも説明させていただきましたが、「HT-∞∞」は“ゴーテン”(フロントグリップ無し)と、“ロクハン”(フロントグリップ有り)と、パワー系ロッドとしては類を見ないショート&ロングの2レングスを選べるロッドです。


受注開始に先立って、僕と“ゲーチェン”の歴史まとめてみようと思います。

……2022年10月、シンガポールから帰国した翌週くらいだったでしょうか?

公開可能なプロト(デザインがほぼ製品版と同じ)を受け取って、まずは滑り込みで地元ライギョでとりあえず入魂。

10gちょいの「BATRA-X」を投げてみて、“要望”が反映されているか確認。


繊細である必要は全くない、ただしブヨブヨしたダルい竿、エサ釣りにしか使えない竿は勘弁。

単純な筋肉量(ブランクの厚み)で、軽負荷時には“硬さ”すらも感じたい、と……。

「んー、もっちょい欲しいッス!」

ティップはもう少し硬く、とソッコーで修正オーダー。

使用感(主にティップ)は人間側のテスト、基準とする釣り(自分はライギョ)があれば、数時間も投げれば充分です。

一方、パワー(バット部)のテストには消化不良感が残りました。

「このロッドの“本気”は、晩秋の地元・新潟じゃ引き出せないっス!

魚に問わねばわからない部分のテストを……最初に連れ出した旅は晩秋の関東圏でした。


最初の“好敵手”はマダラエイ。

最大で100kgクラスになる、日本国内で岸から狙える最重量級ターゲット。

「“テッペン”からやったりますわ〜」なんて軽口叩いて新潟を出発。

関東での用事の隙間を埋める形で利用遠征を計画、結果、島に滞在できる日数は3日間。

突発的な旅は、いつも通り完全単独行。

時間が限られ、協力者もいない……ラインブレイクは避けたかったのでメインラインは石鯛用のPE15号をチョイス。


異形のゲストたちに楽しませてもらいつつも、本命は遠く。

「サクッと釣れる魚ではないのかな?」と覚悟してはいましたが、順調に時間は過ぎていき……本土へのフェリー出発まで残り4時間、時間ギリギリで釣獲に成功。


岩場での単独ファイト、時々体が“浮く”ような感覚があり、本気で生命の危機を感じました。

曲げ込んでからは粘る“ゲーチェン”ですらこのザマですから、吸収性の無いロッドだったらと思うとゾッとします

特に僕のように体の軽い(約60kg)アングラーは、マジでナメてかからない方がいい。

月並みな表現で悔しいですが、事実として、少なくとも自分にとっては“ゲーチェン”を使ったからこそ獲れた魚だと思った。

自分の肉体(筋力・体重)で、どれだけ魚にプレッシャーを与えることができるのかの最大値……この旅でHT-∞∞の“本気”(正確には“僕が引き出せる本気”)を把握することができました。


マダラエイ狙いで離島へ渡るに前後して、エサ釣りにルアー釣りにと、秋の東京湾を東奔西走。

ビッグベイトシーバス船では、当たり前かな、「メガドッグ220」(オリカラのMKイトウ、130g)も遠慮なくフルキャストでき、80クラスのシーバスであれば容易くぶち抜く事ができるの……かなり快適。

ボートにはネットが用意されているのですが、マズメのラッシュ時なんかはあっちこっちでヒットし、ネットがフル稼働なんてことも多々あったわけで。


ネットが空くまで足元で疲労させるよりは、サクッと抜いて、フック外して蘇生に入った方が魚にも優しいのかな?なんて。

魚のサイズや体型、掛かり所によっては、抜いた際に口周りを損傷する事もあるので一概には言えませんが、”必要であれば抜ける”という選択肢が増えることは、マイナスは無いと思います。


ショアからのぶっ込み釣りではアカエイにホシザメ。

野良アオウオ(利根川水系の再生産個体以外)にも“再会”。

アオウオは他のコイ類と比べて最初の突っ込みがめちゃくちゃ強いのですが、僕の野良アオウオのポイントは都市河川で、ラインを一切出せないガチンコ勝負のポイント。

前年「HT -7/8」で掛けた時よりも強引に寄せる事ができ、今回はヒヤヒヤすることはありませんでした。


季節はいよいよ真冬。

「より硬く」とオーダーしたティップも仕上がり、「とりあえず今時期、国内ではこれが限界かな?」と海外遠征を計画。

選んだのはガイアナ共和国。

実際に水辺に立ってみると、思ってた以上にハードシチュ。

ぶっ込み釣りでの超大物を目指しジャングルの深部へ向かう過程で、先にルアー釣りから“ゲーチェン”のアマゾン旅が始まりました。

早々に気付かされたのは、「これは最低5号タックル、できれば10号タックル無いと、いい魚は獲れないな」ということ。

改めて、「HT-∞∞」はブッコミ釣りを想定したロングモードを標準セッティングとするロッドですが、可変長システムによって、ショートモードではルアーのキャスティングゲームに用いる事が可能になります。

「想像以上にルアーで使える」と気付いたきっかけは、ピーコックバスでした。


このポテンシャルの魚を、立木の中のシャローで掛けたら、かなり強引なファイトが必要になってくる。

結果から書くと、「HT-∞∞」をルアー釣りであってもメインに据えた判断は、ドンピシャ。


終始ラインブレイク”ゼロ”でピーコックを釣り続ける事ができました。

今回、僕がガイアナで行き当たった状況は、リーダーは“最低”でも100ポンドは必要、140ポンドをメインにそれ以上を使いたいフィールドでした。

HT-∞∞」のティップ周辺のガイドセッティングは8mm、トップガイドには更に大きい10mmを搭載し、太リーダーの抜け具合が抜群。


立木やハードシチュでいかにキャッチ率を上げるかと言う部分ですが、「ヘビー級ロッド+太糸+太軸シングルフック」が個人的最適解。

シングルフックとトレブルフックでは、ブッシュに入られた魚を引きずり出せるか、確率が大きく変わってきます。

まず第一に、シングルフックに交換すれば、ブッシュにルアー(フック)が刺さってしまう確率が減る。

加えて、シングルフックなら、同重量ならより太く強いフックを搭載できるため、同じルアーでも1段上のパワータックルとバランスが取れる、トレブルフックではフックが開いてしまう小型ルアーをHT-∞∞のようなパワーロッドで扱えるわけです(今回はロッドの話なので、いずれ別の機会に説明します)


一生に一度しか無いかもしれないチャンスを、タックルパワーを理由に逃すのは悔しすぎると思いませんか?

“最適”でなくても構わない、それなりに、“無理なく”使えるか……そのバランス。

「こいつにしか」という部分があって、他は目をつぶれる最低ラインを超えてくれるか……今回“ゲーチェン”に助けられた点、(持参タックルにおいて)唯一無二の個性は「太リーダーを使えるデカいガイドセッティング」でした。

……とここまでは20g前後の、比較的軽量ルアー(「Banheiro」等)でのお話。

50gを超えるような重量級ルアー(ビッグベイト)では話が変わってきます。


HT-∞∞」は”ハリ”がある訳では無いのですが、そもそもがそれなりに硬いので、ビッグベイトを用いた釣りでは、“使える”ではなく、“使いやすい”と感じられるフィーリングで釣りをする事ができます。

「PE10号+140lbリーダー」の組み合わせで、ハードシチュに躊躇なくビッグベイトを放る事が出来る。

その結果として障害物にタイトに、積極的に通す事ができ、バイト数もかなり稼げましたし、ラインブレイクが原因で魚を取り逃す、ルアーを喪失するなんて事はありませんでした。


旅的スタイルでの釣行においては、ビッグベイトも嵩張る荷物。


最小限の数(ガイアナにはプロトルアー含めて4個)しか持って行っていないので、ロストは避けたかったわけです。


……先にサブ用途(?)のルアー釣りからアマゾンでの話を始めしまいましたが、メイン用途のエサ釣り(ぶっ込み釣り)では、南米といえばのレッドテールキャットをキャッチ。


なんだかんだで3個体ほど釣りましたが、パワー不足は一切感じず。


語弊を恐れずに言うならば”瞬殺”、少し物足りないくらいでした。


南米のぶっ込みといえばカショーロも。


ルアーではフッキングに難があるこの魚ですが、ぶっ込み釣りでは比較的ラクにキャッチに至れます。

そして個人的に釣りたかったタライロンも“ゲーチェン”で獲る事ができました。


掛けてから滅茶苦茶に暴れる魚。

写真の背景からも読み取れる通り、完全に岩場と立木の複合ポイント、ストラクチャーについている魚で、止めきらないと獲れず、ドラグでズルせずパワー対パワーでぶつかるしかない相手なのです。


口周りは相当に硬く、太軸のフックを叩き込むには相当なパワーが必要になります。

言うなれば牙のジャングル、加えて大口を開けてエラ洗いするので極めてバレやすいと言う厄介な相手。

フッキングと同時に岩から引き剥がす必要があるので、全身を使って思いっきりフッキングします。

こんな時に竿の強度なんか心配してたら、獲れる魚も獲れません。

この竿に感じる”絶対的な安心感”は、迷いのない最大限の入力を可能にしてくれていると思います。

南米釣行の最大の目的、世界最大級の有隣淡水魚であるピラルクとも対峙しました。


ピラルクという魚は体力こそ少ない印象を受けましたが、2mを超える魚ともなると重量があるのでファイトもそれなりにヘビーでした。

「獲れるかどうか」には不安はなかった。

気にしていたのは、釣った際のリリースがかなり難しく、死んでしまう確率が高いという先輩方による経験の蓄積。

メディアが意識的に発信していない(と思う)部分ですが、モンキスのテスター諸氏には、だからこそ“生涯一本”と決めている先輩も複数おられると聞いています。

僕も、ファイト中から蘇生のことを考えていました。

ヒットした巨体を迅速にリリースに適した場所に誘導する必要がある。

2mオーバーの魚をコントロール下に置く“支配力”、必要以上に暴れさせない“優しさ”すらも兼ね備えたロッドが、ことピラルクーと言う魚には必要になってくると思います。

豪快な首振りなど求めない、体力を消耗させないで獲る為に……出来る限りの短期決戦で蘇生に移りました。


このピラルクは蘇生に成功し、今もガイアナ共和国のラグーンで泳いでいるかと思います。

その後も大から小まで様々、“ゲーチェン”との旅を楽しみました。

……南米釣行のメインターゲット2種(ピラルクー&タライロン)を“ゲーチェン”で釣りあげ、既に春めいてきた日本に帰国。

帰国の足で、この時期の東京湾の人気ぶっ込みターゲット、ベイシャーク(ドチザメ)釣りへ!

船からのスタイルで周知された東京湾のドチザメですが、現在、時期を選べばショアからも比較的高確率で狙えます。

そんな“ショア・シャーク”は、多少の飛距離が必要になってくる釣りなので、ロングモード(6フィート6インチ、”ロクハン”レングス)でフルキャスト!

いいポイントまで仕掛けを届かせる事が出来ると、反応も早い。


開始早々に自己記録のベイシャークを釣り上げ、一旦新潟に帰りました。

……翌週は、深海魚狙いで再度関東に訪れるも荒天で中止に。

船からのバーチカルな釣り(深海)にも、この竿の潜在能力を引き出せる世界があるかと思いますので、継続してアンテナを貼っていきたいと思います。


船の釣りは、資金的にも現在の自分だけではどうにもならない部分があり、ならばと春のソウギョを触って関西へと拠点を移しました……。

引越してすぐ、ナマズ相手に使い込み。


ガイアナのアイツを想いながら、「Arapaima」(アラパイマ)で。

そして本命、昨年“クラッシュ旅”で川合テスターと惜敗した、ビワコオオナマズへ再チャレンジ。

デッドベイト(ぶっ込み釣り)、ルアーと、“ゲーチェン”の標榜する両スタイルで釣り上げました。


上の魚はエサで。


こちらはルアーで。

尻尾が三角形の髭野郎も……。


また、同水系に生息している良型ブラックバスも。

この魚ほど専用ロッドが発売されている魚もないわけですので、あくまで“お遊び”と謙遜させていただきますが、まぁ、ご覧の通り。


ショートモードであれば、短さの恩恵もあり、”感度が絶望的に悪い”という事もなく、国内におけるルアー釣りでも無理やり感は無いなという印象。


ハイシーズンの日本国内でもひと通り試した上で、ぶっ込み釣り”しか”出来ない竿では無いと断言できます。


そして、ライギョ。

“ゲーチェン”との旅も、思えば昨年晩秋のライギョから始まりました。

ティップが硬く(フロッグが扱いやすく)修正された“ゲーチェン”を、いざハイシーズンのカバーに投下。


ライギョ釣りは幼少期より、僕の根幹となる釣り。

昨シーズンは「HT-7/8」メインで地元・新潟を釣り巡り、シーズンの最後に“ゲーチェン”で試し釣りをしてシーズンオフになりましたが、今年のライギョシーズンでは、引っ越した関西圏で「HT-∞∞」のみを使用しています。

一部のライギョマンが“ゲーチェン”と似たようなテイストの竿を好んで使っているという話を耳にし、僕自身も”曲がる剛竿”「HT-∞∞」を使いこんでみている段階ですが、今のところ曲がらない系の雷魚竿と比べたメリットとして、バラシが少ないようには感じています。


バーブレスフックが基本である雷魚釣りにおいて、ロッドの“追従性”は間違いなくプラスになる要素。

かといって弱い竿で藻ダルマを寄せて来れない。

端的にまとめると”弱い”と”曲がる”は全然違うという事です。

実際に「HT-∞∞」を曲げてみると、「意外と曲がる」といった印象を受ける方も一定数いるかとは思いますが、”弱い”と”曲がる”は全然違いますし、”強い”と”硬い”も異なる意味合いになるのです。

”曲がる強い竿”は釣り人の負担を減らしつつ、魚にプレッシャーを与え続けることができる。

自分よりも遥かに巨大な相手と対峙するにはこの上ないテイストなのです。


製品ページのスペックではライン上限が12号となっていますが、個人的には、ブランクのパワー感をイメージしていただくための参考数値とお考えいただければと思います。

上で紹介したマダラエイはメインラインは石鯛用のPE15号、他にもMAX30号まで使用してテストを重ねており、先日手にした国内某所でのアリゲーターガーなどは、絶対に走らせられないシチュエーションで竿に全体重を掛けて止めるしか、獲れなかった。


PE30号(耐負荷108kg)であれば切れることもないと判断、結果この魚もファイト時間10秒以内でぶっこぬき、決着させる事ができました。

それだけのパワー、それだけのポテンシャルを持っているロッドなのです。


……以上、2022年秋から1年弱、“ゲーチェン”で手にした印象的な魚を総ざらいしてみました。

“深海”など不完全燃焼の領域は残しつつも、とりあえず「この竿1本で、こんだけ魚が釣れましたよ」ということです。


上写真は、ガイアナから帰国した時の写真。

リュック1つで手ブラ……今更ながら“ゲーチェン”は仕舞寸50cmのモバイルロッド

「パックロッドは弱い」だとか。

「アマゾンの巨魚には1&ハーフ」だとか。

ぶっ込み釣りだけのための1本、わざわざバズーカーで竿を持っていく……自分にはもうあり得ない。


サブネーム“Gamechanger”に託された想い。

常識など、変えてしまえ。

局面を打開しろ。

スマホよりも、“ゲーチェン”を握ろう。


「変化を恐れるな、動き出せ!」




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中部地方在住。幼少期の海釣りにスタート、中学時代はライギョ釣りにハマり、以後淡水魚釣りに傾倒する。高校2年時から釣りや生き物に関するライター活動を開始。卒業後もバックパッカースタイルで日本中を駆け巡り、持ち前の意地と諦めの悪さで憧れの魚たちを抱きしめてきた。2021年には、日本国内では過去最大級と思われるアリゲーターガー(167cm)を釣り上げ、地上波テレビにも出演。好きな飲み物はドクターペッパー。