HUNTERSシリーズ&新作「HT-∞∞」で挑む、南米ガイアナ放浪旅(後編)

(「ガイアナ放浪旅(前編)」から続きます。)

いよいよ今回のメインターゲットであるピラルクへアタックしていきます。

既に奥地ですが、ここから更にジャングルの奥へ向かっていきます。

ピラルクはラグーンと呼ばれる三日月湖に密集しているというのは有名な話ですが、今回は本流筋から三日月湖までアタックしていきます。

まずは餌となる魚の確保から。

正直これが楽しかったりするんです

「アロワナはアラパイマの絶好のエサだ!」とボートマンのオッチャン。

そんなわけで岩場のトップでシルバーアロワナ!

意外と引きます、コイツら。

アタック当日の朝も、キャンプ地の前で程々サイズのピーコックを確保。

両者とも使用ロッドは「HUNTERS HT-6/7」。

BFSリールにPE3号を巻いて。

そのスリムさからは想像出来ない突っ走りを見せるアロワナにも対応可能なパワーを持ちながら、寝起きにペンシルを軽くチョンチョンする事ができる軽快さ。

あると中々に楽しい竿です。

そして本命のピラルクへ。

使用しているのは勿論新作プロトの「HUNTERS HT-∞∞

やってきたエリアは……まさかのブラックウォーター!

まあラグーンとか絡んでくればこうなるのか、と思いましたが、ガイアナでブラックウォーターのエリアに突入するのは初!

去年インドネシアでフラワートーマンを狙った時以来のブラックウォーターにテンション爆あがりで川の水飲みまくった!

インドネシアでもそうだったけど、やっぱりブラックウォーターは飲んでもお腹を壊さないらしい。

そしてピラルクのブレス(呼吸)を待つことに。

日本でのガー釣りと似た感じで、周囲の水面を見つめて大型魚の気配を待ち続ける釣りに。

見渡していると、射程距離圏外でのブレスを目撃。

しかし目測で70mほど。

ブツ切りのピーコックで飛ばせる距離ではありませんでした。

その後もブレスを待ち続けますが、中々射程距離圏内でのブレスは起こらず。

ブレスを発見してキャストしても、本命からの反応は得られずといった感じで、時間だけが順調に流れていきました。

そんなこんなで既に夕方。

薄暗くなってきたラグーンにぷかぷかと浮きながら、とりあえずピーコックのぶつ切りを投入したまま、何もする事がなくてぼーっとしていた。

待ちの釣りは得意なんですが体の周りを飛び回る無数の羽虫にイライラ……。

地球の裏側にあるベッドが恋しくなったりもして、なんかもうダラダラしてました……。

そんな時、ふと手元を見るとリールからラインがスルスルーっと出ていることに気付きます。

「またピラニア運輸が一生懸命運んでるんかな~」とリールから出ていくラインを他人事の様に眺めていると、ボートを操船していたオッチャンが、叫んだ。

「おいカツ!それはアラパイマだぞ!!」

一気にファイトモードへ。

心拍数を上げて、コークに埋もれていた体と思考停止していた脳みそに酸素を回す。

軽く”聞き”を入れてみると、確かに伝わる圧倒的な重量感。

タオルを締め直し、目一杯ドラグを締め込む。

一呼吸置いて思いっきりフッキング。

「うぉ、、動かねぇ……

10メートルくらい先で1匹の魚が跳ねた。

薄暗いラグーンに響き渡る轟音。

今頃日本は朝だろうか。

”フツー”に生活していたらこの景色を見る事も出来ないんかな?

暑くて湿度高くて治安悪い、最低な場所に来たと思ってたけど。

一瞬で理解できた。

「この瞬間の為にこんな所まで来たんだな」

ご存知の方もいると思いますが、この魚は釣り上げると高確率で死んでしまう種。

ボートマンに指示を出して浅瀬に誘導し、水中でランディングをする事に。

相手は2メートルオーバーの魚、誘導にもかなりのロッドパワーが必要になるので「HT-∞∞」で良かったと心から感じました。

HT-7/8」ではコントロール下における相手ではないし、誘導に時間かかって蘇生が難しくなるリスクもありました。

ファイトをしながら撮影の準備も並行して行う。

腕が2本しかないヒト族を恨んだけども、我ながら器用にこなしたらしい。

水中でのファイトに切り替えると、オッチャンには「危ないからやめろ!尻尾が当たって気絶するぞ!」とひたすらに怒鳴られたが、シカトしてランディング体制に。

向こうだって命掛かってるんだから、こっちだってリスクを負わないと不平等に拍車がかかると考えて。

そして抱き抱えた巨体。

釣りをしたことのない方に対しても一定の認知度誇る、世界最大級の有隣淡水魚ピラルク。

現地名アラパイマ。

写真のクオリティとかそんなものを求める魚ではないと思った。

兎に角1秒でも早く返してやりたかった。

「サイズを測ろう!」といってメジャーを出した現地人。

正直サイズとかどうでも良すぎたけど、205センチだった。

そして蘇生に取り掛かる。

頼む、泳いでくれ。

と時折ブレスの体制を作ってやったりした。

これに意味があったのかはよく分からない部分だけど、その後無事に泳ぎ出してくれた。

達成感と疲労で一気に眠気が襲ってきた。

よし、帰ろう。

キャンプ地までの帰り、ボートの上で飲んだビールが美味すぎた。

その日の夜、ピラルクとのファイトで体力をゴッソリ持って行かれた僕は、大人しくおねんね……なんてするわけもなく!!

岩場に集まっているピーコックを「HT-6/7」で狩りまくって”本命”へのアタックへ備えました。

……今回のガイアナ釣行でのメインターゲット2種のうち、ピラルクは獲る事ができました。

ガイアナでピラルク釣れたら万々歳かなと思いますが、僕が本当に釣りたかったのはもう一方のメインターゲット。

小学生の頃からの憧れ。

何度も夢に出てきた、本当の本当に憧れの魚でした。

少し下流にエリアを変更し、別な支流を攻めることに。

やってきたのは、いかにもな岩場のエリア。

ルアーを試すも無反応。

HT-∞∞」に手持ちのフックで一番大きいシングルフックとトレブルフックをワイヤーで”かしめた”仕掛けを装着。

そこにピーコックとアロワナのぶつ切りをこれでもかと付けてボトムまで落とす。

そこでしゃくるのをひたすらに繰り返す釣法らしい。

何度かの小さなあたりがあって半日。

例の如くコークとビールをローテーションしながら無心でロッドを煽っていると、ドスンッとティップが止まった。

確信

「間違いなくピラニアじゃない。デカイ!」

ラインの先から伝わる生命感。立ち上がってフッキング!

間髪入れずに強烈なツッコミが始まる。締め込みも虚しくドラグが滑る。

指でドラグを抑え込むが、燃えるように痛い。

とまれ……、とまれ…………おっしゃ!止まった!!

強烈すぎる突っ込みに耐えながら水面まで浮かせる。

「うわ…….。ヤツだ……。」

浮いてきたのは憧れ。

掛かり所は最悪。

普段であれば単独ランディングに拘る所ですが、今の自分のテンションではヤツの首振りを去なしながらボガ嵌めるのはリスキーだと判断。

高校時代留年しかけたほどの苦手科目英語でボートマンのおっちゃんに指示を出す。

「おっちゃん!ボガ!ボガ!ソイツの口に嵌めて!」

意図を汲み取ってくれたおっちゃんが口元に駆け寄る。

水面に浮きながら反撃のタイミングを図っているソイツ。

案の定ボガがギラついた瞬間に最後の反撃。

突っ込む。

まだ突っ込む。

まだまだこんな力あったんか。

てかピラルクの時より竿曲がってないか?

そして浮かす。

おっちゃんがソイツにボガを入れる瞬間が見えた。

ボートに魚体をズリ上げる。

……叫んだのが先か、涙が溢れたのが先か。

魚体が目に飛び込んできた瞬間、涙で視界が歪む。

いろんな感情が込み上げてきた。

地球上で一番幸せな人間は今、間違いなく自分だと。

胸を張って言えるほど。

ラテンアメリカの暖かな陽光が歪んだ視界をホワイトアウトさせる。

比喩でもなんでもなく。

喉を枯らすまで泣き叫んで、崩れ落ちた。

ハタチにもなってみっともない位に泣きじゃくった。

お前に、会いたかった!

ある程度の年齢になると、ほとんどの人間に芽生えてくる”承認欲求”とか”自己顕示欲”

もちろん自分も例外ではなく、それなりに大きい魚を釣っては”キレーなお姉さん”に「すご~い!」って言われるたびに生きがいを感じた。

しかしながら、そんな感情に一度も入ってこなかったのがこのタライロン(現地名アイマラ)。

こいつだけは違う。

誰にも褒められなくていい。

むしろ褒められたくない。

自分の中だけの憧れ、小4くらいから続く初恋の相手だった。

テレビで見た憧れは、ロッドを船縁に叩きつけ、大の大人を屈服させていた。

テレビで見たままの憧れが、今、自分の腕の中にいる。

涙も枯れ果て、蘇生をしてやる。

憧れだったモノはギラリと僕を睨み、ガイアナ共和国の水辺に姿を消した。

さて。

せっかくなら、もう一個の夢も今叶えてやろう

”服を着たまま思いっきりお漏らししてみたい”

いつだったか漫画で見てからなぜか共感し続けてきたセリフ。

日本でそんな事したら人権剥奪されてしまうし、ついでにこれも今叶えよう。

……。

…………。

色々端折りますが、地球の裏側で夢を同時に二つ叶えた僕の感想を一言。

「人生の夏休み、永遠なれ!」

(エピローグ「日本への帰還編」へ続く)

<参考レポート>

中部地方在住。幼少期の海釣りにスタート、中学時代はライギョ釣りにハマり、以後淡水魚釣りに傾倒する。高校2年時から釣りや生き物に関するライター活動を開始。卒業後もバックパッカースタイルで日本中を駆け巡り、持ち前の意地と諦めの悪さで憧れの魚たちを抱きしめてきた。2021年には、日本国内では過去最大級と思われるアリゲーターガー(167cm)を釣り上げ、地上波テレビにも出演。好きな飲み物はドクターペッパー。