「Shinkirow LUZ-AZUL 76/82MLS」北陸の“青い光”。

富山の川合です。

モンスターキス公式ホームページにて「Sinkirow」スピニングモデル7機種を含む2024年の新製品概要が公開されましたね。

今回は自分が開発に携わらせていただいたライトゲームロッド、LUZ-AZUL 76/82MLS」について、概要からもう1段階踏み込んで紹介させていただこうと思います。

コンセプト&ネーミング

LUZ-AZUL」は、ホームの北陸(富山・能登)のデカメバルを意識して開発したロッド。

「LIGHT-CRUISE」「SOGAINY」を合わせたライトゲーム系の「Sinkirow」3本の中では最長レングスであり、最もパワフルなモデルです。

印象的なシアンブルーのスレッドカラーは、個人的には海や、ホタルイカの発光などをイメージさせます。

懐かしいアマゾンの言葉(スペイン語)でブルーは“AZUL”(アズール)。

光や軽やかという意味を持つ“LUZ”(ルズ)。

それらの意味合いを合わせて 「LUZ-AZUL」(ルズアズール)と名付けました。

その他、北陸では特に能登半島の磯に多く見られるクロメバル、通称“ブルーバック”のブルーもモデル名と関連付けていたりします。

今までとは違う新しいロッド。

Sinkirow」でのイメージカラーであるブルー、名前も含め、その象徴モデルだという意気込みでテストさせていただきました。

モバイルロッド専門メーカーのモンキスの竿ですから、「LUZ-AZUL」もモバイルロッド(仕舞寸50cm以下)です。

自分がメインとしているフィールドはポイントへの道のりが険しく、デカメバルが狙える磯やゴロタなどのポイントへ長距離歩いたり、崖を降りたりする場面もありますが、バッカンやリュックにコンパクトに収納できるため移動に制限がありません。

モバイルロッドだからこそ、足場の悪い悪路でも両手を空いた状態でポイントへスムーズにエントリーすることが可能となります。

ライトロッドでは必然的に、転倒等によるブランク・ガイドへの衝撃は、タフネス仕様の Dear Monster や HUNTERS と比べても被害が甚大。

その意味でも、磯に行くならライトゲーム系ロッドこそモバイルロッドであるべきだと個人的には思っています。

また、どんどん移動して行く釣りになることが多く、かつ暗い時間帯の移動や使用も多いため、ロッドを複数本持ち込む&現場でタックルを組んだ状態にしておくことは、破損デメリットが増えるばかり。

常に手に持つロッド1本で、プラッギングからジグ単、フロートリグまで幅広く対応できる汎用性の高いロッドが必要だと感じていました。

必要とあらば、サブロッドは畳んだ状態で持参がベスト。

そのようなフィールドと状況と、僕のフィッシングスタイルに対応できる理想のライトゲームロッドを形にしたのが「LUZ-AZUL」という竿になります。

可変レングス構造

画像からもわかる“76/82”という部分、まずは可変レングス構造について説明します。

「LUZ-AZUL」に搭載されるエクステンションシャフト(上画像で、上から5番目のセクション)を組み込んだり抜いたりすることにより、7’6”と8’2”、2レングスのロッドにレングスを可変することができます。

古くは和竿の“追い元”、モンキスではHUNTERS 流れを汲むこの可変レングス構造は「Sinkirow」シリーズ全機種の共通構造ですが、「LUZ-AZUL」のエクステンションシャフトは、「Sinkirow」スピニングシリーズ最長の8インチで設定。

つまり、ロッドの長さが20cm変わるということ。

その意味で、LUZ-AZUL」は最も性格が変化するモデルといって良いかと思います。

ライト系モデル3機種のエクステンションシャフトだけを集めてみました。

手前の1番長いエクステンションシャフトが「LUZ-AZUL」のもの。

……ここに至るに、 「Sinkirow」の開発開始から更に時間を遡ってお話しさせてください。

2020年にモンキスのテスターになって以後、「LUZ-AZUL」プロトが手元に届くまでは「HUNTERS HT-6×4S」、1本でライトゲーム全般をこなしていました

HT-6×4S」は国内にとどまらず海外までを視野に入れたバーサタイルロッドの1つの答えですが、レングスやパワー感において、国内のソルトのシーンでよりテクニカルに扱えるロッドが絶対的に必要だと感じていました。

HT-6×4S」にはガイドに糸を通し直すことなく使えるエクステンションシャフト(ちょい足し、と呼んでいました)が標準装備されており、その利便性は常々実感していましたが、エクステンションシャフトをさらに長く取ることでもっと竿の性格を変化させたいという想いを、使い込んだからこそより強く感じるようになりました。

HUNTERS が世に出る前、モンキスのテスターになるよりも前、今から5、6年ほど前には既にモバイルロッドかつレングスを可変できるメバルロッドが欲しいという構想は明確にあり、2020年にモンキスのテスターを務めさせていただくことになる際(既に「HT-6×4S」の開発が進んでいた)にも、「ゆくゆくはこの可変レングス構造を発展させて、理想のライトゲームロッドを作りたい」と伝えていました。

HUNTERS でもできなくはない、が、もっと突き詰めた竿が欲しい。

ライトゲームロッドの中でも、自分の中では強めのメバルロッドグラス(ML・ミディアムライト)が最も汎用性が高いと感じており、今回「LUZ-AZUL」ではそのパワー感と、可変レングス構造のバランスを大事に詰めていきました。

LUZ-AZUL」のショートモードは7’6”。

取り回しが良いこのレングス、主に軽量のジグ単やマイクロプラグをテクニカルに扱うことを重視しています。

ルアーに丁寧なアクション入力するなど繊細な操作に向き、長時間の釣りにおいても疲労感を抑えることができるレングスです。

モンキスのお家芸とも言える並継構造(ビッグテーパー)により、バットセクションは安心して魚を受け止めるパワーに仕上がっているため、ショートレングスによるデメリット的なものは感じません。

掛けるまではナナハン、掛けた後は8フィートクラスのロッドの安心感で、デカメバルはもちろん、チヌゲームにおいてもアドバンテージを発揮します。

一部内容が繰り返しになりますが、こと日中のチヌゲーム、ペンシルなどのトッププラグを細かく早く動かす釣りでは体への疲労感を軽減することができ、ショートレングスの恩恵を強く感じます。

チヌゲームに関しては、モデル名公開前に1本のレポートにまとめているので、詳しい内容はそちらをご覧ください!

基本的に「LUZ-AZUL」1本で通してます。

一方のロングモードのレングスは8’2″。

ロングキャストを多用する磯やサーフなどの広範囲を探るような釣りを得意とし、足場が高いポイントでも足元ギリギリまでルアーのレンジをキープしやすく、ラインメンディング性能の高さは、ストラクチャー絡みでのファイトが当たり前のデカメバルとのやり取りでも余裕を失いません。

自己記録となる34cmのメバルも「Sinkirow」1stプロトでキャッチに至っています。

ロッドレングスにおける20cmの変化は強烈、同じロッドとは思えないほどロッドの性格が激変します。

余談になりますが、上写真のブランクスが青く塗られた1stプロトが届いてから1年、自分が受け取っただけでも4本、4thプロトまで使い込んでいます。

大きく2ndでブランクスを無垢化、3rdでベリー部パワー調整&ガイド素材変更、4thでベリー部パワー再調整&ガイド素材再変更&グリップバランス調整しました……僕の手元に来る前の段階で、それ以上のトライ&エラーがあったと想像します。

改良希望のオーダーを出す際、「♯2(ベリーセクション)を10%(L→ML程度)パワーアップしたい」など、各セクションごとのアクションやパワーの調整を細かく見直すことができ、少しずつ、しかし確実に理想に近づけてきたこの開発過程も、モバイルロッドだからこそのメリットだと感じました。

イベント等で他社の方とお話しする機会がありましたが「1年間で1モデルに4本試行錯誤しましたよ〜」と何気なく話すと、その開発・調整のスピード感に驚かれることもありました。

大量にプロトを作りテスターがそこから選ぶ、ブランクは完成していてグリップエンドの長さにテスターの意図を反映……など様々なケースがあると思いますが、LUZ-AZUL」に関してはちゃんと「テスト」させていたと、「テスター」と自称して恥じないと自信を持って言い切れます。

“メバルロッド”こそショアで最もバーサタイルなロッド(私感)

開発から、現場へ話を戻します。

LUZ-AZUL」のティップはチューブラーを採用していることもあり、どちかというと主にプラグを用いた釣りを念頭に置いて調整しています。

もちろんプラグだけでなく、ジグ単の釣りにも不満なく対応できるようにはテストしました。

個人的にはデカメバル(30cm超)を強く意識して設計してはいますが、ティップに関しては比較的繊細に設計しているため、下写真のような小型サイズのメバルとも楽しく遊ぶこともできます。

とはいえライトゲーム(メインはアジ・メバル)は、狙っている以上のサイズ感のターゲットが高確率で掛かる釣り。

自分のホーム北陸エリアで良く掛かるのがチヌ。

ワームに比べ比較的高価なプラグをメイン戦略に据えるに際し、竿が負け、ラインブレイクという展開は、魚にも財布にも優しくない。

ロッド1本で幅広いルアーを扱えるだけでなく、できるだけ多くのターゲットにも対応したいという想いで「LUZ-AZUL」は調整を進めました。

北陸では今がまさに旬な釣りが、冬〜春に回遊してくる季節性の強い尺〜ギガ(40cm超)のデカアジ。

ボトムレンジはもちろん、水面とボトムが近くなるシャロー帯では、プラグで中層を狙っていても、カサゴを筆頭に、産卵がらみで接岸する大型のベッコウゾイ(40cmクラス)もヒットします。

ことベッコウは産卵を控えている個体だけに、ラインブレイクは避けたい。

来る魚を選べないライトゲームからこそ、障害物周りで釣りするならばと「LUZ-AZUL」のパワー感を整えてあります。

メバルは夜行性のため、活性の低い日中は小型の回遊魚達と遊んだりすることもあります。

チヌゲームではシーバスも良く混じり、時には大型のシーバスが掛かるなんてことも。

テストでは80cmのランカーシーバスがヒットしましたが、オープンエリアでしたので、丁寧なファイトでキャッチに至ることができました。

このように、アジ〜シーバスまで、ことホーム北陸のソルトゲームに関して、「1本でやるなら?」という視点で見た時、自分が最も汎用性の高いと思うレングス・パワー感に「LUZ-AZUL」を整えてあります。

一般的なLクラスのメバルロッドだとパワーが足りない、かといってエギングロッドだと強すぎる。

個々に見れば専用ロッドには敵いませんが、ライトゲームスタイルでアジ〜シーバスまでをロッド1本で柔軟に対応できることが重要で、その中で、デカメバル(30cm超)に“ベスト”がこの「LUZ-AZUL」。

持論ですが、アジまでの汎用性はMLクラス(やや硬め)のメバルロッドクラスだからこそ、そしてレングスが可変できる「Sinkirow」からこそ幅広いターゲットに対応できるのは間違いありません。

LUZ-AZUL」は今2024年1月現在の自分にとって既に、ホームフィールドで死角なしのロッドになっています。

ルアーも併せて開発中

そして、いよいよ迎える春、この竿の“本懐”を遂げる季節……。

まだブランクが青かった1stプロトの頃、昨年春から「LUZ-AZUL」とセットで進めてきたルアー(上写真は初期プロト)の開発が、最終確認の段階に入ります。

寒くなるとソワソワ、春を待ちきれず、シーズン走りのメバルをルアーも「LUZ-AZUL」も、どちらも最終プロトでキャッチしてきました。

詳細はもう少しお待ちいただければとおもいますが、ロッドとルアーセットで、自分が10年温めてきた地元・北陸ルーツのライトゲームスタイルを、日本全国・世界へむけて発信できる。

僕がずっと求めていた“楽しい未来”が、ようやく、とりあえず完成しそうです。

最後に

以上、熱が入り長くなってしまいましたが、LUZ-AZUL」はモバイルロッドだからこそ実現可能なスペックや機能を詰め込み、自分のホーム北陸エリアで“ベスト”と言えるロッドに仕上がりました。

“モバイルロッドとしては”なんて注釈は、もう必要無い。

モバイルロッド故の必然的デメリット(ガイドのズレ、ブランクが重なる部分の加重)を考慮したとしても、そのメリット(開発・現場)を遺憾無く発揮して“最も魚近い竿”だと、少なくともホーム北陸では“ベスト”と言い切れる。

発売後は、是非多くの方に手に取って実際に使っていただきたいです。

テストで通った能登半島は、現在地震で大変なことになっていますが、土地勘を活かし、支援・復興を手伝い、見守りつつも、外へ。

自分自身も「LUZ-AZUL」を携え、日本全国のデカメバル、その他あらゆる旬の魚を追いかける2024年にしたいと思います!

<関連ページ・レポート>

1996年、富山生まれ。小学2年生で釣りを始める。程なくルアーフィッシングに目覚め、国内外に視野を拡大。19歳の時、職場での事故で右手を大怪我。利き手でロッド操作ができなくなるハンディを背負うが、釣りへの情熱を失うことなく、むしろ”労災怪魚ハンター”と開き直って、繰り返される手術の合間に世界を釣り歩いた。社会復帰後はほぼ毎日、「HUNTERS」を手に地元の海に”キトキト”の(旬の)魚を追いかけながら、遠征ペースも落とさない釣りジャンキー。 2022年現在、海外だけで計10回、9か国に釣行。好きな怪魚はラテス属(アカメ属)。