南米46日間の縦断旅の最終記事。前回Chapter4に引き続き、ガイアナ釣行の様子をお届けします。
今回は全5回の南米編最終回、止水域での釣りについてまとめてみました。
南米と言えば、モンキスと言えば、あの「怪物」。
果たして釣れるのか……?

我々が訪れた時期はちょうど雨季が到来する直前、つまり乾季の終わり頃でした。
乾季に本流から切り離されて生まれる三日月湖(ラーゴ)には、本流とは異なる魚種が多数生息しています。

本流からラーゴへ侵入するには一苦労。
ボートマンは行く手を阻む立木をチェーンソーで切り出し、浅瀬ではエンジンを外してボートを手で押すことで突破していました。

ラーゴ内や入り口付近には様々なターゲットがいます。
疲れたときには「MX-5S」に「バクワキ75」をつけて“脳死ポッピング”。
これが本当に色んな魚を簡単に連れてきてくれるので楽しかったです。

元気よくトップに出てくれたのは止水域に多いイエロー系ピーコックバス。
現地名はPond Lukanani。

太陽に照らされた魚体は黄色、オレンジ、白、青など鮮やかな色に光っており、非常に美しかったです。


濁った泥水からこんな色彩が現れるのは本当に衝撃的です。
本流で小塚さんが釣った個体もなかなか綺麗でした。

同種でも色合いが大きく異なっているのがピーコックバスの醍醐味ですね。
本流魚のイメージが強いパヤーラですが、なんとラーゴの入り口のほぼ止水域でもキャッチできました。
しかも「バクワキ」(ポッパー)で。

小さくても牙は立派。
噛まれたら洒落になりませんね……南米ではボガグリップが必須です。
他にはB級ホラー映画でおなじみのピラニア・ナッテリー。
小さい頃からテレビ番組でよく見かけた魚なので、結構うれしかったです。

これもまた「バクワキ75」で釣れました。
直線的に引けるので、ピラニアなどテールを狙ってくる魚にとっても捕食しやすいのかなと予想しています。
他には現地名ではホーリーと呼ばれるタライーラは多数いましたが、尽くバラしてしまいキャッチできず。
案内人Pさんはサクッとキャッチし、気づいたら焼いて食べていました。

しかし、そんなお遊びをするためにわざわざラーゴに来ていたわけではありません。
ここでのメインターゲットは『怪物狩り』の表紙を飾った、モンキスユーザーなら皆一度は夢見るあの巨大魚、ピラルクーです。
ガイアナではキャッチ&リリースのノウハウが浸透していることから、かなりの個体数が居るとのこと。
実際にラーゴに到着すると、すぐに数匹見つけることができました。

画像中央付近がピラルクーによって作られた波紋。
稀に空気を吸うために頭を水面から出します。
現地での主流な狙い方はその場で釣ったピラニアなどを用いた餌釣りです。
餌釣りであれば、「1日あれば100%釣れる」と案内人のPさんは断言していました。
幼い頃からの憧れで、最高難易度であるはずのピラルクー釣り。
これほどまでに確立されており、実際に安定した釣果が出ているのはなかなか複雑な気持ちです……。
だからこそ、自分らしい釣りで挑みたい。
“一生に一匹”なのであれば、100%納得できる釣り方で挑みたい!(急死リスクが高い巨大魚で、モンキス系の先輩たちの間では1匹釣ったら以後自主規制する人が多い)。
そんな気持ちから、今回はジャイアントベイト(ハイドロの特別サイズ)、ヘッドショット(バーブレス)のセッティングで挑みました。

ファイト時間が長いとデッド率が上がってしまうというピラルクー。
ジャイアントベイトタックルであれば、「強い竿、太い糸を活かした短いファイト時間でのキャッチが実現できるだろう」という思惑です。
初日は「MX-∞+」を「MX-PROGRESS 15R」で延長したセッティングで挑みました。
呼吸で水面に上がってきたタイミングを狙い、350mm版プロトのハイドロを鼻先にキャスト!……したいところですが、最初は焦りと技術力不足でなかなかキャストが決まりません。

小塚さんからキャストフォームやキャスト位置についてリアルタイムでコーチングして頂きながらピラルクーを狙うという、豪華すぎる時間を過ごして少しずつアジャストしていきます。
開始から2時間ほど。
無風ドピーカン、灼熱で意識が朦朧とする中、浮上したピラルクーの進行方向と頭の位置を予想し、なんとか的確な位置にハイドロ350を打ち込むと……
1ジャーク、2ジャーク….ガガッ!
なんとピラルクーがヒットしました。
初日からこれほどあっさりとジャイアントベイトで食わせられるとは全く思っていなかったので、目の前の現実に思考が全く追いつきません。
今、自分の竿先にある自分の手で作ったルアーに、小学生の頃から憧れのあの魚が掛かっている。
それだけでもお腹いっぱいなのですが、掛けてしまったからには何としてでも釣り上げたいのが釣り人。
必死にポンピングを繰り返し、一気に船べりまで寄せます……。
あっさりと船の真下まで寄ってきたピラルクー。
今まで自分が経験したことのある大型魚釣り(ロックショアやアカメなど)であれば勝負ありという具合の近さ。
「勝った!」と思ったそのとき……。

船べりで2m級の巨体丸出しの超絶エラ洗い。
吹っ飛ぶルアー。
竿先から消える生命感……。
数分後にはピラルクーを抱き上げる妄想をしながらニヤけていた自分に、ピラルクーが強烈な現実パンチを食らわせてくれました。
動画にその瞬間が写っていたのがせめてもの救いです。
僕とピラルクーが一本の糸で繋がっていた唯一の証拠です。
返ってきたルアーを確認すると、マグロジギング用の針はあっけなく曲げられていました。
ピラルクーの口周辺は非常に硬いため針の先端しか刺さっておらず、力が先端に集中していたため曲がってしまった模様。

ピラルクーのためにも、自分のためにも、ルアーが口元に残らず返ってきたのはとてもラッキーでした。
また、あとから映像を見て気づきましたが、必死なポンピングによって「船べりに寄せた」と思っていた僕は、むしろ「船ごとピラルクーの方に寄っていった」だけだったみたいです笑。
船+大人3人を容易に引きずり回すピラルクー。
魚のサイズがここまで大きいと、常識が全く通用しませんね。
魚をバラして泣いたのはこのときが初めてでした。
しかし、ジャイアントベイトを食うことはわかったので、直ぐにタックルを組み直して再挑戦します。
先ほどよりも太い11/0のシングルフック(キャスティング用)にGT用でも最高強度クラスのスプリットリングに付け直してみました。

その後4時間ほど同様の手法で狙うと、なんと初挑戦にして2回もヒットさせることができました。
しかし、2回ともあっけなくフックアウト。
同じようにエラ洗いの首振りでルアーがふっ飛ばされる始末。

キャスティング用の太径11/0(BKKローンディアブロ)があっけなく曲がって返ってきたときには、いよいよ絶望しました。

村に戻ってから大人二人がかりで工具を使って曲げ戻そうとしましたが、ビクともしませんでした(笑)
夜、キャンプ地に戻ってから作戦会議。

これほど大きいターゲット相手に大きなルアーだと、首振りのパワーでどうしてもルアーが飛んで行ってしまう。
シーバスぐらいの魚の首振りパワーを見事に吸収してくれるヘッドショット(の発展型、親子サルカンを使った“陸チューン”)ですら、ピラルクー相手には不十分なのかもしれない……。
ということで小塚さん考案のラインスルーシステムのヘッドショットに切り替えて継続して挑みます。
昨年夏のバショウカジキ釣行で小塚さんがブレイクスルーしたセッティングです。

森園テスターから授かった電気工事用の極太ワイヤーリーダー(3mのシャーク想定)の先端に針をつけ、そのワイヤーリーダー上をルアーがフリーに動く仕組みです。
さらに効果的に衝撃を吸収するために、ティップを「MX-∞+」から「MX-∞」のものに変更し、追従性を高めて挑みます。
これであれば、きっと首振りパワーを吸収してくれるだろう。
そう期待して2日目以降もキャンプ泊を繰り返しながら挑みますが…


結果は計7バイト、全バラシ。
力及ばずでした……。
ラインスルーシステムに変更後は一度もまともにフックアップすることができませんでした。
幸いチャンスは何度もあったので、即合わせしてみたり長時間待ってから合わせてみたりと色々試しましたが、見事にすべて抜けてしまいました。
仕舞いにはピラニアにラインを齧られて持ち合わせていたジャイアントベイトサイズ(350mm)のハイドロは全ロスト……。

ラインが水中で動いているとピラニアが反応してしまうみたいですね。
せめてピラルクーの歯型だらけのハイドロを持ち帰りたかったな……。
反省点はいくらでもありますが、まとめると「ピラルクーという怪物の規格外のサイズとパワーを舐めていた」ということになります。
フックや金具などの選択肢がもっとあれば、きっと違う展開が待っていたのかなと思います。

名残惜しいですが、これにてタイムアップ。
計2週間ほどのガイアナ滞在も終わりになりました。
予算的にも毎日船を出せるわけではなかったので、日によってはハンモックでのんびりしたり、村人と飲んでみたり。
長期遠征ならではの時間の過ごしかたですね。

帰りは行きと同じくラリー仕様のハイエースに乗車してブラジル国境を目指します。

中継地からは夜行バスでマナウスに戻ります。

最後はマナウスでプチ観光してから飛行機に乗って日本に帰りました。
市場に並ぶピラルクーの干物。
養殖魚と聞いて一安心。

他にもあの魚やこの魚がたくさん。

飛行機で約2日掛けて日本に戻ります。
さらば南米。
色々辛かったけど、それ以上に色々楽しかったな。


46日ぶりの日本。
美味くて安いコンビニ飯、トイレットペーパーのあるトイレ、すべてに感謝。

(感動しすぎて写真を撮ってしまいました笑)
【まとめ】
以上、Chapter1~5まで、南米縦断46日間、パラグアイ・ブラジル・ガイアナ三か国を巡った旅のレポートでした。
釣り以外の部分で強烈な思い出はいくらでもあるのですが、書き出すとレポートにまとまらないので省きます(笑)

(ex. 闇夜の激流登り、with目の焦点が合っていないおっちゃん船長。死ぬかと思った…)
「南米なら、なんとかなる」と小塚さんから聞いていましたが、本当にその言葉通りでした。
もちろん日本に比べれば不便な要素はいくらでもあるのですが、かと言って「目的地にたどり着けない」だとか「物資が手に入らない」だとか、そういう問題には一度も遭遇しませんでした。
南米の人は皆、困った旅人を率先して助けてくれる傾向にあり何度もお世話になりました。
本当にありがたかったです。

釣りの面では、行き当たりばったりの「バックパッカースタイル」だからこそ、自分で展開を作っていくという面白さや、目標の一匹を釣り上げたときの達成感は人一倍でした。
きっとガイドを予約して行っていたら見れない景色や釣れない魚に出会うことができ、どれも強烈な思い出として残っています。
ただ、釣魚としてはピラルクーという大きすぎる宿題を残してきてしまったので、またリベンジしなければなりません……。

次の長期遠征のチャンスは修士卒業のタイミング。
そのときには南米リベンジも視野に、また冒険に出ようと思います。




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