古代湖パワースピニングの旅。ザンビア・タンガニーカ湖2023(後半・ニュンフィ編)

テスターの藤田です。

前編に引き続き、ザンビア領タンガニーカ湖遠征のお話。

旅の後半の模様をお届けします。

14日間の僻地滞在もとっくに折り返しを過ぎ、撤退日が迫ってきます。

巨大パンバー狙いはさらに迷走して、延縄にまで手を出しました。

仕掛けを入れた当初反応はイマイチでしたが、ある日の夕方、突然複数のパンバーが掛かりました。

それも、中々良いサイズ。

その日の夜はフルムーン。

翌朝、これまでいなかった羽虫が一斉にハッチして、まとわりついてきます。

長く滞在していると、自然が刻一刻と変化していることを感じることができます。

パンバーは今、産卵に絡むタイミング。

「これも、なにか変わってくれ」と祈りながらトローリングを続けましたが……相変わらずダメ。

一時可能性を感じたバーチカルな釣り(ノマセサビキのシクリッド泳がせ)も、数は釣れてもサイズが出ない。

やること全て上手くいかず、追い詰められる僕を気遣ってか、隊員たちは明るく声をかけてきます。

「ケンゴ!心配するな。デカいパンバー釣れるって。なぜなら、俺達にはまだ時間がある!」

……いや、余計に苦しい(笑)

滞在も後半に差し掛かっているというのに、巨大バンパーの手掛かりは、ハッキリ言って一ミリも掴めていない状況です。

このまま同じことをやり続けても“奇跡”は起きないし、かといって打開策もない。

ここで思い切って、パンバー狙いを一旦やめて、新たな挑戦をしてみることにしました。

「よし、みんな。ニュンフィ(前編参照)を狙ってやってみよう」

シャローをトローリングで探り、コロナ禍前の初回訪問でのキャッチを含めれば、パンバーはこれまでに40本ほどキャッチしています。

その中でニュンフィからの反応は完全にゼロ。

これまでのやり方から劇的に何か変えないと、チャンスは生まれないと想像しました。

「ケンゴー、ニュンフィなら沖の深場にしかいないぞ!」と口を揃える隊員たち。

皆、釣ったことも獲ったこともないのですが……。

現地の漁師たちからも機会がある度に情報をもらっていましたが、ニュンフィに関しては「ベリーディープ!!」と皆が言い、捕獲されたニュンフィを見かけることは一度もありませんでした。

遥か沖に浮かぶローカル船団を見つけたのでコンタクト、新たに情報収集しますが、コレと言った話は聞けず。

岬の先端から沖に走り、魚探をかけながら仕掛けを沈めてみますが、50m以深では砂地のエリアしか見つかりません。

ホントにたまにフロントーサやカペンター(ワカサギのような魚)がヒットしてくるだけで、シャローのロックエリアではあれだけ群れているシクリッド達も、ほぼいないと思われました。

過去に白人釣り師がニュンフィを釣り上げるのを見たことがあるという、隊員のおじさん。

半ばヤケになって「なら、おじさん、その場所に連れて行ってよ」とリクエストしてみました。

湖岸の地形を見ながら、記憶を辿るおじさん。

ボートマンに指示を出して、グイっと伸びる岬から一気に沖に走ること、50m以上。

「Everywhere!!(この辺りならどこでも)」

仕掛けを沈めると水深90m前後……ボトムは砂?泥?マジで、小魚一匹当たりません。

「ケンゴ、ニュンフィを釣るのはすごく難しい。今はシーズンが悪いんだ」

……わかってたけどね、シンドイね(笑)。

そんな紆余曲折あって、やっぱり自分しか信じられるモノがないことを強く、つよく再確認しました。

まず決めたのは探るエリア。

ロックエリアの40m以浅にポイントを絞ります。

戦法は効率を考えてトローリング一本勝負。

そして、作戦としては「とにかくパンバーが釣れなさそうな事をする」こと。

具体的には、水深10m以上を指標として、トローリングコースを岸沿いから離れ気味にする。

そして、走るスピードをこれまでより大幅に上げる。

……2日間やってみて魚か?水中に浮かぶゴミにぶつかったか?判断しかねる感触が2回あったのみ。

サブロッドを握るおじさんからは何の情報も得られませんでした。

その日の夕方、岩場の沖を走っていると「パッカーン」と捕食音が聞こえてきました。

「クピ(大型のシクリッド)が小魚追ってるんだろうな」と思って、視線を向けると……。

ラテス特有のフォルムをした、50センチほどの銀色の魚体が、全身を出して水面を割った!

水面上から頭を下げて、標的のベイトに突き刺さるようにして消えていったソイツ。

尾鰭は特徴的な“フォークテイル”(二股)だったように見えました。

どちらかと言うと「ゆっくり、じっくり」な印象のパンバーが、あんな俊敏な動きをするとは思えません。

「きっとニュンフィだ!!」

僕意外は誰も目撃しておらず、共有できませんでしたが、どのみち信じられるのは自分のみ。

日没まで流し続けましたがこの日はノーバイトで終えました。

その夜、リーダーを100lbに落として組み直し、ルアーサイズを下げて精査。

スプリットリングやフックのサイズも再調整しました。

目撃した個体が小さかったから……という理由ではなく、なんとなくそんな気がしたから。

翌日。

流し始めて1時間ほどした頃、ルアーが底を叩き始めました。

水深10mはあるはずだけど、なんで??

回収して理由が判明。

ルアーの内部が浸水してる……。

でも、さすがラパラ。

ルアーアクションには変化がありません。

「動きは変わらず、レンジ入るようになるなら、これは確実にプラスでしょ」

そのまま走って、正午前。ニュンフィを見た本命エリアを流し切ろうとしたその瞬間、ズガッッ!!

一気に、鋭い衝撃に竿を叩かれました。

「うわっきた!!ニュンフィきたぞ!!!」

思わず叫びましたが、まだ確証はありません。

しかし、戦っているうちに確信しました。

泳ぐスピードが明らかに速い。

ドラグを引き出して泳ぎ回るソイツ。

かと思いきや一気にこちら側に突っ込んできて、慌てて糸を巻き取ります。

船べりでツッコミ、耐えて、姿が見えました。

尾鰭は……見間違いようのない見事な“フォークテイル”、きた、きたキタ!!!

尻尾を左手で掴み、右手で腹下からそっとホールド。

一気に船内に放り込んで、叫びました。

「うわぁああぁ!!!よっしゃああぁ!!!!」

感情が爆発しすぎて、久しぶりに泣いちゃった(書いてて、また泣けてきた笑)。

隊員たちと抱き合って、「落ち着け、落ち着け」と言われながら、強く握手。

追い詰められて、偶然が重なってパズルがハマり、現れてくれた「究極の一匹」。

この魚の本当の価値は僕にしかわからない。

でも、それで良いんです。

アフリカには、たまにだけど、こういう瞬間があるんですよね!

個人ブログで書けよってなこんなレポートも、この一匹に免じて良しとしてくださいな(笑)。

ロッドは「MX-9S」。

思い入れあるこの竿で捕れたのも、感慨深いものがあります。

リールはステラ8000PG、ラインはバリバスのSMP6号+ショックリーダー100lb2ヒロ。

ルアーはラパラのXRAPマグナム20“浸水チューン”でした。

ニュンフィはこれにて完全完結!

これ以上の一匹にはもう出会えない。

もう狙わなくて良い。

迷いなくキープしてその日の昼食としました。

撮影を終え、余韻に浸る間もなく、おじさんがゴリゴリと捌き出しました。

隊員たちは干物にして持ち帰りたそうでしたが、僕の気持ちを汲んで(やっぱりケチって魚体の一部だけを解体して、笑)塩と玉ねぎを加えたスープを作ってくれました。

食べて納得しました。

パンバーと比べて、超筋肉質。

繊維の塊。

そりゃ泳ぐの速いわ。

それでも歯切れよく、過剰にボイルされた肉塊はザクッザクッと噛み切れます。

処理と調理の雑さからくるはずの臭みは、鮮度と思い入れがカバーしてくれたのか感じませんでした。

美味かった!

……コイツを手にしたのが滞在12日目。

残りの2日間は再度、巨大パンバーを夢見てトローリングを続けましたが、やはり出会えず。

またこのメンツで、タンガニーカに夢を追いかけようと思います。

隊員たち、現地で出会った人びと、旅に関わってくれたみなさん。

心から、ありがとう!

14日間の日程をやり切り、次のステージへ。

その後3日間湿地に入って大型のポリプテルスを追いかけましたが、あと一歩及ばず。

でも、今回で全てが整いました。

初回訪問時から“裏”ターゲットに設定しているこの魚。

コイツもいるから、また来なくちゃいけないんですよね。

疲れた。

長かった。

ニュンフィが釣れてくれて、本当によかった。

計17日間の僻地滞在を終えて、清々しい気持ちで電波圏に戻ると、帰りのフライトが欠航するとのメールが……帰国を3日遅らせることとなりました。

そしてここから始まった怒涛のトラブルラッシュ。

タンガニーカ湖から首都への帰り道、警察の検問でバスから降ろされて、「違法滞在」として手錠をかけられ、拘束されました。

約12万払えと言われましたが、3時間拘束された後、約4000円を払って“パーミッション”をゲット。

解放されました。

ザンビアでは30日滞在するごとに各地“イミグレーション”に出向き、滞在許可の延長手続きをしなければいけないそうです。

バスに置いていかれたのでヒッチハイクして車を拾うも、タイヤがバースト。

時間に追われているため(翌日が帰国日)すぐに新しい車をヒッチしようとしましたが「ボス、すぐ直るから!」と運転手は粘ります。

2時間以上かかってようやくパンク修理を終えたところで、同乗していた青年が車両に寄りかかり、ジャッキが外れて再起不能に。

「New problem come…….」と青年。

このギャグ漫画のようなタイミングよ。

新しく車を拾うも、違法ナンバーだとかで道中の検問で引っかかりまくって進みません。

警察に賄賂(一か所につき約700円)を払い続け、地道に進みましたが、首都から160キロ手前の地点で「今日はもう寝よう。疲れた」とドライバーが言い出しました。

ドライバーと別れ(約2000円払いました)、最後は乗り合いバンに揺られ、明朝3時半(日付変わってこの日が帰国日)、24時間かかって首都にたどり着きました……。

そこから空港へ向かう道中、追い越し車両に中指を立てられ、激昂したタクシードライバーが爆走カーチェイス、ガス欠。

車を押してガソリンスタンドまで行き、給油して、なんとか空港に到着しました。

なんとなく嫌な予感はしていて、空港へ入るや否や「違法滞在の件、報告が届いている。出国スタンプが欲しかったら……」。

やはり。

約7000円払いました。

「ギャグ漫画か、お笑いコントかよ」っていう、絵にかいたようなトラブルが絶妙なタイミングで、本当に起こり続けるのがアフリカの釣り旅。

誰かにオススメしたりとかはしませんが、僕は通い続けます。

アフリカでしか得られないものが絶対あるから。

しかし、この旅、もしもニュンフィが釣れていなかったら……僕の精神状態はどうなってたんだろうか(笑)

以上、今回のザンビア遠征報告でした!

アフリカラテスの旅はもう少し続きそうです。

<追伸>

これを書いている現在は帰国して、ある魚を追って張り込み中。

日本での釣行の日々も、またこちらで報告していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

長いレポートを最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました!

<関連レポート>

幼少期から魚類に興味を持ち、6才で釣りを始める。バス釣りに熱中していた中学時代に小塚と武石が開設していたホームページと出会い、“怪魚”の世界に強い憧れを抱く。大学進学を機に北海道に移住、稚内から与那国島まで、アジアからアフリカまで、国内外を釣り歩いた。サクラマスの研究で大学院を修了、その後も北海道に残り、トラウトやロックフィッシュなど北の大地の釣りを楽しみながら、世界への旅を軸に据えた生活を送っている。