私・津田がテストさせて頂いた「Shinkirow AITHRIA 88/92MHS」の概要をお伝えしたいと思います。
開発ヒストリー
このロッドは、着想段階から強くシーバスをメインターゲットとして意識し、開発したスピニングロッドです。
ベイトタックルを基本とした“ビッグベイトシーバス”(BBSB)に対しては既に選択肢が多かったモンスターキスのモバイルロッド群(Dear Monster & HUNTERS)。
しかしながら、スピニングタックルを基本とした“スタンダードシーバス”(SDSB)に関しては、2023年以前は、対応できるロッドは「MX-7S」だけでした。
私自身、使うフィールドによっては、レングスの足りなさをエクステンションブランク(PROGRESSシリーズ)で延長し、飛距離優先、多少のバランス悪化には目を瞑るか……という使い方になっていました。
「ベターではあるがベストではない」
自分の中ではもう一歩、SDSB寄りのロッドが欲しいと以前より感じていた事から、今回、スタンダードシーバス(スピニングスタイル)のベストロッドを目指して、「Shinkirow AITHRIA 88/92MHS」の開発に至りました。
設計コンセプト
①アキュラシー、②軽快さ、③パワー。
僕がこのロッドに求めたのは、大きく分けると以上3点です。
①橋脚等のストラクチャーに対してよりタイトに、正確に打込む為の高いアキュラシー
②ウェーディング等での長時間使用でも疲れ難い軽快な操作感、バランス
③流れの中でもブレイク、ストラクチャーから魚を引き剥がすパワー
文字にするとありふれた言葉ですが、当たり前の事を当たり前に、ストレス無く誰でも使いこなせるシーバスロッドをマルチピースで、モンキスで作りたいと言う僕の想いを形にして貰いました。
……僕自身、シーバスの聖地と言われることもある山陰地域の生まれで、10代の頃からスピニングタックルでのSDSB(スタンダードシーバス)に親しんできました。
20代の頃には海外も含めて遠征を繰り返し、モバイルロッドの利便性を実感すると、30代となり、ライフスタイルが変化し、車移動&地元釣行をメインになって以降も、どうしても“それ以外”のロッドに「こいつがモバイルロッドだったらなぁ」という要望が生まれてきたのです。
世界を旅して、改めて楽しさに気づいた、シーバスという好敵手。
近年のコロナ禍で海外遠征が遠くなり、“怪魚タックル”そのままシーバスへ、ベイトタックル標準のBBSB(ビッグベイトシーバス)からシーバスというターゲットの魅力に気づいた方も多いように思います。
そんな方にも是非、日本在来のルアーフィッシングの好敵手、スズキという魚の奥深い世界、スピニングタックルによるSDSB(スタンダードシーバス)の世界も体験いただきたいなと思います。
仕様スペック
ロッドにも印字されている基礎情報としては、以下になります。
Length:8’8”/9’2”ft(可変レングス)
Luer weight:10g-60g
Line:Max 2.5(PE)
適合ウェイト、適合ラインについては、推奨値です。
120㎜~150㎜サイズのルアーをこのロッドのスイートスポットとして、下は10gから上は60g程度がストレス無く使用できるような設定としています。
想定シチュエーション
都市型河川での明暗ストラクチャーゲームから、中大規模河川のウェーディングゲームまで、私の考えるシーバス釣りのスタンダードを形にしました。
ハイポテンシャルフィールド(高知・アカメも混じる)まで、幅広く想定しています。
シーバスロッドとしては比較的強めのMHクラス、強い流れの中から積極的に魚にプレッシャーをかけて寄せなければならない場面で、信頼できるロッドに仕上げました。
ロッドバランスに関してはこだわり、ガイドタイプとグリップレングスの組み合わせを細かくテストしました(最後の最後まで微修正を繰り返したので、動画では一部印字デカールが製品と異なります)。
最終的に、グリップエンドにバランサー入れず、比較的短めのグリップの長さ(ウェーディング時の取り回し重視)でありながら先重りを回避すべく、EVAの自然な重量をうまく利用できるストレートグリップに着地。
8’8”のショートレングスを私なりの基準に、ディープウェーディング等で長時間ロッドを立てて操作する場面でも疲れにくいセッティングに仕上がっています。
9’2”のロングレングスは、現状では飛距離が必要な大場所で。
今後は、足場の高い東京湾奥などティップを下げて使うアーバンシーンでも使用が増えそうです。
使用感とはまた別に、9’2”のロングレングスにすることで、完全等長の2ピースロッドとして持ち運ぶことが可能になり、車内収納や小移動の際の破損リスクが低減され、見た目にも収まりがよくなります。
この辺り、モバイルロッド専門メーカーとしての細かなアイディアが詰め込まれており、「Shinkirow」シリーズを総括して今後、開発者の小塚さんが解説されると思います。
ネーミングの由来
以上、「Shinkirow AITHRIA 88/92MHS」の概要をお伝えさせていただきました。
極論、グライド系ルアー1個で押し通せるBBSB(ビッグベイトシーバス)と比較して、SDSB(スタンダードシーバス)は、季節・状況に合わせてアジャストしていくことを楽しむ奥深い世界。
細かな使い所は、1回のレポートでは語り尽くせないので、季節を追いかけながら、今後随時解説させていただければと思います。
最後にネーミングに関して。
開発段階で、プロトが上がってくるたびに変更、修正を繰り返したのが、このモデルかと思います。
想いを込める大事な部分、本当に最後の最後まで悩み……「これが最終プロト!」と一度固めた後で、自分なりにピーンとくる響き、ネーミングが浮かびました。
「AITHRIA 」(エスリア)、古いギリシャ語で「晴れ」や「空」、「快晴」を意味する言葉。
重度の雨男を自覚する自分にとって、自然に嬉しくなる景色。
ピーンときて以降は、テプラーを貼って使いました。
まぁ、シーバスは雨の方が活性が上がり、スタンダードシーバス(SDSB)はやっぱり夜がメインになるんですが……笑。
以上、僕が思う「Shinkirow」の世界観、青空のように気持ちの良いロッドが、「Shinkirow AITHRIA 88/92MHS」です。
異様にヒレの青いシーバスが、完成を祝福(?)してくれました!
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