初海外×高校生。南米スリナムでひとり旅、“皇帝”ピライーバを求めて(中編)



前編からの続きです

……初の海外遠征に戸惑いつつも、なんとか釣りができる状況が成り立ち、宿と船を往復する日々が始まりました。

朝9時ごろから3時ごろまでを船の上で過ごし、飽きない程度にナマズ類が釣れて、時合いに入ればターポンからの反応も得ることができていました。

フックサイズを下げると無限に釣れる黄色いナマズに、1メートルを超えるらしいハマギギ系のナマズ、「誰と戦うんだ?」とでもツッコミを入れたいヨロイのような体表を持つナマズまで、様々!



しかし、1日すぎるごとに焦りもではじめました。

同じナマズに飽きはじめると写真も撮らなくなり、細かいあたりに期待感も薄れ、宿に戻れば先輩方のアツアツの釣果にヨダレを垂らす毎日……。

そんな“日常”になりつつあった南米生活を楽しませてくれたのは、街中の小物釣りでした(これはこれで、後日レポートします)

Dear Monster MX-1」でメダカ&タナゴ釣り@南米(正確にはカダヤシ類&カラシン類)。

■最悪の場合の選択

何日が過ぎたあたりで焦りはMAXになり、どうにか釣らねば!とポコ(一緒に釣りをした漁師のあだ名)に尋ねるも曖昧な反応。

同じポイントには期待できなくなり、残りの日数を数え始め「明日釣れなければ移動かな」とも考えましたが移動先などあてがあるわけでもなく……。

残り日数は5日。

追い込まれた僕は、“最悪の場合の選択”として考えないようにしていた手札をきりました。

宿に戻り、スリナム・ピライーバ事情の先駆者である小塚さんに相談。

小塚さんが開拓した川は分かっていた(2013年放送の『情熱大陸』で河川名を公開)し、その後、何人かの日本人がその足跡を辿ってピライーバを手にしているのも知っていたので、だからこそ、僕は“小塚さんの川”を外して、僕なりの開拓にチャレンジしてきたわけですが……

「ピライーバの捕獲経験が“確実に”にある人に頼ろう、それを知っている小塚さんに聞けば、これまでにかけたお金と時間は無駄にならない」と思い、であれば「悩む時間も勿体無い!」、と……(今考えてもだいぶ追い込まれてたな)

しかし、そんな“最終手段”も……小塚さんには断られてしまいます。

この日は空っぽの白紙になった頭に、2Lコーラを流し込み、炭酸とチョットの贅沢感で満たされた幻覚が消えないうちに就寝しました。

こんな時オトナはお酒やタバコに逃げれるんだろうなぁ……。

■ピライーバはダメでも……。

次の日、早くに寝たからか、とても良い目覚め。

“最終手段”も崩壊、打算がゼロになり、むしろ「やってやろうじゃねえか!」と作戦を再構築。

メインターゲットをタライロンに変更

再度ポコに上流に行きたいと伝えると、僕の焦りを感じたのか半分呆れた顔をしながら「タライロンならとても上流に行かないと行けないぞ」と具体的な話を始めてくれた!

Googleマップを開き、蛇行する川を辿り、ピンを置いた場所はまさにジャングル。

漁師は400~500km上るといい(ほんとか?)3日やそこらで戻って来れるのか危ういようで“最上流”には渋い顔をした。

僕は「ある程度登ったところで支流を攻めよう」と提案し、金銭面でも交渉成立。

ポコも久しぶりの遠征だったようで会話の中で笑顔が増えた。

次の日を準備日として、1日上り、1日釣りをして戻るという全3~4日の日程。

希望の光がみえ、ポコとガッチリ握手を交わしてその日を終える……と思いきや、午後に最悪のトラブル。

海外旅で気を抜いたらオワリ

夕方、ボート代になるお金を下ろすためにATMへ向かう途中にキャッシュカードを紛失。

今考えればナゼ生身でポケットに入れたのか……。

焦りに焦り、通った道を何度も往復するも見つからず……。

事情を聞いた宿のスタッフや近所の人総出で、暗くなるまで捜索してくれたが結局見つからなかった。

人通りが多い道ではなかったけれど、落としたあと誰かが持っていってしまった可能性が高く、すぐにカードを停止。

予備でおろしておいた現金で、帰りの飛行機までの滞在費はなんとかなるが、既に支払いの半分を済ませた上流への遠征費の、残り半分が払えなくなった。

まいった、帰路に着くまでの滞在費はなんとかなるが、ポコに渡す残り半分の遠征費用が払えなくなってしまった。

夜、宿に来たポコに事情を説明し、遠征の中止も致し方なしと落ち込んでいたら、

「物資は既に買ってしまった、とりあえず明日は出発しよう!残りの支払いはあとでなんとかしよう。俺たちはリトルブラザーだろ!」

なんだと!

優し過ぎる!

ここまで良くしてくれる人と出会えたのは本当に「自分“もってる”な」と思いました。

僕は“ゼロ”じゃなかった……ポコと出会って約1週間、冴えない小ナマズ釣りや何やで一緒に過ごしてきた時間、築いてきた信頼関係を“持ってる”と。

■ピライーバの可能性

次の日の朝、ポコの集めた“遠征部隊”と初対面。

しかし……舵取りを担うキャプテンと呼ばれる男は、腰のあたりから点滴の管が伸びていて1人では歩けない。

雑用係のプロムはお調子者で、手よりも常に口が動いている賑やかな男(めちゃくちゃソフトに言うとね)。

ポコは「オレはコックだからな」と何故か自慢げで、いつもより少し大きなボートのど真ん中には大きなHITACHIの冷蔵庫(中には大量の氷)が鎮座。

不安しかないスタート……。

この船に自分含め人が4人乗る…のか?

冷蔵庫って、電気がなければクーラーボックスとして使えるんだ……作ったメーカーも、まさかこんな使われ方までは想像していないだろうな。

手前から、プロム、キャプテン、ポコ(“お調子もの”のプロムが僕のカメラで勝手に自撮り)。

環境やカルチャーショックなんかはある程度対応できるけれど、対人(対ポンコツ!……言ってしまった汗)ストレスはなかなかにしんどかった。

船上の対人ストレスと周りの風景の癒しが両者を打ち消し合い、なにも感じぬまま、かといってこれといった問題も無く船は進み半日移動したところでお昼休憩に。

ブッシュに船を突っ込み、少し開けたところでポコ(ここではコック)特製ご飯を食べた。

料理を待つ間、なんとなく投げたルアーにガツンといいアタリ。

1発であいた穴は1投ごとにいくつも増え、シングルフックをトリプルに変えてやっとかかったのはザ・アマゾン、ピラニア!

水族館でみたやつより、ずっと綺麗で何倍もイカツかった!

ピライーバの可能性

食事後、釣りの様子を見ていたキャプテンがニヤリとしながら「上流に行けばラウラウ(ピライーバ)も沢山いるぞ」と言う。

まさか?こんな小規模河川に生息しているのか?

ポコは河口域には沢山いると言っていた。

物知りのキャプテンは、中流にも上流にもいると言った。

もしかするとピライーバはこの川の上流から河口までを行き来しているのでは……。

完全に思考から切り捨てていたピライーバ、一気に可能性を感じた僕は、片付けていたピライーバタックルを準備。

しかしその日は竿を出すことなく日が落ちた。

真っ暗になり、ライトを照らせば暗闇の中にサルか何か動物の目が光る。

相変わらず隣ではプロムがひたすら喋っている。

同じ話をしているのか?とにかくウザい。

昼飯の時、倒木に引っかかってしまったルアーを飛び込んでとりに行ってくれたが、竿を伸ばせばギリ届く範囲内だった。

シンプルに、ありがた迷惑野郎だ。

ほかにも寝るかと思いきや、うまい鳥がどうの……といって船をとめたり、「これに座れ」とブルーシートを無理やりしこうとして荷物を踏み潰したり、いろいろポンコツすぎる。

船は真っ暗闇の中、両岸のレイダウンや岸をポコがライトで照らしながら船は進む。

正直不安でしかなかった。

空を見上げるとオリオン座が見えた。

大好きな(唯一知っている)星座が地球の裏側でも見守ってくれている気がして、少しだけ心強かった……。

途中雨が降り始め、同時に睡魔に襲われた僕は船首のビニールシートの中で就寝。

深夜1時過ぎ、ようやく陸に上がり、簡易のキャンプを設営。

疲れ切った体でハンモックに揺られた。

朝、蚊の猛攻で目覚めると体の悪いキャプテン以外の2人は湿った落ち葉の上にそのまま寝ていた。

睡眠ひとつとっても、日本人の僕とは生命力のレベルの違いを見せつけられたような気がした。

わけもわからない虫たちに噛まれた僕の足は、あからさまに拒否反応を示しているのに対し、彼らはそもそも虫に刺されないらしい。

ほんとか?

船上のスピードキャスティング

だいぶ慣れてきた川の水コーヒーをみんなで頂き、、安定的に美味いポコの料理を頂き出発。

川幅はほとんど変わっていなかったけど、岸際に明らかに倒木が増え、いかにも!なシチュエーションが続く。

ポコにアイコンタクトをとると、ニヤっとしてから、投げろ投げろとジェスチャーが返ってきた!

しかし、目的の場所までまだまだ距離があったため、船のスピードはそのまま。

75馬力フルスロットルで進む船の上からのキャスティング笑

キツイかと思ったけれどさすがは上流域、いいとこに決まると出る!出る!

ボートが早すぎてなかなか乗らなかったけど、少しも飽きることはなかった。

1番釣れたのが、見た目の割にめちゃくちゃ派手なバイトをかましてきた、現地名「ワラクー」!

しょぼいバイトは、大抵ピラニア。

クピと呼ばれる淡水イシモチも掛けたけれど、船上にあげることはできなかった。

途中、気になったインレットを指差し、「あそこを打ちたい!」と、この遡行で初めてのワガママを(ようやく心身にゆとりが出てきた?)。

ここはタライロンかな、と菅野さんから授かったポッパーを遅めに音を立てて引くと木下から猛追&バイト!

2匹が取り合い、何度も食ってきたが乗らず、フォローに自作ルアーを投入、2投目でヒット!

初ピーコック!

めちゃ嬉しくて、自分で写真を撮ろうと思ったけど後ろにいたのが“お調子者”のプロム。

仕方なく、何度も何度も説明しながら撮らせたけど信用ならなくて結局三脚を使って自撮りした。

あとで確認したら案の定指入り!

そのあとがまたウザかった。

魚を貸せと言われ、「なぜ?」「なぜ?」と言いながら半分奪い取られたと思ったら、ポコに彼のスマホを渡し動画撮影。

馬鹿騒ぎして、まるで自分が獲ったかのように魚を持ち上げた。

このときばかりは自分でもわかるくらい態度に出てしまっていたと思うが、汚い英語単語をほとんど知らない自分がもどかしくも、「英語が勉強不足でよかった」とも、少しだけホッとした。

改めて、自分が三脚で撮った写真を。

釣りの話に戻すと、このときのタックルは、


ロッド:「Dear Monster MX-7
リール:バンタムMGL
ライン:PE4号
ルアー:「Banheiro

ハイテンポかつ、ハイスピードの中でのピンポイントキャストでは、「Banheiro」の使用感がダントツ。

そして「MX-7」でも無理ではないものの、操作感が快適とは言えないことも体験。

ことピーコックバス狙いの“ゲームフィッシング”に何故ショートロッドが多用されるのか身をもって実感……そのあたり吉田テスターのレポートが参考になりすぎます!

本命でピーコックを狙うとき、“ゲームフィッシング”(エレキや、オールで静かに漕いでもらう)のステージでは、タックル選びがかなり重要だなと思いつつ……今回の僕のような“旅”、エンジン船で走行しながらのキャストするといった無茶苦茶な状況では飛距離も必要となるので、(手首はキツくても)「MX-7」のような長竿も悪くはない、かも?

そんなこんなで、お昼すぎ。

ようやく目的地の支流に到着しこの日のキャンプ地を設置。

ご飯を済ませたあと、日没まで釣りかと思いきや……ココからはキャプテン&プロムの、自称・漁師たちの本業がスタート。

10個ほどの網を岸際の倒木にくくりつけていきました。

「半分は支払い損ねてる現状とはいえ、自分が金払って釣りしにきてるんだけどな」と思いつつも、温厚な空気感を乱したくないという思いでグッと堪えて「せめて俺にも網の場所を決めさせてくれ!」とお願い。

1番でかい網を“いかにも!”な場所に設置し、終わった頃には夕陽が沈んでいました。

夕方、ご飯を待っている間にハンモックの横でフライフィッシング!

これが無限に釣れる!

キャプテンが言うにはワラクーの幼魚だとか……僕には何種類も混じってるように見えるけど。

……後編に続く!

<参考レポート>

齢18歳の現役高校生(2023年1月現在)。中学校の修学旅行で向かう沖縄に、大物に耐えうるロッドを忍ばせたいとのきっかけでモバイルロッドに興味を持つ。知り合いの牧場で“お手伝い”し、初めての自腹で購入したロッドがディアモンスター「MX-7」(決めてはスピニングモードとくるくるシ ート)。 高校在学中から海外遠征を志すも、入学と同時にコロナ禍で足止め。結果、腐ることなく国内での大型魚釣りに高頻度で挑戦し、才能が一気に開花(しつつある)。 高校卒業後、しばらくは海外釣行を軸にした生活を計画中。