“クラッシュ旅”-外伝-。BS-TBS『アドベンチャー魂』ヌードリングの舞台裏と、“怪魚ハンター”と過ごした10代最後の1週間。

テスターの川上です!

前回レポートまでの“クラッシュ旅”4部作(その①導入編、その②富山バス&ビワナマ編、その③島根シーバス編、その④沖縄リバーGT&シャーク編)楽しんでいただけましたでしょうか?

今回は”外伝”と称して、その後の僕の10代最後の週について、“これから”の布石として書き残しておきたいと思います(多少話がとっ散らかるのはご容赦ください)。

さて。

沖縄から東京に戻り、次なる関東での目標の下見を経て地元の新潟に戻った僕は、すぐまた蜻蛉返りのように上京の準備を始めました。

メインは小塚さんの番組撮影のお手伝い。

BS-TBSの「アドベンチャー魂」というドキュメンタリー番組で、今回のテーマは”霞ヶ浦でヌードリング”だそうな。

「ヌードリング」を知らない方のため、ものすごくザックリ説明しますと、水中に潜りナマズに腕を食わせて“釣る”方法……本場アメリカでは、毎年死者も出てるとかいう危険行為。

アメリカでは「フラットヘッドキャットフィッシュ」と「ブルーキャットフィッシュ」という北米大陸の巨大ナマズ2トップがメインターゲットですが、日本に移入・定着している比較的小型のアメリカナマズでも可能で、実際に小塚さんはアメリカで手にしたことがあったそうな。

であれば移入・定着している日本国内でも成立するだろうと、去年霞ヶ浦で“道”を切り開いたイッピキがこちら。

以後、日本での成功者は小塚さん含めまだ3人だけ菅野テスター含む)と思われる、日本でははじまったばかりのガチ“冒険”なのです!(モンスターキス社調べ)

小塚さん曰く「自分の考える“究極の釣り”。冒険がテーマの番組ならこれしかない。釣りや魚に専門知識のあるスタッフがいない地上波で、“日本三大怪魚”を出すのはオレはやらない」とかなんとかで、ヌードリングならばと撮影を引き受けたんだとか 。

興味のある方は小塚さん著の『怪魚大全』が日本語では最も詳しい資料です。

当然、僕は未経験で、小塚さんから「霞ヶ浦でヌードリングのロケをやるから協力して〜」との連絡をもたった時は「なんで俺なん?」ってのが最初に出た感想でした。

後々本人に聞いたところ、

「んー(しばし沈黙)…暇そうだったから、かな?笑」

とのこと!

とりあえずロケ2日前に関東入りし、隙間時間を使ってアーバン系の魚を狙ってウロウロと。

“次なる関東での目標”は、今回もノーバイト。

苦労自慢する気はないですが、昨年のアリゲーターガー160オーバーのようなアーバンモンスターは、1回行って直ぐ釣れるようなもんではありません。

1行で報告が終わる遠征の積み重ねです。

少しだけ“マ”ナマズをからかって、ロケ前日の朝に千葉で小塚さんの車に拾ってもらい、その足で霞ヶ浦へ直行しました。

”ロケハン(下見)兼新規開拓”との事で、今までに実績の無いエリアも含めて”ラン&ダイブ”、テンポ良くポイントに潜っていき、穴の中に手を突っ込んでいきます。

興味はあったものの、普段の“釣り”とはかけ離れすぎていて最初の1歩が踏み出せないでいたヌードリング。

「なるほど、こんな感じか〜」なんて、空気感を感じながら着々と“外道”をゲットしていきました(笑)

霞ヶ浦らしいこんなルアーも。

しかしながら“本命”のアメリカナマズはなかなかに厳しい条件だということが明らかになってきました。

“ヌードリング”は巣穴の卵を守るオスを狙った、いわばネスト撃ち。

一般にアメナマの産卵期は5〜7月と言われていますが、今年の酷暑で岸際の水温はロケの7月末時点で30度。

既に産卵期は終わりつつあるのでしょう、もしくは水温の低い沖の深場にエリアが変わったか、いずれにせよ岸際でアメナマの反応は少なく、ロケを引き受ける段階(1ヶ月前)から小塚さんが懸念していた通り、明日のロケ当日も苦戦が予想されました

とはいえ、ロケの日程は動かない。

芸能人含め、スタッフ10人以上が動く大がかりな撮影。

「ヌードリング」というスタイルあっての企画ですから、ロッド&リールで普通に釣ったり、ブラックバスなどターゲット変更といった“逃げ道”はありません。

「釣り番組みたく確立されたゲームフィッシングならいくらかラクなんだけど。地上波では、フツーにフツーの魚釣っても、意味無いからね〜。“釣りが上手い”の、その先が求められるわけよ」と。

実は自分も昨年末、とある地上波ロケの依頼を受け……結果が出せず、数秒の出演で終わったことがあり、そのシビアさは身に染みています。

コンプラが叫ばれる昨今、個人発信者のように単身、秘密(グレーゾーン)のピンポイントでパッと釣るなんてズルすることもできない。

正々堂々、事前に許可をとった場所でやるしかない(つまり当日、状況に応じた臨機応変な対応も不可)……撮影は、こと地上波ロケは、いわば“予告ホームラン”のみ、究極的な縛りゲームな訳です。

「いた!川上、この穴に手を入れてみろ!」

下見に入った最後のポイントで、ついに小塚さんに“アタリ”。

自分もその穴に手を伸ばせば……確かな生命感!これがヌードリング!

この、何回でも噛みついてくる感じは、卵守ってるオスだろうよ。悪いなー、いま獲らせてやれなくて。まぁ1箇所だけだが“保険”が無いよりマシ。明日他で撮れれば、この魚、ロケの後に川上くんが闘ってみな(笑)」

小塚さんはこんなふうに言うと、穴の場所がわかるよう目印をして、ロケハンを終えました。

本当に、明日も同じ穴に同じ魚がいるのか?

ヌードリングってこういうものなのか?

ロケがどうなる事やら……正直この時は心配でした。

「体も冷えたし、ラーメンでも行こう!」

さてさて、連れていかれたのは、明らかに怪しい町中華。

「2週間前、ディレクターたちと場所の下見に来た時も来たんだけど、喜んでたよ。コンビニでお菓子もいいけどさ、釣りだけじゃなくて、こういう“引き出し”も増やしてけよ〜」

ネギラーメン200円(餃子も200円)、ネギしか具が無いという意味でのネギラーメン(量はそれなり以上)はたしかにオモ旨かった……。

迎えたロケ当日。

番組のメインパーソナリティである東野さん、そして撮影隊とSDGマリンさんで合流。

ロケバスや機材車を停め、セッティング確認できる広い駐車場に、トイレや水道をお借りできる事前交渉済み。

「少しでも釣りの時間を確保したいからな。何が起こるかを、どこまで見えてるか、だ」みたいなことをストレッチしながら小塚さんは言っていました。

オープニングを撮影した後、最初のポイントへ向かいました。

「可能性の低いポイントから行くわ」と小塚さん。

一箇所目のポイントでは、アメナマの気配をある程度は感じられたものの、キャッチまでは至らず。

僕は自分のカメラを回してサブ動画の撮影に徹していたので潜っていないのですが、小塚さんと東野さんは1、2回魚に触れたそうな

脂肪の付いていない僕にとって、霞ヶ浦の水中はかなり寒かった……が、腹回りに肉がついた小塚さんは余裕。

「魚とフェアに」と、手袋はもちろん、靴も履かず、素足。

「このポイントで獲れちゃえばラクだったが、しゃーない。昨日の見つけといた穴行こう。映像的には、苦労の末に最後に……って方が盛り上がると、とポジティブシンキングで!(苦笑)」

こうして昨日目印を残しておいたポイントへ移動します。

似たようなポイントは無数にある中で……隊列を組んで駐車した、その時になって気づきました。

きっと小塚さんは事前の下見で、魚の状況はもちろん、駐車スペースが複数台分たっぷりあるか否かを見ていたのだと。

大所帯の撮影隊に、小回りの効く動きはできない。

オープニングやインサート撮影で時間が取られ、実際、ロケでは釣りしている時間はほとんどありません。

釣りの腕や、魚への知見といった専門性は大前提で、それに加えて先読み力……というか、総合判断能力、人間力。覇気。

「自称・怪魚ハンター」はいくらでもいる昨今、ディレクターによるお膳立ての上で“釣りするだけ”の「タレント」では無い、撮影側の都合まで考え立ち回れる選手兼監督。

出演するもしないも自由、長いものに巻かれる必要は無く、最終的に自腹でやりたいことできちゃう、どこまでも行けちゃう子供兼大人ーーー。

さて。

このポイントが時間的にはラスト、「いよいよ厳しいかな?」と思い始めたその時、小塚さんが叫んだ!

「イタイタぁ!!!」

全カメラが小塚さんの方を向き、現場に緊張が走る。

カメラを向けられた小塚さんが水の中へと消える。

東野さんがボガグリップとネットを構える。

何度もアタックはあるが、穴の形状が腕を入れるに難しく、苦戦している模様。

何回目のアタックだったか?

構える一眼のレンズ越しに目に飛び込んできたのは、ドス黒いアメナマに手を食われながら水面で吠えてる小塚さん。

そして東野さんが構えていたネットにダンクを試みる!

(番宣動画より切り出し)

刹那!ナマズが暴れ、小塚さんは肩を脱臼!(笑)

アメナマに噛まれ続けた右手からはかなりの流血、肩は脱臼。

でも、スタッフ全員は笑顔。

拍手喝采の中、苦痛に顔を歪ませながらも笑う小塚さん。

一瞬で場の空気を変えた……これが“怪魚”、これが”ホンモノ”らしい。

その後、SDGマリンさんに戻り、慣れた手つきで調理&インタビューカットを撮影。

地上波としての“一般ウケ”のみならず、玄人向けの情報発信、特定外来生物の扱いに関しても万事抜かりなく撮影“させて”、ロケは終了&スケジュール通り解散。

僕の目から見て、完全にロケをコントロールしていた……良い意味で自作自演の小塚劇場。

(それをラクだと喜ぶディレクターもいれば、扱い辛いと思われることもあるだろうなぁ、とも感じました。笑)

そんなこんなで「正直、ボクが来た意味ある?」と思いながらのロケでしたが、いざ映像に纏まって1時間弱の、その舞台裏に、小塚さんがどう動いていたか、どんな準備をしていたか、一通り見せてもらったこと……。

「暇そうだったから」と呼ばれましたが、“怪魚ハンター小塚拓矢(37歳段階)”の真剣勝負を間近で観察できたこの数日は、貴重な経験になりました。

勝利の焼肉をゴチになり&とある魚を狙って車中泊、が雨で大移動決定。

ハタチの誕生日まであと1週間、10代最後の旅は「いざもうひと勝負!」と福島県へ、小塚さんのミニバンでドライブ。

なんとまぁ快適な乗り心地。

「バランス感覚な。世間ズレを気取るのもいいが、“世の中のフツー”(ファミリーカー)も知った上でなきゃ、ただの独りよがりよ〜」とかなんとか。

本来なら、(乗り心地は快適じゃなくても)自分の軽バンで走りたかった”新たな釣り”。

小塚さんは最悪ロケ本番当日に成功しなかった場合に備え“居残り”(セルフ撮影)の日まで用意して来ていた周到さ……結果、空いた1日は、僕に車ごといただけることになりました。

未だ見ぬ日本を模索して、やってきたのは某水系。

Googleマップで目星をつけランガン。

結果はノーバイト、でも久しぶりに車で、自由に走り回る釣りは楽しかった。

まだまだ未開拓の場所が日本にはたくさんある事を肌で感じた。

そりゃもう強く。

”新たな釣り”の詳細はまたいづれ、そう遠く無いうちに形にできるかと。

……この間、小塚さんはロケで痛めた肩とずっと戦ってました。

福島から自分の地元・新潟への道中、脱臼してても延べ竿で楽しめるウチダザリガニをガイド!

やってきたのはとあるゴロタ場。

HUNTERS HT-26」をチョイスし、餌のサバの切り身をぽいっと足元のゴロタ場に放り込むと、どこからともなく湧いてくるウチダザリガニ達。

開始早々に小塚さんが良型ウチダを釣捕!

小塚さんと同じ、右肩を欠損した個体

過去イチの爪サイズの個体で、ロブスターにしか見えなかった!

僕も続いて良型をゲット!

ハサミがイカつすぎる……が、こいつは左腕を欠損。

どういうわけかこの場所で釣ることができるウチダザリガニの特大個体は、過去を振り返ってもハサミが片方の“隻腕”ばかり。

しばらく釣り続けたものの、両方の鋏が生え揃ったウチダザリガニは中型の個体ばかり……なんでなんでしょうねぇ?

まぁそんな謎は継続釣査していくとして、ある程度の数を揃えたところでサクッとボイル!

医食同源!?、隻腕ロブスターを、“隻腕”(脱臼)の小塚さんにゴチ

茹でて赤くなると、更にえげつない迫力になります。

味の方は、もちろん美味!

“クラッシュ旅”として沖縄のサメで締めくくりかと思いきや、最後はザリガニ……なんとも自分らしい獲物で僕の10代は幕を閉じたのでした。

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初めてのマイカー(中古軽バン)を納車1ヶ月で廃車にしたことから始まった今回の“クラッシュ旅”シリーズ。

自らの先読み力の無さを痛感し、いい勉強になった、2022年夏の甘酸っぱい思い出。

帰宅&ハタチの誕生日を迎え、「だからって何も変わんねぇな」と自転車&徒歩で地元ライギョ&ナマズを巡る……いわば振り出しに戻った僕に、またしても小塚さんから着信。

到着した富山のモンキス事務所、そこにあったのは……。

この原チャをお前に預ける。いつか立派な車を……RX-7でも買ったら返しにこい。ナンツッテ……笑」

全然乗ってないらしく、錆び付かせるくらいなら誕生日プレゼントに、と……しばらくは、こいつと共に駆け巡りたいと思います!!

“クラッシュ旅”-外伝-おわり。

中部地方在住。幼少期の海釣りにスタート、中学時代はライギョ釣りにハマり、以後淡水魚釣りに傾倒する。高校2年時から釣りや生き物に関するライター活動を開始。卒業後もバックパッカースタイルで日本中を駆け巡り、持ち前の意地と諦めの悪さで憧れの魚たちを抱きしめてきた。2021年には、日本国内では過去最大級と思われるアリゲーターガー(167cm)を釣り上げ、地上波テレビにも出演。好きな飲み物はドクターペッパー。