アフリカ・ラテス旅Season4(後編)。自分にしか分からなくていい、ナニカを求めて。

テスターの藤田です。

「前編」に続き、ナイルパーチを狙ったトゥルカナ遠征記の後半の模様をお届けします!

7日間の僻地滞在を終えて町に戻った僕ら。

隊員たちの士気を保つため1日休養して、食料と水を追加で買い込み、再び僻地へ釣りに出ました。

月周りなども意識しつつ、第二遠征で組んだ日程は6日間。

引き続き目標の40㎏オーバーを追いかけます。

僻地への道中、吹き荒れる強風でウネリを伴った波が立ち、大荒れ状態に。

「この波は危険だ!あっちに見える岸まで行って、リラックスしよう」などと隊員たちは言い出しましたが……。

彼らが指さす「あっち」の岸というのは、どう見ても、ここから目的地に到達するよりもさらに距離があります。

絶対に、このまま少しずつでも進んでいった方が良い。

っていうかリラックスってなんなんだよ……と思いながら「NO, ポレポレ(スワヒリ語でゆっくり)で目的地を目指そう」と伝えて、大波の中を進んでいきます。

(下写真はまだ穏やかな日のイメージ画像。荒れているとカメラを取り出す余裕がありません)

アフリカの釣り旅ではある程度のリスクは必然だと思います。

極端に言えば、安全第一でいきすぎると何もできなくなってしまうわけで……。

波をかぶりながら、船底に溜まる水を掻き出しながら進んで、ずぶ濡れにはなりましたが無事目的地に到着。

波もマシになってきたので早速トローリングを開始、水深3~4mラインのフィーディングスポットから流し始めるとすぐに小型個体が当たってきました。

初日の釣果は全て小型だったものの、午後からの実釣で6本キャッチと初回遠征に続いて依然ハイペースを維持しています。

このまま釣り続ければ、そのうち、絶対に怪物に遭遇できるはず!

……しかし翌日からは毎日大風が吹き荒れ、湖はさらに大荒れ状態に。

ここまで来る道中は何とかなるレベルでしたが、ナイルパーチが刺してくるような岩場の浅瀬をトローリングをしながらの操船となると、なかなかリスキー。

風裏になるエリアはパッとせず、良ポイントに限って大荒れ状態が続きました。

2日目は2本、3日目は3本、4日目は1本……と初回遠征に比べると一気に反応が減って、かろうじてボウズの日はなかったもののキャッチ数は1~3本をいったりきたり。

そして、当たってくるのは中~小型ばかり。

適度な荒れ方だとナイルパーチの活性は上がると思うのですが、これはあまりにも荒れすぎです。

そんな中を強行突破してトローリングで流したりもしていましたが、ウネリまくりの大波の中でも(だからこそ?)当たってくるのは小型のタイガーフィッシュ。

数バイトあって2本キャッチ。

トゥルカナでは初めて釣りました。

普段は姿を見せないこいつらが活性化しているということは、ナイルパーチは留守なんでしょう。

5日目も朝から大荒れ。

巻き上げるウネリに押されて戻されてしながらなんとかトローリングしていきますが、反応はありません。

少し波が落ち着いてきた昼前、たまたま回遊に当たったのか隊員の握る竿に3連チャンでストライク。

いずれも良型で内一匹はスーパーコンディションの116㎝!

このサイズになってくると一気に迫力が出てきます。プロポーション良く、今遠征で釣ったナイルパーチの中でダントツの美個体でした。

期待した夕マズメは何も起こらず、5日目は3本キャッチで終了。

あっという間に第二遠征最後の夜。

明日が6日目、最終日です。

「怪物クラスを引き当てるまで、ひたすらに数を釣り続けるしかない」という考えでこの遠征に挑んでいたわけですが、連日の釣果が3本アンダーという厳しい現実。

疲れが溜まり、気力も沸いてこなくなり、うなだれる僕。

アフリカンヒップホップを大音量でスピーカーから流しながら、「心配するな!俺はいつでも神を信じている。お前も祈るんだ」という隊員たち。

(下写真、今チームで唯一バカ野郎のスティーブン。拾ってきた鵜を捌き中。爆音スピーカーの持ち主)

あのな、何も考えないでただお祈りしてるだけじゃ、なんにもならないんだよ。

フックを研いでリーダーを結び直して、「頼む、眠るときだけは音楽を消してくれ」と馬鹿スティーブン(爆音のスピーカーを抱きかかえたまま寝ている)に伝えて、就寝。

テントにもぐりこみました……。

第二遠征最終日、6日目。

釣りに出てみると荒れ模様は程よく収まっていき、ナイルパーチも多少活気づいている感じがしました。

小型ばかりながらも昼過ぎまでに5本キャッチし、迎えた夕マズメ。

これまでよく釣っていたラパラのXRAPマグナム20をロストしてしまったため、だいたい同じぐらいの潜行深度のルアーを……ということで、新しくCDマグナム22を投入。

流し始めて10分程した頃、「ズガンッ!」と鋭くかすめたようなバイト、でも掛からず。

「クッソ~!」と呟いた数秒後、ドスンっときて一気に強烈なファーストラン!

沖側に出ていったので止まるまで走らせて、ゆっくり寄せて、後は浮かせて捕り込むだけ……間違いなく今遠征最大魚。

手足震えながら「落ち着け、落ち着け」と口に出しながら、慎重に戦いました。

前回の126㎝と同じく、エラアライを完全に封じ込んで、船の真下からグルグルと弧を描かせて水面まで浮かせて、カンヌキをシングルフック一本が捉えているのを確認。

ラパラのフィッシュグリップを上手くハメられず、咄嗟にハンドランディングに切り替えて両手で下顎を掴み、船に引き上げました。

久しぶりの心からのシャウト、ヨッシャっ!!!

撮影のため、近くの砂浜に船を着けて入水しました。

これまで116、126、ときて、こいつは136㎝!

おそらく目標の40キロはないですが、自己記録は更新です。

アカメの130㎝というのを過去(2012年)に手にしているのですが(下写真)、だいたい同サイズのアカメと比べるとナイルパーチは鱗がかなり細かく、身体も柔らかい。

そんなこともあってか、瞬発的な馬鹿力はアカメの方が上と感じました。

130のアカメはある程度年を取っている感じがありましたが、ナイルパーチはこのサイズでも若々しい整った体形をしています。

これで、まだまだミドルサイズなのでしょう。

「本当に心臓に悪いよ。第一遠征、第二遠征とも、最終日の夕方に最大魚が来るというね」と隊員たちに言うと、「だから言っただろ~俺は神を信じてるって」とドヤ顔する彼ら。

うん、神頼みは好きじゃないけど、こういう時は素直に都合よく解釈しておこう。

兎に角、良かった!!

第二遠征は6日間で21本、110オーバーは116、136㎝の2本で終了。

この段階で目標の40キロオーバーが捕れていれば、他国に別の魚を求めていく予定でしたが、決心しました。

「今回の旅は、全てをトゥルカナに注ごう!」

……それから10日後、再び同じメンツで第三遠征へ繰り出しました。

これが今旅最後のナイルパーチ狙いの僻地遠征で、用意した日程は9日間。

当然ですが、一人旅ゆえ、隊員4人分の給料、食料と水、ボート・エンジンのレンタル料、国立公園内で釣りをする場合はライセンス・パーミッション料(イコール、この地では、職員のポッケに入る賄賂)……と、釣りを続ける限り出費がかさみ続けています。

何より、トローリング作戦で一番お金がかかってくるのがガソリン。

日本よりも高くて、これも一人旅ではシンドイ要素。

現実的な話になってしまいますが、今回現地で使った金(合計金額)があれば、有名なマーチソン滝の釣りロッジに何日も滞在して、より確実でスマートな方法で、巨大ナイルパーチに挑戦することだって可能だろうと思います。

でもそんなことは問題じゃない、ソコじゃない、自分にしか分からなくていい、ナニカを求めて。

6年越しの挑戦を完結させて僕は心から叫びたいのだ!

……そんな心意気でATMからお金を引き出して(そのため、一度トゥルカナを離れて銀行のある町へ出ました)決行した第三遠征。

しかし現実は厳しくて、ナイルパーチ達は沈黙。

これまでにない反応の悪さでボウズが続き、僕の心は日に日に追い込まれていきました。

産卵絡みなのか、なんなのか(釣り上げると精液を出したり、腹を開けると卵が入ってたりを確認)。

魚探にはっきりとナイルパーチの魚影が映るのに、全然反応してくれない……。

一日だけ5本釣れてきた日がありましたが、それ以外はボウズや、本当に小さな個体や痩せてコンディションの良くない魚を1、2本キャッチと、低空飛行が続きました。

第三遠征ではナイルパーチの写真がないので、飯ネタを。

ケニアの主食はウガリといって、トウモロコシ粉をお湯で練ったもの。

飲み水(ペットボトルのミネラルウォーター)とは別に、調理用の水(井戸水)を隊員たちにお使いして買ってきてもらっていたのですが、ガソリン臭がめちゃくちゃする……ガソリンが入っていた容器を使いまわして、調達してきた模様。

ボウズの日はガソリン臭いウガリと蒸かしたジャガイモで腹を膨らませるしかなく、心が荒みました(ので、ロクな飯の写真がありません笑)。

ナイルパーチが釣れた日は隊員たちが「“トゥルカナ”スープ」を作ってくれます。

スープとは言うものの、焚火に鍋をかけてナイルパーチの頭や骨をぶち込み、薄い塩水で「茹でる」だけ。

物凄いアクが出て鍋は泡の吹き溜まりのようになるけど、気にせずそのまま頂く感じ……正直「犬の餌ですか?」って見た目。

でも、塩を追加さえすれば身はイケます(スープは臭い、冷めると結構キツイ)。

こんなでも、ちゃんと食えるって、ナイルパーチは本当に食材として優秀ってことですね。

……望みの見えなさに気が病んできたこともあるけれど、プラス、ツライ環境や気候にヤラれて具合の悪い日が何日かありました。

頭痛がひどくて、船底にぶっ倒れながらも竿をホールドしてトローリングを続けていた時。

「おい、ここはもうダメだ。●●(地域名)に行けばめちゃくちゃ釣れるぞ。俺たちが前に密漁したとき、延縄で釣れた魚は全て30キロオーバーだった!」

「●●(地域名)、イズ、ベストプレイス!!」と隊員二人(馬鹿スティーブン含む)が言い出しました。

●●というのは、6年前にも「すげーとこがあるぞ!」と聞かされ、行ったことのあるエリア。

当時はその場所までたどり着いた途端「もう帰りの分のガソリンしかない!」と隊員に告げられ、絶望した思い出があります。

僻地すぎてガソリンが買えずにトローリング出来ず、仕方なく延縄だけやって、やたらとデカいスッポンが捕れただけで、ナイルパーチは2キロ程のブラックバスみたいなサイズが一本釣れただけでした。

(下写真、思い出の巨大ナイルスッポン@延縄)

当時自分の目で見た限りだとそんなに良いエリアには思えなかったけど、「●●(地域名)最強伝説」を現地民から聞かされることが多く、気にはなる……。

心が弱っていると正常な判断ができなくなるもので(笑)、今持っている数日分のライセンスを捨て、最後に新しい可能性に賭けてみたくなりました。

アドレナリンで頭痛が治まってきて、隊員たちとこれから新天地でのプランを話し合いながら走り続けていくと、ズドンっと僕の竿にストライク。

パッツパツのコンディションの良い小さなナイルパーチ、この旅100匹目。

よし、キリも良い。

これを最後にして新しい地へ行こう!

キャンプを撤収して、半日走って、その爆釣伝説の地へやってきた僕ら。

またここも6年前と大きく環境が変わっていて、国立公園とのギリギリのラインに大勢の漁師たちがコロニーをつくって住み着いている……。

「夜になったら国立公園の中まで漁に行くんだ」という漁師村の密漁長。

「6年前は釣れなかった?最近ではナイルパーチが獲れるようになったんだ」

なんか、嫌な予感がする……。

翌朝、国立公園内の駐在オフィスで4日分のライセンス・パーミッションを新たに取得、釣りに出ました。

が、どこへ行っても密漁の延縄、延縄、刺し網、刺し網……

100mはありそうな刺し網を引っかけて、ハァハァ言いながら手繰って全て回収しましたが、ゾンビ状態で悪臭放つナイルパーチが一匹掛かっていたのみ。

これは……終わってる。

嫌な予感は的中しました。

初日に一本釣れたものの、その後は全日ノーキャッチ。

魚が全くいないわけではない。

魚探にナイルパーチが映りはする、けど、ここも口を使ってくれない……。

たまにバイトが出ても乗らなかったり、掛かりが浅いのか全部バレてしまう。

とは言え全て小型個体で、大型の気配は全くしない……。

「ディスプレイス、イズ、ワースト!!」(この場所はサイテーだ!)と馬鹿スティーブン。

お前がここがベストプレイスって言ったんだろうが!

(下写真、朝、出船したくなさそうなスティーブン。ネタにしてますが悪い奴ではなく、友達として信用はしているので、ご心配なく。笑)

しかし、こればっかりはどうしようもなく仕方のないことです。

アフリカの釣り旅では全て、最終的には自分で判断。

特に釣り(目的の魚)に関する情報は、現地民の威勢良すぎる話は半分程度に、コレ基本です。

それを承知の上で賭けに出て爆死したわけですが……目標に届かず悔しいけれど、全日程を走り切って、悔いは残りませんでした。

最終日にデカいのが来るジンクスは、今回ばかりは発動せず。

帰り道、実績ポイントに寄り道して一流し。

これまで荷物の見張り番で退屈させた青年隊員にファイトさせて、ランディングした小さなナイルパーチが、この旅最後の一匹となったのでした。

第三遠征は9日間で14本キャッチで終了。

というわけで、今回のトゥルカナ遠征では実釣トータル22日、総キャッチ数102本。

内メーターオーバーは~108㎝が6、7本くらい、116㎝×1、126㎝×1、そして最大が136㎝×1。

過去の自分は大きく超えることができました。

それでも、これだけ釣っても、怪物には届かないのか……!

トローリングでナイルパーチに挑むことはもうないような気がしていますが、いつか、今の自分を超えられる日まで。

それまで、巨大なナイルパーチを夢見て生きていこう。

バラマンディにも挑戦したいし、アカメにもまた会いたいし。

僕の人生、ラテス(アカメ属)との付き合いは一生続いていくのだと思います……。

<追伸・トゥルカナのポリプテルス>

ナイルパーチへの挑戦を終えてからはトゥルカナ北部へ遠征し、ポリプテルス最大種、ビキール・ビキールを追いかけました。

メインと考えていたエリアはこの直近のタイミングで部族間抗争が激化。

まさに行くつもりでいた地域で「60人以上が殺害された」というニュースが入ってきて、近くの集落に滞在していてもドンパチやっている銃声が響いてくるような情勢となってしまい、断念せざるを得ませんでした。

望みは薄いですが、切り替えて第二候補のエリアへ。

5日間滞在してガチ・延縄作戦を決行しましたが、結果は出ず。

全体的に魚が少ない環境で、湿地帯に首まで浸かってカバとワニに怯えながら、「ダメである」ということをひたすらに確認するという絶望的な作業を、なんとか終えたのでした(涙)。

滞在最終日の夜中、延縄作戦の望みを捨て、ヘッドライトと「MX-7S」を持って一人陸っぱりで水辺を散策しました。

岸辺でワニの赤い目が光る中、水深数センチの浅瀬、水中にも赤い眼を発見。

現地民が捨てていった小ナマズを切り刻んで、その口元にそっと切り身を近づけると……「チュパッ!」と水面を割って食いつきました。

そんな日本の“タウナギ釣法”まんまで出会えたのは、ポリプテルス・セネガルス!

こういう釣りがあるかもしれないから、僕の旅にはどこへ行くにも「MX-7S」が欠かせないのです。

トゥルカナらしいスプーンヘッドの大型個体には出会えませんでしたが(やはり、この地は全体的にビミョーなエリアなんでしょう)、何匹も確認して5匹キャッチ。

以前から追いかけている某国の大型ポリプテルスも、このタウナギ釣法(夜のサイトフィッシング)で狙うのはアリかも?と、また視野の広がる経験となったのでした。

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…..というわけで、トゥルカナ北部の湿地帯での滞在を終え、長かった今回の旅は完結!

旅先で2か月半も同じ地域に居続けるというのは初めてだったのですが、旅と言うより、もはや半移住的な感覚でした。

6年前の初訪問ではコテンパンにやられ、現地民との衝突も多く、正直良い思い出がほとんどなかったトゥルカナでしたが……。

そんな地に意を決して居座ってみれば、今回は良い出会いがあって、辛いことやトラブルも多いけれど楽しめて、悔いも残らず釣り切って、完走できました。

たぶん、僕がちょっとだけオトナになってしまったのかな?(笑)

滞在中ずっと行動を共にしたトゥルカナの隊員たち。馬鹿スティーブン含め、彼らがいてくれたから、挑戦できました。

僕らにしかつくれない旅になったと思います。

次の海外遠征はアフリカ複数国周遊が目標。

一年後、また彼らとチームを再結成しよう。

ビキールを捕りに、トゥルカナを再訪します!

<関連ページ・レポート>

幼少期から魚類に興味を持ち、6才で釣りを始める。バス釣りに熱中していた中学時代に小塚と武石が開設していたホームページと出会い、“怪魚”の世界に強い憧れを抱く。大学進学を機に北海道に移住、稚内から与那国島まで、アジアからアフリカまで、国内外を釣り歩いた。サクラマスの研究で大学院を修了、その後も北海道に残り、トラウトやロックフィッシュなど北の大地の釣りを楽しみながら、世界への旅を軸に据えた生活を送っている。