携行性は当たり前、アクションと釣りを変えていくロッド、「UP-LIGHT 55///65ULV」(前編)

先日動画で仕様を説明させていただきました「Shinkirow UP-LIGHT55///65ULV」。

ご覧になっていただけましたか?

Shinkirow」シリーズ初となる替えティップ搭載、初のバーチカルモデル「V」表記、そして最軽量モデル(65セッティングで89gをマーク)。

モンキスらしくない?

異様な風貌からチャレンジングなモデルである……ってことは伝わっているかな?と思います

「イカメタルって日本海側では流行ってるみたいだけど全国的には実際どうなの?」って方も少なくないだろうし「流行りだから作ったの?」って人もいるかも。

実はイカと私(ヨシダ)の関わりとこの釣りの変遷について説明していきましょう。

学生時代の私は福井県南部・小浜市に位置するVIC釣具店にバイトとしてお世話になっていました。

私自身ここでのバイト生活がキッカケとなりイカ釣りにどハマり。

ロッドやエギを天引きで買うもんだからバイト代は無くなり、朝、昼、バイト後とエギングに明け暮れる日々。

ポイントから学校に通い、下校後はまたポイントに。

結果、肺炎発症したり、単位が怪しくなった……(いや落とした)のも懐かしい思い出です。

話を戻すとVIC釣具店自体が今日のイカメタルの源流の一つであり、なんなら「オバマ(小浜)リグ」の名付けの店でもあるわけです。

夏の風物詩とも言えるマイカ(ケンサキイカ)釣り。

胴付仕掛け&電動リールの釣りからライトタックルのイカメタルに釣りがシフトしていく……レジ打ちの合間そんな狭間と変遷を目にしていた私はもう、何の抵抗もなく、この釣りにのめり込みます。

イカメタルの一次ブームは2014~15年ごろ、シーズン物の釣り出し、ここから落ち着く……ことなく、今や九州~北陸までこの釣りは広まり、売り場は拡充、船も爆増。

私、夏場の遊びとしてしっかり「イカメタル」を遊び尽くして、かれこれ10年以上なのです……。


MX-5S」でも遊べなくはない。

ただ、ベターであって、ベストではない。

ティップの破損機会がどうしても多いこの釣り、折れちゃった&修理に出してたらシーズン終了ってことも多い。

「修理対応、大変だしな……」なんて、どうしたものか?と手をつけず昨今に至ったのですが、ある日事務所で打ち合わせを進めていた際……。

小塚「むしろ、モバイル屋のウチが最も修理早いんじゃないの? 折れた翌週には復活(破損連絡→代替えパーツ発送)できるじゃん」

ヨシダ「確かに!」

小塚「何ならモバイルだからこそ面白いロッド作れるんじゃないの?」

「確かに!」

こうして「やるなら徹底してやるぞ!」と開発に踏み切りました。

北陸や山陰からスタートしたイカメタルゲームも今日では九州、太平洋側、そして東北、沖縄一部エリア、北海道へ……と全国へ展開中。

今現在も釣りのできる船とエリアが広がり、フィールドへさえ出向けば1年中この釣りが楽しめる状況となってきました。

前置きが長くなりました、そろそろ話の本題に入っていきましょう。

イカメタルとモバイルロッド??

このマッチングを意外に思った方や、モバイルロッドである意味合いをどこに見出したらいいか?

理解に苦しむ人にこそ、今回のレポートは目を通していただきたいと思います。

モバイルロッドのメリットである携行性は当たり前に、モバイルロッドだからこそ実現できたのがこれまでも「Shinkirow」シリーズでご覧になっていただいた、拡張性、可変長機能。

UP-LIGHT55///65ULV」はエクステンションシャフトに加えて2種のティップを標準搭載。

2×2の4段階変長……というより4段階可変調(可変アクション)ロッドと言ったほうがいいですね。

付属するティップは2本

ロングとショートですが、どう使い分けるか?

ご覧の通りレングスのみならず、全くの別設計なので太さ&パワーが全く違う。

つまりロングティップを切り詰めてもショートティップと同じアクションにはなりません。

さて、そのティップでそれほどに使用感が違うか?

オバマリグでの使用を前提にお話しします。

PE0.6号使用の場合、ロングティップなら使用感として快適なのは10~15号前後のナマリスッテ。

シーズン初期イカが小さかったり、タッチが繊細で捉えにくくいセンシティブな状況。

穂先にアタリが出にくい、乗せにくい。仕掛けを動かしたくない。

シャローエリアで小型スッテのフォールでアタリを出したい時。

そんな“静”の状況でこのティップの出番です。

シャロー(~40m)程度で相性が良し!

一方、ショートティップが快適なのは15~25号、MAX30号程度を標準。

アクティブにスッテをジャークやシェイクしてイカを誘っていく、ディープエリア、ボトム付近にイカが張り付いている状況。

手返し良く誘いをかけて、スピーディーに誘っていく“動”の釣りにおすすめです。

どっちが良い?ではなく、どんな状況にアダプトするか?を見極めてみてください。

迷ったらまずはロングティップがおすすめです。

続いて、エクステンションシャフトについて。

このエクステンションシャフトで変更できるレングスは7インチ、約17.5cm。

私自身としては、エクステンションシャフト有りで使うことをデフォルトとしています。

ではエクステンションシャフト抜くことで何が起きるか??

エクステンションシャフトを抜くことで、レングスを落とす=操作性を上げることにもなりますが、真骨頂はパワーを落とすこと、アクションが大きく変化しスロー気味のアクションに移行します。

私自身、このロッドのブランクスに求めたのはブランクパワーを必要最低限に抑えつつ、かつ可変構造との相性を取るか?

そもそもイカ釣りにおいて過剰なロッドパワーは不要です。

こと特にヒット後に過剰なロッドリフティングパワーが発揮されると身切れによるバラしの原因となります。

かと言ってもリフティングしてくれなさすぎてもスッテが動かない……ロッドパワーのバランスどりはかなり綿密に設計を進めました。

実際にイカのサイズが小さかったり、掛かりが浅い時にはエクステンションシャフトを抜いてみてください。

短くなることで操作性が上がり、感度の向上にもつながるので、この点も見逃せないポイントです。

この使い分けで、

・6’5”(ロングティップ&エクステンションシャフト有り)

・6’0”(ショートティップ&エクステンションシャフト有り)

・5’10”(ロングティップ&エクステンションシャフト無し)

・5’5”(ショートティップ&エクステンションシャフト無し)

以上、4つのレングス….だけじゃなく、4つのアクションを作り出すことができる

実際の使い方として、まずは最長の“65”セッティングを基準としましょう。

一般的な12~20号のナマリスッテで50~20m程度のレンジを狙う。

ザ、どスタンダードなイカメタルのシチュエーションです。

大抵のシチュエーションに対応できると思いますし、標準的なところより若干柔らかめのティップに仕上がっていますので、

この釣りを存分に楽しめると思います。

4セッティング中、最大のレングスとなり、ストロークを稼げるのでロングフォールにも対応します。

北陸エリアのケンサキイカはもちろん、東北エリアのヤリイカは“65”セッティングでぜひトライしてください!

続いて“60”セッティング

潮の流れが速め、水深が70mオーバー、抵抗のある中~大型のドロッパーを使っていきたい、船長指示の鉛スッテウェイトが30号オーバー。

このようなシチュエーションや、アクションを強めのワンピッチなどで仕掛けたい時など、負荷が増す、誘いに行くならこのセッティング。

4セッティング中、最も高負荷に対応します。

まずは65とこの60セッティングを使い分けることでUP-LIGHTの性格を理解できると思います。

潮流がそこまで速くなければ、私は35号程度まで使います。

ターゲットとしてはそこまで注視されていないけど、パワフルな引きが魅力のスルメイカは“60”セッティングでどうぞ!

続いて、“510”セッティング。

ウネリがキツい、とにかくスッテを動かしたくない海況。

また、イカパンチが小さく、アタリはあるが乗せづらい……そんなセンシティブなシチュエーションならこのセッティング。

4つのセッティング中、最もオートマチックな乗せ調子が“510”。

基準の“65”セッティングからエクステンションシャフトを抜くだけ、ラインを通し直す必要はありません。

誘いの段階はもちろん、ヒット後までロッド全体がパラボリックに曲がりこみ、イカのサイズ問わず楽しめるセッティングです。

ヒット後は4セッティングイチ曲がり込みます。

これが超楽しい!

って、大袈裟な表現じゃないですからね、曲がり込むブランクスを楽しんでください。

エクステンションシャフトを抜いた分、ティップと目の距離が近くなるため、ティップのアタリが見え易いこともこのセッティングのポイントです。

シーズン初めの小型のケンサキイカだったり、花見イカサイズのスルメイカもコレ!

最後に、最短の“55”セッティング。

イカは要るのにスイッチが入らない….…そんなこともよくあるこの釣り。

ショートロッドの軽快さとハリのあるティップを生かし、シェイキングや1/2ピッチジャークなど、激しくスッテを動かしてイカにスイッチを入れる攻めのセッティング。

エクステンションシャフトが無いことでロッドパワーが不足するように感じますが、ハリのあるティップがアクション入力をサポート。

こちらから誘い、スイッチを入れ、掛けにいく。

攻撃的なセッティングに仕上がります。

シャローに上がってきたイカを手返しよくヒットさせていくようなシチュエーションも得意です。

個人的には北海道で着目しているカタドスイカ(水深300m前後)、イカメタルの可能性を拡大するような、いわば“エクストリーム・イカメタル”は、この“55”セッティングで相手にしたい。

……以上、ここまでの可変機能を持ち込んだのは、イカ釣りは全くもって前情報がアテにならないことに加え、あからさまに道具で差が出るから。

昨日のアタリパターンが通用しない、海況が全く異なる、イカがいるのに釣れない、タックルバランスが外れていると、イカが当たっていても当たりが取れない……。

そのわずかな差が、残酷なくらい“数”として顕在化してくることもこの釣りの特性。

だからこそ、道具がアジャストした時の快感と言ったら……正直、楽しい思いも悔しい思いも味わい尽くしてます。

2本……3本とロッドを買い足し、船上に持ち込む人も少なくないですね。

しかし、釣期が短い、シーズン物の釣りに数タックルを用意するべきか否か、それで皆さんが悩む気持ちも凄くよくわかる。

この悩みを解決すべく創った1本です。

ロッドをモバイル化することがもはや当たり前のこの時代。

ただただコンパクトな“だけ”のロッドに価値を見出すか?

私がユーザーさんの立場なら首を縦には振らないと思うんですよ。

……と、長くはなりましたが、「UP-LIGHT55///65ULV」にはまだ、動画でも触れていないコダワリのポイントがあります。

見えないところにこそコダワリ詰め込んでます。

コレについては次回のレポートにまとめさせていただきますね

「後編」をお楽しみに!

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大学時代に小塚と出会い、初めての釣り旅がパプアニューギニアという刺激的すぎる原体験をしてしまう。卒業後は水産会社に勤務し、その後モンスターキスに入社。ほぼ全ての実務を統括し、公式セレクトショップ「Monster BASE」の店長を務める。ジャーキングやトゥイッチなど、ロッドワークを駆使したルアーフィッシングを好み、忍耐を必要とするエサ釣りは苦手。モノ、ガジェット系中毒で、旅で使えるアイテムの検証やリールのカスタムに余念なし。高身長(186cm)ゆえ、大型魚を釣っても写真では小さく見えてしまうのが悩み。