フィールドテスターの竹内です。
今回は前回レポートでも少し話をした、「Dear Monster MX‐7S」のブランクに「Dear Monster MX-9S」グリップのセッティングした、言わば “9SL”の話を、私のライフスタイルと共に紹介します。
北海道に本拠地を置く私はここ数年、冬は西表島で生活(夫婦で長期キャンプ)するというライフサイクルを実践しています。
現地で仕事(漁師の手伝いなど)をし、食料となる魚や山菜は自分で毒の有無を調べ食す。
天候が毎日激変するこの時期は、その日その場で釣りが可能な場所を見極めて釣りをする為、ゲーム性を重視した釣りや、ターゲット魚種を絞った釣りに重点を置いていません。
島の子ども達のような自由気ままなスタイルで西表島の豊かな自然を肌で感じ、有意義な時間を過ごせています。
釣りに関しては、基本は食べるための釣り。
とはいえ南太平洋で多く見られる、シガテラ毒を持つイッテンフエダイやダツ、カマス類の魚や小さいナンヨウチヌなどの幼魚はリリースし、1食で食べ切れる魚だけをキープするようにしています。
釣れない時限ってイッテンフエダイやタイワンダツばかり掛かってしまう状況もあり、悪天候が続く事で釣りが困難と見込まれる場合は、一度に2、3食分の魚を確保させて頂くこともありました。
また、島で釣れた魚はアラも出汁を取るなどして無駄なく全て使わせていただきました。
完全なる自給自足にこだわるような、ストイックな縛りはせず、悪天候や仕事で釣りに行けない場合は島周辺の山菜を採り、無人販売所などで野菜や果物を購入し、米や調味料などは地元のスーパーで賄いました。
主な釣り場所は島全体を取り囲むリーフと呼ばれる遠浅のサンゴ地帯や港、防波堤、河口付近の汽水域です。
そもそもなぜ今回、“9SL”(「MX‐7S」のブランクに「MX-9S」グリップのセッティング)を西表島に導入しようと思ったか?
昨年の秋冬、地元北海道でまず使ってみまして、ホッケやクチグロマス(サクラマス)を狙ったショアジギングでは使用する30~40gのメタルジグのキャスティングの際に、ロッドに負担をかけることなく振り切ることができ、塩梅が良かった事が挙げられます。
「MX‐7S」ブランク由来の絶妙な硬さのティップによる魚の乗り易さはそのままに、「MX-9S」のグリップと互換したことで、全長が伸びて更なる飛距離を獲得し、とても私好みの竿になりました。
海だけでなく、河川中流、下流域でのアメマス釣りでも使ってみたところ、12cm程度のフローティングミノーを使った場合でも「MX‐7S」使用時の操作性はそのまま。
一見少しゴツ目に感じる「MX-9S」のグリップも、大型アメマスが掛かり流れの強い流心から引き出す際には心強く、序盤から優位に勝負できる場面が何度かあったからです。
双方異なるモデルでそんな上手い事できる?と思うかもしれませんが、以前から、「こんな竿があったらな~」といつも心のどこかに思い描いていたイメージに限りなく近い。
双方の良い部分がバランスよく調和しており、“9SL”という”新しい1本”として今後使い込んでいける価値があると感じました。
そして地元北海道のみならず、遠浅のサンゴの海に囲まれ、幅の広い汽水河口エリアも多い西表島で守備範囲を広く活躍出来るイメージも湧いたのです。
簡単に言うと、「MX-7S」でもっとルアーの飛距離が欲しい、でも「MX-9S」までのパワーはいらない……その間を!というわがまま。
それを叶えてくれたのが、全モデルグリップ挿入部のブランク径が統一されているディアモンスターシリーズというわけで、これからの伸白を見出していければと南国へと向かいました。
タックルセッティングは、こんな感じです。
・リール 4000番台スピニング
・ライン PE1.2号 リーダー5号~6号
・ルアー スプーン12g~20g、プラグ7g~30g、エギ3.5号
ライト寄りのセッティングなのは、北海道に帰った際のショアからのサクラマス、アメマス釣りのメインロッドとしていく上で、竿の特性を体に叩き込むためです。
自分のモノにしやすいよう、まずは同じタックルセッティングにて土台作り。
場数踏み、竿の性能や限界値等の自分なりの分析をするため、あれもこれもとセッティングを変えないように考えました。
島全体の海岸では小笠原諸島海底火山の噴火に伴う多量の軽石接岸や、西表島周辺諸国から漂着した多量のプラスチック容器が海岸を覆い尽くしていました。
今回食料調達では、魚をキープする為に必要な容器は海岸に打ち上げられた漂流物を再利用しました。
十分な深さが有り、海岸をランガンするにも軽量でばっちり。
島を取り囲む遠浅のリーフ釣りでは、冬の西表島の昼の干潮は夏ほど潮が引かず、大潮時でさえリーフエッジに辿り着くのにも胸下まで浸かりながらの移動のため一苦労しました。
リーフエッジに限らずサンゴの密集地ではミーバイを初めフエダイ、ベラなどが魚団地のごとく群れています。
手のひらサイズの魚でもヒット直後、少し油断をしたものならば辺り一面のサンゴの根に入られてしまいキャッチに至らない場合が多々あります。
リールとラインはそのまま、ロッド以外は変えずに、“9SL”と「MX-7S」(すでに手に馴染みきっている)を状況に応じて使い分けて比較してみました。
“9SL”では「MX-9S」の8’6”のブランクレングスが据え置きになるため、その長さを活かし、のされる前に竿を90度に立て角度をきつくつけることで海面表層のファイトへとスムーズに持ち込みやすくなります。
再度根に入られた場合でも魚を引き出しやすく、ラインブレイクを回避しやすくなります。
ティップの絶妙なしなやかさとバットから手元までのパワーにより、本来根切れしてしまう魚も、数多くキャッチ出来たのではないかと思います。
水深、潮の速さに応じてスプーン、ジョイント、フローティングミノーを使い分けました。
またこの時期の西表島では強風が続き、向かい風で少しでもルアー飛距離を伸ばしたい場合でも“9SL”の8’6”レングスが味方をしてくれました。
ヒットしてもすぐにバレてしまう事が多いアオヤガラも運よくキャッチ。切身を塩でしめて島に自生している月桃の葉で包んだ蒸し焼きを美味しく頂きました。
「MX-7S」は、“9SL”より短い7’4”というレングスにより、手返し良くルアーを撃っていけるため、リーフはもちろん、港でのイカ釣りのような軽さや感度が欲しい釣りでは“9SL”と使い分けて楽しみました。
「MX-7S」と“9SL”は、ルアーを装着したままの状態でリールを外しグリップ交換ができます。
一々面倒な、ルアーを外し、ガイドからラインを抜いて、また通し直して、結んで……という作業を省くことができ、その場で素早くグリップ交換(=レングス調整)ができるため、ターゲットや場所の変化にも素早く対応できます。
バッグにはいつもどちらかのグリップを常備していました。写真を見ての通り、グリップの長さが倍近くあり使い味もガラッと変わります。(上「MX-9S」、下「MX-7S」)
「MX-7S」を使用した場合、“9SL”使用時と同等のルアーを使い釣りをしました。
妻はいつも通り使い慣れた愛用ロッドである「MSX-71」(「MX-7S」同ブランクのトルザイトチタンガイドカスタム)を使いリーフの立ちこみ釣りを楽しんでいました。
写真はアオノメハタやナガジューミーバイ。
細かな青い点がとても綺麗なアオノメハタ(妻の釣果)は、滞在中に自分も釣りたく、リーフに通うが釣れませんでした……。次回は必ず!
それでは次回西表島レポート「後編」に続く