2024年冬期海外遠征レポート②・北インドに“ゴールデン”と“チョコレート”を求めて(マハシール編・後編)

こんにちは、テスターの藤田です。

インド2ヶ月放浪レポート3部作、 南インドでのマハシール編・前編に続き、今回は旅の行程の中盤、北東部のマハシールを狙った釣行記をお届けします!

南部エリアでの釣りを終え、首都ニューデリーまでやって来ました。

この後の目的地である北東部エリアにエントリーするには入域許可書が必要で、その申請手続きをするため、デリーに滞在することとなったのですが……これが結構辛い日々となりました。

「バックパッカーの聖地」とされるパハールガンジの宿に来てみると、あたりの道路はゴミだらけ。

滞在中は雨が降ることが多くて、牛のウンコやらゴミやらチリやら全てがぬかるんで、ドブの中で生活してるような感じに……。

大気汚染の影響か、空気は白く霞み、ガスがかかったような状態です。

到着して数時間だけは面白かったのですが、長期滞在はちょっとシンドイですね~。

またしても食あたりで体調が悪かったこともあって、許可書の申請が通るまでは宿で情報収集しつつ、この後の予定をクリアにすることに時間を割くことにしました。

予定通り申請から数日後、担当オフィスから連絡がきましたが「ごめん、こっちの不備があってもうちょい時間かかります」とのこと……。

しかもオフィスが休みになる週末を挟んだこともあり、結局予定の倍以上の日数がかかって、1週間かけて入域許可書をゲットすることができました。

何もできない長期デリー滞在、この旅で一番しんどかったかも(笑)。

許可書を手に入れた翌日、国内線で一気に飛び、数年前から連絡を取り合っていた現地アングラーのN君と合流。

彼のスクーターに二人乗りして80キロ程走り、田舎町へ向かいます。

日が暮れると、寒い!

登りの坂道続きで、20キロ超える重量のバックパックが肩に食い込んで、キツイっす……。

そんなこんなでやっと到着したのが、素敵なバンブーハウス!

この地域は竹が多く自生していて、皆さんなんでも竹で作り、生活しています。

人も環境もデリーからのギャップが凄くて、嬉しくなります。

この地域、この時期は結構冷え込み最低気温は一桁台まで下がります。

僕が到着してから季節外れの大雨が2日間続いて、田舎の村で時間を潰すしかありませんでした。

村周辺は田んぼが多くて、景色は日本の田舎とさほど変わりません。

3日目にようやく天候が回復して、釣り場へ向かうこととなりました。

スクーターで一日かけて山を越えていき、日が暮れた頃に目的の川に到着しました。

明日から10日間の釣りキャンプ生活が始まります。

町近くの川岸で一夜を明かして、翌朝下流へ移動し、キャンプ地を設営しました。

今回の狙いは、皆さんご存じ“ゴールデン”マハシールと、個人的にずっと釣りたかった“チョコレート”マハシールの大型2種。

最大ではゴールデンが30キロ、チョコレートは20キロクラスといったところでしょう。

(下、自分が複写した現地人の釣果です)

N君いわく、基本オフシーズンである冬のこの時期でも、この川ではマハシールたちが捕食を行っているとのこと。

確かに、夜は寒かったのですが、日が昇ると日差しがかなり強く感じられて暑くなってきました。

汗だくになりながら荷物を運びこんでキャンプ地の河原へエントリー。

目の前、この激流にマハシールが泳いでいると思うとドキドキが止まりません。

早速タックルをセットしていきます。

当初はスピニングタックルを考えていて、“MX-9SL”(「MX-9S」グリップに「MX-7S」ブランクを互換したもの)と、市販状態の「MX-9S」の2セット、合わせるリールは4000番にPE2.5号と3号を150m巻いてきたのですが……川のシチュエーションを見て、「あぁ、これじゃ無理だな」と悟りました。

大岩がゴロゴロ転がる激流で、20キロクラスのゴールデンマハシールが掛かったとなると……。

南部のほぼ止水に生息するブルーフィンも相当強かったし、きっとゴールデンもチョコレートも自分の予想以上に力強いはずです。

N君のタックルは8フィートクラスの強めのスピニングロッドに、シマノ6000番。

50lbクラスのPEに、同クラスのナイロンリーダーを1ヒロ程度といった感じ。

「20キロオーバーが流れに乗ると100ⅿ以上走ることもある。追いかけながらのファイトになるが、ラインキャパは200mないと不安だよ」とも言われ、その通りだと思ったため、タックルセッティングを改めることにしました。

マハシールの餌(ブッコミ)釣り用のセッティングをルアーにも流用することとして、選んだロッドは「MX-8+」

カルカッタコンクエスト400にPE5号を225ⅿ巻き、リーダーは60lbでリールに巻きこまない程度入れました。

もうワンランク落とせたらベストセッティングだと思いましたが(例「MX‐75」、カルカッタコンクエスト300、PE4号。使用ルアーの幅が広がる)、旅先でのアレンジなのでこれが現状最適解。

タックル的に使えるルアーが限られて、スプーン30g&40gとラパラJ13のみ!

キャスティングではスプーン、下流まで流し込んでダウンで引いてくる釣りではJ13と使い分けました。

ルアーセレクトで迷う必要がなくなり、これもプラスに働いたように思います。

キャンプ地前からスタートして、釣り下りながら流れの中にスプーンを通していきますが無反応。

どのポイントも条件は素晴らしく、いつ来てもおかしくないといった感じなのですが。

強烈な日差しにやられたのか、鼻血を出しながらも超集中してランガンしていきますが、うんともすんとも言わず、あっという間に夕方を迎えました。

引き返してキャンプ地に戻り、N君の提案で今度は上流へ釣り上がっていくことに。

急流地帯でところどころ大岩が顔を覗かせる、この辺りもいかにもなポイントです。

熱中症気味(?)で頭痛が酷く、岩場をよろよろ進み、先行して打っていくN君を追いかけます。

ひと通りN君がルアーを通した後、「ここはチョコレートマハシールのポイントだよ。鶏の腸を餌にしてやってみよう」と提案されました(現地式ブッコミ釣りで、鶏の腸はマハシール狙いの特効餌とされています)。

ですが頭痛(高山病?)で具合が悪く、餌の匂いでさらにヤられてしまいそうだったため(笑)、「今日はルアーに集中するよ!」と言って、またスプーンを投げ始めました。

それから数投目。

先ほどN君がルアーをロストしたあたり、大岩の上流側にスプーンを流し込んで、ダウンに入った瞬間「ドンッ!」と衝撃が!

アワセを入れると、流れの中で金色の尾鰭が翻って一瞬見えました。

最初は力強く上流へ走り、ドラグを調整して対応します。

止まった所で、流れの中で悠々とステイするゴールデンマハシール……。

姿も一瞬見えたし、ファイトからも、最初の一匹としては相当良いサイズであることは明確でした。

足元まで寄せてから、ドッタンバッタンと暴れる頭を水面上に持ち上げて空気を吸わせ、体力を奪いにかかりますがなかなかしぶとい。

魚が落ち着いたところでN君が取り急ぎフィッシュグリップでホールドしてくれ、シリコンストリンガーでエラ通しして確保!!(コイ系はフィッシュグリップで繋ぐと穴が広がり痛々しいため)

「うわぁ、綺麗やなぁ……」

思わず声が出てしまうほど、美しい魚体が目の前に。

やった!!

デカい、1mちょいくらいはありそう。

撮影準備をしている間にN君が計測していて(彼らはウエイトで魚のサイズを語ります)、11キロとのことでした。

このポイントではゴールデンマハシールは出たことがないらしく、「ラッキーだよ!初日、しかも君のファーストキャッチがこのサイズ!」とN君と喜びをシェアしました。

20キロを余裕で超えてくる魚ですが、もう人生でゴールデンマハシールは釣らなくて良いなぁと思わせてくれる、僕にとって最高の出会いとなりました。

本当に嬉しい一匹だった!!

さて、これが初日の出来事。

「まだまだ釣れるんだろう!」と、これを読んでいる皆さんは思うかもしれません。

僕も期待はしましたが、初日一日中釣りをしてみた上で楽観視はしていませんでした。

たぶん、大きい魚を引き当てるのは相当難しいんじゃないかと……。

釣り人向けの保護区や釣り宿があるような地域でもなく、「釣れたら全部キープ」系のローカル釣り人も多く入っているようで、川には糸クズや釣り人の痕跡が多数ありました。

そして、この予想は現実に。

結果を先に言ってしまうと、その後ついにゴールデンマハシールのバイトは2度となく、全日程を終える事になるのでした……笑。

本当にラッキーな、「ファースト&ラストキャッチ」の一匹となりました。

この先、またさらに大きなゴールデンマハシールを釣る機会はあるかもしれませんが、僕の中で、この一匹を超える魚はいないでしょう。

この川でゴールデンマハシールを狙って数日過ごした後(餌釣りで手のひらサイズのチョコレートマハシールを一匹だけ追加しました)、N君も初訪問となる水系へ開拓行。

200キロほど走り、山間部の細い渓流へ入釣したりしました。

行く先々で現地の人たちに熱烈にもてなされるので(皆さん元々超親切&N君の人柄良すぎるのもあり)、正直釣りは満足にできませでした(笑)。

けれど出会いがたくさんあって、各地の猛者との交流もでき、スクーター二人乗りで数百キロ走り回る日々は凄く楽しいものでした。

ある渓流では小さなマハシールが多く生息していることが分かって、僕はライトタックルを持っていなかったので釣れなかったけれど、“コパー”マハシールと呼ばれるタイプ(現地の人たちいわく、チョコレートとは別種とのこと)を見ることができました。

「この時期このエリアはオフシーズンであることが分かった。けどポテンシャルは相当高い。モンスーンシーズン(増水する夏)は大型マハシールの天国だろう!」と嬉しそうなN君。

ここ10年間で各河川の開拓を進めたそうで、ずっとこんなトライ&エラーを繰り返してきて、ストイックに進み続ける彼は間違いなくホンモノでした。

「過程」の一部を共有して、この目で見て体験することができて、釣果はなくとも有意義な時間でした。

……さて、そんなドタバタの開拓行で4日間移動を続けましたが、これまでの僕の釣果は初日のゴールデンマハシールと手のひらサイズのチョコレートマハシールの計2匹のみ。

あっという間に旅の終わりが近づいてきました。

残り3日となったところで、再び山を越えて大移動。

初日にゴールデンマハシールを釣った川に戻ってきました。

今度は前回より20キロ程上流の、川と川がぶつかる合流点にエントリー。

見るからに良いポイントです。

残りの日程ではブッコミ釣りでチョコレートマハシールの大型を狙っていきます。

現地式では河原の石をオモリとして使いますが、「流れの中で仕掛けを安定させた方が釣れるだろう」と僕はわざわざ日本から持ち込んできた六角オモリを使うことにしました。

ですが、比重の軽い石オモリを使う事にはちゃんと理由がありました。

僕には反応はありませんが、N君は次々とアタリを取って良型のチョコレートマハシールをヒットさせていきます。

見ていると、石を流れに乗せつつ常にラインコントロールして、渦巻く合流点を上手く通過させて、100mほど下流のピンポイントまで狙って流し込んでいます。

これには目から鱗でした。

仕掛けの見た目に反して繊細な釣りです。

「餌の腸の付け方もポイントだよ。ハリスまでたくし上げて通し刺しして、ハリスごと固結びして、流れの中でズレてこないように固定するんだ」とN君。

な、なるほど……。

ただ、ハリスごと固結びしてしまう事には抵抗があったのと、100m激流に揉まれながら仕掛けを流し込むことでハリス絡みが多発するため、自分流に仕掛けをアレンジしました。

ワイヤーで天秤を作り、ハリス絡み防止に。

ハリスはPE20号、餌の腸を通してハリスごと固結びしたところで、ブレイクしない強度を確保しました。

タックルはゴールデンマハシールを釣った時のまま「MX-8+」にコンクエスト400、PE5号にリーダーは60lb。

実はハリスを40lbのナイロンラインで組んでいたところ、大型のチョコレートマハシールがヒットしたのですが……ハリス切れをやってしまいました。

想像以上のパワーとスピード感で、N君いわく10キロは超えていただろうとのこと。

この出来事があって、仕掛けを組み直して、精度を上げるために天秤も導入したのでした。

朝マズメが大きなチャンスであることが分かっていたため、前日夜に餌のセットまで済ませて、臭いを消さない為に餌の腸が詰め込まれているビニール袋にハリスごと漬け込んでおきました(PE素材なので、ウンコ汁やら匂いやらを吸収するだろうと笑)。

翌日早朝。

皆がまだ寝ている中一人で川辺に立ちました。

なんとか上手いこと仕掛けをコントロールして、100m下流のピンに流し込み成功。

「仕掛け絡まってないかな……」と不安になりながらも、置き竿にして穂先に鈴を着け、少し離れた所で顔を洗っていると……。

「チリン、チリン、チリチリ、、ジャーーーッッ!」

来たーー!!

走って駆け付け、竿を手に取ります。

前回は無理に止めようとしてスプールを抑えてハリスを切られてしまったため、走るだけ走らせて対処します。

すると、意外とすぐに止まって、ゆるゆると上流(こちら側)へ向かって泳いできました。

ファーストランの勢い的には「前回ほど大きくないな」と思いましたが、渦巻く流れが複雑で、その中で魚が泳ぐため、サイズ感がよくわかりません。

「もしかしてデカい?」

ドキドキしながらゆっくり寄せては走られを繰り返して、ついに姿を見せたのは……あぁ、全然デカくはない(笑)

でも、良い魚だ!!

N君が起きてきて、「オーウ、グッドサイズ。5、6キロってところだね」と祝福してくれました。

因みに、彼の自己記録は16キロ!

このサイズでこの引きなんだったら、16キロとなったら相当なものでしょう……。

ともかく、昨日のハリスブレイクから、試行錯誤からの一匹。

良い流れで手にしたサイズ以上に嬉しい魚となりました。

最終日は初日にゴールデンマハシールをキャッチした激流エリアの対岸へエントリーしましたが、あまりにも激流すぎてスプーンでは全く対処できず、完全にノーバイトノーフィッシュで釣りを終えました。

雨に降られながら極寒の峠越えをして、最初の村まで帰還。

結局、この地域には合計17日間も滞在していて、手にした魚はゴールデンマハシール1匹、チョコレートマハシール2匹の計3匹のみ(笑)でしたが、一匹一匹との出会い方が素晴らしく、僕らにとって価値のある魚達でした。

なにより、魅力ある人たちとの出会いがたくさんあったことが嬉しい。

お世話になったN君たちが、雨の中片道80キロをわざわざ空港まで送ってくれてここでお別れ。

彼らがいたから、本当に良い思い出になりました。

長かったインド旅は、終盤へ。

あともうひと地域、

いざ、次の目的地へ!

これにて、2024年のインド序盤&中盤、マハシール編(前編&後編)は完結です。

今回未達成の“南北のレッドフィン”2種を追って、インドのマハシール旅はまだ続く……。

再開したい人たちがたくさんいるし、近いうちに、また帰ってきたいと思います。

レポート3部作は終盤、グーンシュ編に続きます!

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幼少期から魚類に興味を持ち、6才で釣りを始める。バス釣りに熱中していた中学時代に小塚と武石が開設していたホームページと出会い、“怪魚”の世界に強い憧れを抱く。大学進学を機に北海道に移住、稚内から与那国島まで、アジアからアフリカまで、国内外を釣り歩いた。サクラマスの研究で大学院を修了、その後も北海道に残り、トラウトやロックフィッシュなど北の大地の釣りを楽しみながら、世界への旅を軸に据えた生活を送っている。