元祖“怪魚ロッド”の第2章。「MX-55」「MX-65」「MX-75」。“Xの2文字系”が満を辞して。


2023年秋、Dear Monster うち3機種について、ビッグマイナーチェンジを行います

マイナーチェンジ以上、フルモデルチェンジ以下。

“ビッグマイナーチェンジ”を行うのは、「V」シリーズ、「MV-55」「MV-65」「MV-75」3本です。

レングスやパワー感などコンセプトは踏襲しつつも、時代の変化に対応して大胆に進化、それぞれ「MX-55」「MX-65」「MX-75」として性能的にアップデートいたします。


以下3観点で大きく進化します。

1、グリップ構造(分割構造搭載)

2、ガイドセッティング(KWガイド→LRVガイド)

3、ブランクス再設計

順番に見ていきましょう。


1、グリップ構造(分割構造搭載)

MX-55」「MX-65」「MX-75では新たに、文字通り「X」シリーズとして、その代名詞でもある分割式グリップを採用します

「X」が暗に意図する掛け算、これまで以上の拡張性を獲得することになりました。

並べて比較してみましょう、左が「MV-55」、右がビッグマイナーチェンジを経た「MX-55」です。


これまで、“あえて”非分割式のグリップを採用していた「V」シリーズ。

「V」シリーズが世に出た頃、10年前はモバイルロッドそのものに「折れるのでは?」という固定観念が支配的な時代でした。

グリップが分割する「X」シリーズにはより顕著で、革新性を評価する声の一方、「キャスト時にズレないか気になる」といった新しいモノ・価値観への懐疑心は根強かった

ある意味、「V」の非分割グリップは、そんな時代に緩衝材的な役割を果たしてきたわけです。

左が「MV-65」、右がビッグマイナーチェンジを経た「MX-65」です。


発売からやがて10年の歳月が流れ、グリップ分割式構造と、それが提案する「拡張性」というモバイルロッドだからこその価値観は、Dear Monster を Dear Monster たらしめる構造・価値観として評価・周知が進みました。

近年では HUNTERS シリーズも発売され、往年のストレートグリップデザインが好きな方にも、本格的なモバイルロッドで選択肢を用意することができたと思います。

何よりこの10年で「『V』シリーズも、グリップ分割してくれたらいいのに!」というユーザー様の声が、否定的な意見を上回るようになり、今回のビッグマイナーチェンジに至ります。

左が「MV-75」、右がビッグマイナーチェンジを経た「MX-75」です。


今回のビッグマイナーチェンジで、これまで「V」だけができなかったリアグリップの互換(最も簡単で実用的かと)が可能になります

更なる拡張性を手にし、これにて“ゴーゴー”、“ロクゴー”、“ナナゴー”でも、 Dear Monster を Dear Monster たらしめる構造全てをお楽しみいただける様になりました


デザイン的には、セパレート部分に平織りカーボンが見えているのが特徴。

繋いだ状態で「V」シリーズとグリップレングスを比較すると、同じ様でいて、若干の変更があることに気づいていただけるでしょう。

下画像はそれぞれグリップだけ、上が「V」、下が新しい「X」です。


トリガー以下のコルク長と露出するブランク長、リアグリップのコルク長は、足掛け10年の継続テストの結果。

使用感(握り、重量バランス)や見た目の美しさなど、総合判断として、時代に合わせた最適化を行っています。

ただ機械的に分割しただけではありませんよ!

2、ガイドセッティング(KWガイド→LRVガイド)

「V」シリーズは2017年仕様からチタンフレーム・トルザイトリングガイドをメインに装着し続けてきましたが、ビッグマイナーチェンジを機に、6mm以上の糸巻きガイドに関しては、リングサイズをそのままに、KWガイドからLRVガイドに変更します。

年式や部位などで一部例外はありますが、上画像が長年「V」シリーズが搭載してきたKW ガイドです。

KWガイドの中でも、フレームはチタン、リングはトルザイトの最高位の仕様を搭載してきました。

それは「V」シリーズの開発当時(2014年頃)、感度・操作性を求めるロッドに搭載するガイドとして、これ以上の選択肢が無かったからです。

……時流れ、2020〜2022年のコロナ禍、すべてのガイドの入手が著しく難しい状況になりました。

中でもトルザイトリング搭載ガイドの入手は、困難を極めました。

Dear Monster は遠征釣行を強く視野に入れたロッドシリーズですから、ユーザーさんにとって、卒業旅行や転職のタイミングなど、“一生に1回きり”のタイミング、一期一会の旅のお力になりたいと思っています。

だからこそ、納期遅れは無視できないポイントなのです。

「V」シリーズを開発当時、SiCリングは厚く重い「J」タイプが主流でしたが、この10年でより薄く軽い「S」タイプへと切り替わってきました。

どういうことか噛み砕くと、トルザイトリングとSiCリングの性能差が小さくなったということです。

また、この10年でフレーム形状の選択肢も増えました。

以上のような時代の変化により、Dear Monsterとしてはメインガイドには初めて「チタンフレーム&SiCリング」の組み合わせを採用しフレーム形状は「KW」から「LRV」に変更します。


今一度、上写真が今回ビッグマイナーチェンジに伴い新たに搭載する「LRV」ガイドです。

「LRV」フレームは「KW」フレームと比較してもそれ自体が軽量で、より感度・操作性へ磨きをかけることができます。

なお、LRVガイドは最小ラインナップが6mmのため、下画像の「MX-55」に関しては、5.5mm以下のリング径のガイドは従来通りのKWガイドを、バットには6mmのRVガイド(LRVガイドの腰高版)を搭載しています。


……コロナ禍も過ぎ、トルザイトリングの供給も安定してきましたが、ハイエンド故に流通量自体が少ないパーツ、いつまた入手しづらい状況に戻らないとも限りません。

弊社の努力だけではコントロールできない部分ゆえに、「チタンフレーム&薄く進化したSiCリング(Sタイプ)」への仕様変更は、時代に即した対応かと思います。


余談になりますが、SiCガイドへの変更でパーツコストが下がったことを筆頭に、ビッグマイナーチェンジに伴い結果的にコストカットになりましたので、販売価格に還元いたします。

物価上昇が進行する昨今、釣り具に限らず、値上げや、値段据え置きであっても搭載パーツをグレードダウンする仕様変更を見かけます。

そんなご時世にあって、「ある時は時代のせいにして、またある時は時代に乗じて……そんな思考停止はしない。今回コストが下がったなら、還元するのが当たり前」というのが、開発者であり、モンキス代表の小塚のスタンスでした。



3、ブランクス再設計

最後に、ブランクスの話になります。

実際には最も大きな変更点ですが、写真には写らない部分で感覚の話になってしまうため、比較的サラっと書きます。

触れば、わかりますので。



変わらないことに価値を置いてきた「X」と、変わり続けることに価値を置いてきた「V」。

そんな思想で「V」シリーズはこの10年間で比較的多くマイナーチェンジ(リールシートやガイドの変更)を繰り返してきましたが、「V」とはいえロッドの心臓部分であるブランクスは一切の変更を施してきませんでした。

今回、「X」へのビッグマイナーチェンジに際しては、ブランクスからリファインを施しました。

理由はシンプルに「より良いブランクを作る事ができたから」です。

“ゴーゴー”、“ロクゴー”、“ナナゴー”、これまで信頼を積み重ねてきたブランクス。

極論、変えなくていい。

ただもっと良くなるか、どうか……やってみて、考えよう。

結果、アクション、パワーは従来の仕様を踏襲し、破断強度は同じ数値をクリアしつつも、キャスト時のブレを抑え軽快な使用感が際立つブランクスが完成しました。

わかる人にはわかる、ではなく、誰にでもわかるレベルでブラッシュアップでなければ、ブランクから変える意味がない。

中でも最も分かりやすいのが、中核機種の「MX-65」だと思います。

「間違いなく“ロクゴー”に他ならない……が、なぜこんなに軽い? そしてなぜ、こんなに飛ぶ?」

これが、新しいブランクを小塚から渡された時の、私の正直な印象でした。

既に「MV-65」を使用されているユーザー様であれば、投げてみるまでもない、手にするだけで進化がわかります

いざフィールドでは、キャストがコレまで以上に決まり、目に見えて飛距離が伸びる。

結果、疲労を抑え、投げ続けることができる。

数値で見ても明らか、同破断強度(耐久性)のままに約15gの軽量化。

MX-55」と「MX-75」に関しては、極端な減量とはなっていませんが、それでもグリップ構造が複雑化(分割可能)し、この点で加重もやむなしと考えていましたが……最終的にそれでも全体重量は軽くなっている。

ブランクス自体が(強度・使用感を保持したまま)軽量化、「MX-75」に関しては、よりライトアクションで「MX-75」と同じ強度試験をクリアしてしまったため、使用感をそろえた結果として、むしろ剛性は上がっています。

それでいて、軽くなった。

“イイ竿”になった。

Dear Monster が生まれ、早10年超。

エサ釣りはほぼやらない自分、ルアーフィッシング大好きのキャスティングバカ。

「V」シリーズは海外遠征から国内各地まで、各地で結果と記憶に残る出会いを残し続けてくれた。

ラインナップも充実した今、コロナ禍によって生まれた時間と、トルザイトガイドの供給不安定化を、ポジティブな契機と捉えました。

“ゴーゴー”、“ロクゴー”、“ナナゴー”、社内では“2文字系”と呼ばれるこの3本も、シンプルに生産終了、新シリーズで同等スペックを作るなど、さまざまな方向性が検討された結果……最終的には私の押し切りで、これまでの物語を継承する形で、新たなスタートを切ります。

私がこの“2文字系”(ブランクスペック)に頑なに拘ったもう一つの理由、それは、販売担当として、ユーザーさんからのリアクションに一番近いところにいることも無関係ではないと思います。

遠征は多くて年数回、時間的にもポイント的にも、操作性も求められる厳しい状況で釣りすることが多い……そんな、ユーザーさんの過半数をしめるアングラーにとって、感度・操作性に振った“2文字系”こそが魚に近いと、私は経験的に知っている。

「V」を知る人には“2文字系”の進化を、「X」で初めて知る人にはその完成度に、驚いていただきたい。

ホンモノだからこそ使い続けられ、そして残る。

元祖“怪魚ロッド”の第2章、皆さんの武器となり更なる実績を重ねてくれると確信しています!

長くなりましたので、テスター諸氏による“2文字系”の実績は、次のレポートでまとめさせていただければと。

オンラインストア限定で10月20日20時より受注開始、12月発送予定です。

大学時代に小塚と出会い、初めての釣り旅がパプアニューギニアという刺激的すぎる原体験をしてしまう。卒業後は水産会社に勤務し、その後モンスターキスに入社。ほぼ全ての実務を統括し、公式セレクトショップ「Monster BASE」の店長を務める。ジャーキングやトゥイッチなど、ロッドワークを駆使したルアーフィッシングを好み、忍耐を必要とするエサ釣りは苦手。モノ、ガジェット系中毒で、旅で使えるアイテムの検証やリールのカスタムに余念なし。高身長(186cm)ゆえ、大型魚を釣っても写真では小さく見えてしまうのが悩み。