スネークヘッド(チャンナ属)

(“怪魚“アジア代表、Channa micropeltes

About-対象魚

スネークヘッド(Channa属)はアジア地域の象徴するルアーターゲットだ

1mを超える大型種から10cm程度の美種まで現在30種を超え、そして毎年のように新種が記載され続けている。

ピーコックバス(Cichla属・全16種)のように全種コンプリートするのはハードルが高い(そして年々高くなる)が、赤に青に、渓流に湿地にと1種1種、長い目でコツコツ釣り重ねるような旅スタンスがお勧めだ。

結果、ガイドブックに載っていない奥地に入り込む旅となり、多種多様な、素顔の「アジア」に出会うことができるだろう。

一方で、アジア淡水域を象徴する在来プレデターとして、Micropeltes種(タイ呼称“シャドー”、マレー語圏呼称“トーマン”)に絞って追いかける旅は、“怪魚”旅の入口にして、最終到達点と筆者(小塚)は考えている

「釣りは、フナに始まりフナに終わる」という言葉があるが、「“怪魚”はスネークヘッドに始まり、スネークヘッドに終わる」……かもしれない。

(人生初シャドー、2004年@タイランド)

実際、筆者の最初の海外遠征のメインターゲットはスネークヘッド(シャドー@タイ)で、資金的に潤沢ではない学生時代でも挑戦することができた。

社会人になって時間的制約が生まれて以降、何だかんだ数年に1度は向き合う機会が続き、現在はタックル開発という意味でも重要度は増している。

将来的に、体力や気力が低下しアマゾンやアフリカが遠く感じるようになっても、現在以上に円安が進行し清貧に老いていこうとも、「アジアになら通い続けられる、スネークヘッドになら挑み続けられるかな?」と思う。

以後、注釈がない場合はタイ語圏で「シャドー」、マレー語圏で「トーマン」と呼ばれるMicropeltes種を軸に、世界のスネークヘッド釣りを紹介していこう(使用地域の広さを理由に、以下「トーマン」に呼称を統一する)。

(黒化したトーマン。2019年@インドネシア)

Who&Which -狙うべき“トーマン”とは?-

2025年現在、トーマン(英名ジャイアントスネークヘッド)のIGFA世界記録は13.61kg(30lb)で、サイズに関しては丁度1m前後だと思われる。

“1m10kg”という、筆者なりの“怪魚”のサイズ感のド真ん中だ。

面白いのはタイ記録も30lbジャスト……おそらく、30ポンドボガグリップ(申請に使える)を振り切って、それ以上は計測不可として、その重量で記載されている(笑)

なんともアジアらしいテキトーさが微笑ましいが、現地モンキスユーザーからは20kgオーバーの話も聞こえてくる。

おそらく、ちゃんと申請していないだけで、記録はまだまだ伸びる。

90cmを超えたあたりから、長さよりも太さが出てくる印象だ。

(マレーシアのモンキスユーザーさんからの釣果報告)

長さで1mを超えるという意味では、Argus種(ノーザンスネークヘッド、カムルチー)、Marulius種(コブラスネークヘッド)、この3種を“世界三大雷魚”とでも呼びたいが、その太さ、重さ(パワー)という意味では、トーマンが頭一つ抜けている。

英名「ジャイアントスネークヘッド」が示す通り、“最大・最強(最重量)のスネークヘッド”はトーマンで間違い無いだろう。

(世界三大雷魚)

長さで言えば、日本にも移入されているカムルチーにマイナス10cm程度のレングス感覚で、70cm 3kg前後が平均サイズ、80cm 5kg以上が目標サイズと考えて、諸々準備するのがいい。

なお、トーマンに顕著な特徴として、成長段階に応じて体色がガラリとかわる。

10cm程度までは、縁日の金魚のように全身真っ赤で、観賞魚としては「レッドスネークヘッド」という名前で流通するのも納得だ(生体移送は稚魚が色々とラクなため)。

全身真っ赤の頃は群れで行動し、親がオスメス2匹で保護する。

成長段階にもよるが、バレーボールサイズからマンホールサイズまで、真っ赤な稚魚の群れが呼吸のために水面に浮上する様子は、タイでは「ベビーボム」(稚魚爆弾)、マレーシアでは「魚華」と呼ばれている。

(観賞魚としての流通名が「レッドスネークヘッド」なのはこの点に由来する)

日本のカムルチー釣りではそんな“稚魚ボール”を狙うことはタブーとされているが、東南アジアでは稚魚ボールに目掛けてルアーを投じ、怒った親を釣るタクティクスは大型魚狙いでは一般的な釣法であり、大手を振っておススメまではしないが、“郷に入りては郷に従え”で一度体験してみる事も悪く無いと思われる。

というのも、繁殖期のトーマンは色鮮やかに発色しており、現地人含め先鋭的なアングラーは稚魚ボール狙いを遠慮するようになってきたとはいえど、黒白のコントラストがはっきりし、エメラルドグリーンやバイオレットに美しく発色した個体(60cm以上)は、少なからず産卵絡み。

仮に“ストラクチャー撃ち”や(ノーマルの)“呼吸撃ち”で釣れたとしても、少なからず繁殖行動にプレッシャーを与えている点では大差が無いだろう(釣りとはそういうものですよね?)。

日本のように明確な四季が無いトーマンの潜む低緯度・熱帯地域では、明確な産卵期はなく、程度の差はあれ、産卵は年中続いている印象。

日本でのカムルチーのように、季節で明確に避けることはできない。

その美しさの裏にある釣りの罪深さに思いを馳せ、釣り人としての原罪を再認識することも、トーマン釣りの魅力・経験の一つでは無いだろうか?

(非婚姻色は淡いバイオレット。これはこれで、美しい)

余談になるが、先述のように日本のカムルチーは産卵がらみで発色は大きく変わらないため、仮に産卵がらみの個体でもわからない。

また、日本明確な四季があり産卵期がほぼ固まっているので、厳密に“稚魚ボール”狙いを避けるなら、少なくとも4月から9月くらいまでは自主禁漁しなければならない……つまり日本で雷魚釣りはできないことになる。

他者や他国の文化を批判するのではなく、節度を持って楽しませてもらいましょう、って事で。

その後、稚魚は幼魚に成長する過程で、側線方向と並行に黄色い“縦”帯(魚類学的には頭と尾を上下にして縦横を言う)が入る体色に変化する。

ケースバイケースではあるが最大で30cm程度まで群れで生活し、黄色い幼魚“帯”も薄くなり黒いスジ模様だけが残った40cm前後の若魚となる頃には独立して単独行動に移行していく印象だ。

幼魚とはいえ20cm前後くらいからは投じたルアーを自分たちで集団リンチしてくるようになり、30cm前後に成長する頃には既に親が保護から離れていることも多い。

Where –釣り場

トーマンは、インド支那南部からボルネオ島にかけて、東南アジアの各地に生息する。

具体的な国名で言えばタイ、マレーシア、インドネシアで筆者自身が釣獲した。

概して、氷河期に海面が下がった際に繋がっていたエリア(旧スンダ河)、シャム湾方向に流入する河川に生息する種というイメージで大きく外れないだろう。

ナイフフィッシュなど、トーマン以外の淡水魚が海峡を隔て同様の魚類相で生息するのも、同様の理由とする説が濃厚だ。

有名な釣り場としては、過去にはタイ国カオレムダム、現在ではマレー半島南部。

(カオレムダム、2004年)

(マレーシア市街地近郊の湖にて)

ボルネオ島のセンタルン湖をはじめカプアス川水系からも釣果報告が多い。

(ボルネオ島にて)

過去にはインド南部にも生息がいわれたが、分類基準を形態においていた時代の名残であって、現在では独立種(Diprogramma種)とされている。

2019年に自身が釣査した印象では、確かに形態は酷似するが、斑点の多い体色や、ミャンマ山岳地域~バングラディッシュ湿地帯など地理的隔離で考えても、明確に別種として異議は無いだろう。

Diprogramma

その際、稚魚の色などは確認できなかったが、カタチと行動は概してリンクするため、釣魚としての性格は近いと思われる。

“第2のトーマン”として、今後諸々の発展性が楽しみだ。

(典型的なトーマンの生息地)

いざフィールドに立った際、トーマンの具体的な狙い所としては、、先述の“稚魚ボール”を除けば、冠水植物や浮草、倒木など、各種ストラクチャーにつく。

日本のカムルチーと違う点で言えば、オープンウォーターで立木などの水深のある縦ストラクチャーにもついている。

ゆえに後述するが、バズベイトやスピナーベイト、フロッグといったスナッグレス性能特化型のルアー以外にも、トレブルフックを装着したあらゆるルアーがケースバイケースで有効だ。

When –季節&時合い

釣りの時間帯は、基本的には日中。

カムルチー同様、朝まずめ水温が低い時間帯は活性が鈍いが、夕まずめはカムルチーと比較すれば結構出る印象で、夜、他魚を狙っていたぶっ込み釣りでかかったこともある。

(ケニール湖@マレーシアの夜釣りで。2008年)

釣季に関して、筆者の聞き集めた情報では、増水期が産卵期(稚魚の逃げ込める場所が増える)、すなわち稚魚ボール狙いとなり、渇水期がストラクチャー撃ちや呼吸撃ちの季節とされる(実際水位が下がったほうがポイントは絞りやすい)。

つまり周年狙える。

渇水期に稚魚ボールを見たこともあるし、増水期に冠水植物を撃っていって早々に独り立ちした、産卵に絡んでいない50cm前後の若魚(1年魚)の数釣りを楽しんだ事もある(確実な“産卵親狙い以外”はこれしかないと思う)。

現在、世界的な気候変動で雨季と乾季はその差が曖昧になったり、逆により極端化したり、時期がずれたり……筆者が釣り旅を始めてからのこの20年間でみても、同じ地域でも大きく様変わりした。

2025年現在、現地でも人気のゲームフィッシュゆえ情報は錯綜し、日本人が既存の(=ネットに出てくる)情報に振り回されても好釣果を得られることは稀。

1回目は情報収集、2回目の訪問でキメるくらいの頭で、逆に情報の無いエリアに飛び込んでみるのが、結果的にはメモリアルフィッシュに近いかもしれない。

What –タックル

トーマンに関していえば、①ワイヤーベイト・ストラクチャー撃ち用ベイト、②クランク・稚魚ボール撃ち用ベイト、③ロングキャスト・高速巻き用スピニング、④ワーム・ピンスポ撃ち用、この4タックルもあれば、トーマン釣りのほぼ全ての状況に対応できるだろう。

①は70アップ想定、②は80アップを狙って獲るために、③はサイズ問わずで、④は泣きの1匹を目指して。

アジア全域のトーマン釣りにおいて、①②でほぼ事足りる。

HT-6/7」なら①と②を1本だけで賄うこともできなくはない。

③は筆者が現地エキスパートが使っているのをみて次世代スタンダードに考えているセッティングで、④は保険。

①と②は兼用できるが、2本あると釣りの幅が広がる。

①と②で魚が出ない状況なら、日程のゆとりがある“旅”でなら大移動を勧めるが、行程が決められている“旅行”ではそうはいかない。

③は置かれた状況がタフな時、④は限られた日数の中で、なんとか魚を引き出すために。

<①ワイヤーベイト・ストラクチャー撃ち用>

MX-65」+標準ベイトリール(ハイギヤ~エクストラハイギヤ)+PE 3号&リーダー60ポンド以上~PE6号&リーダー100ポンド。

ワイヤーベイトはスピナベ、バズともに3/4オンス20g前後が基準で、上で1オンス半40g前後までを多用する。

現地アングラーは使用感優先でメインラインは3号前後(&小型ベイトリール)、人によっては飛距離のために2号を使ったりもするが、旅人には慣れない釣りで細糸では、バックラッシュの復旧や、高切れなどで無駄が多い。

旅人なら最低4号、基準を5号に、ケースバイケースで6号まで使うイメージだ(筆者は生涯1匹で会えるかで会えないかの大物で泣かないためにシチュエーション問わず6号基準で釣りをする)

アジアのトーマン釣りに関して、アマゾンのピーコックバス釣りと大きくと違う点は、ロングキャストを必要とされるケースが多いことだ。

基本ストラクチャーを丁寧に打ちつつも、ワイヤーベイトやクランクなどただ巻き系ルアーがメインとなり、ロッドワークを使う機会が少なく、また、突然の呼吸や稚魚ボールの出現などで、ロングキャストを必要となる。

(旧「MV-65」にて。現行モデルでは「MX-65」がど真ん中にくる)

故にロッドは6フィート半がスタンダード、アマゾン・ピーコックバスより長くなる。

アマゾンは“ゴーテン”、アジアは“ロクゴー”、と覚えておこう。

(マレーシア本国からは“ロクゴー”のオーダーがぶっちぎりで多い)

そこにバランスを取る形で、リール、ラインをセッティングすると良い。

ドラグ力はそこまでの強度を求めないで構わないと思う(筆者はこのクラスの釣りのリール購入に際して、ドラグ数値は全く気にしない)。

操作性とタックルバランス重視で、適宜指でスプールを押さえて対応する。

船縁での攻防など、ハンドルを巻いていない時は急なツッコミに備えクラッチを切っていることも多い。

……良い機会なので参考までに調べてみると、多用してきたリール/カルカッタコンクエスト200・バンタムはそれぞれ6kg・5kgとメーカーホームページにあった。

ショートディスタンスの釣りがメインなら、ロッドは「MX-6+」や「MX-6Pro」などもアリだろう。

<②クランク・稚魚ボール撃ち用>

MX-7」+中型ベイトリール(ハイギヤ以上)+PE4号&リーダー60ポンド以上~PE 6号&リーダー100ポンド以上。

ストラクチャー狙いと比較すれば比較的オープンスペースを狙い、ペラルアーと呼ばれるフローティング・ストレートバズ(上下画像)はもちろん、それで反応がない場合にはダイビングミノー(10~15cm)やクランク(~水深3m程度のタイプ)などの潜らせるプラグを使う機会も増える。

大型個体がヒットする可能性が高く、連続的にキャストするわけでも無いので、①のタックルと比較したとき操作性は劣るが安心感がある、やや重厚長大なセッティングを組んでおくといいだろう。

<③ロングキャスト・高速巻き用スピニング>

MX-7S」+中型スピニングリール(ハイギヤ)+PE2号&リーダー 50ポンド以上~PE3号&リーダー60ポンド。

突然の呼吸や稚魚ボール、ベイトタックルではわずかに届かない事も多く、力んでバックラッシュということも多い。

現地アングラーとてそれは同じようで、あるときライトなオフショアタックルを使用している先鋭アングラーにも出会った。

曰く「バズでもクランクでも使う。飛距離は言わずもがな、スピニングだからこその超高速巻きだけに反応する事もある」とのこと。

目視できる魚影、成魚であれ稚魚であれ呼吸は、必然的にオープンスペースが多い(障害物の中では見えない)。

次回、自分が本気でトーマンをやる日には、シマノのC5000番クラス以上のリールで新しいタクティクスを自分なりに詰めてみたいと思っている。

もちろん、突然のセバラオ(カスープ)のボイルなどにも良いだろう。①と②をメインに使っているタイミングでは15~20gのスプーンでも合わせておけば、出会える魚が増えそうだ。

<④ワーム・ピンスポ撃ち用>

MZ-7」+小~中型ベイトリール+フロロ20lbまたはPE2号&リーダー40ポンド以上

コロナ禍前の2020年1月、レア種の小型スネークヘッドを狙っていて、上記タックルを東南アジアのダム湖に持ち込んだことがある。

使うルアーはバックスライド系ワームのノーシンカー、これで日本のラージマウスバスの釣り同様に倒木などのカバーを撃っていく……狙い通りの釣果が得られたが、狙わずしてだったのは、若トーマンの猛襲。

いい時間にはバズも投げて大型トーマンも狙ったりしたが、結局この日の最大トーマンも、しょぼい倒木側でラインが走った魚だった。

現地では、5インチ前後のスイムベイト(オフセットフックの胴にオモリを鋳込んで安定させたものを使う)までは、そのコスパもあって定番化しており、そのような釣りにも対応する。

残念ながら年々ハイプレッシャー化するメジャーレイクでは、超高感度タックルを用いたスローな釣りが、現地ロコに対抗できる唯一の切り札になる(事もある)なぁ……と思っていたら、コロナ禍が明けた現在、この数年で現地ロコも同様のスローな釣りを始め、場所によっては定番化しているらしいので、「あれば勝ち」ではなく「無いと話にならない」セッティング・タクティクスかもしれない(繰り返すが、場所による)。

この釣りに使うロッドは、リール(ライン)を1ランク上げれば、タックル①の用途でサブロッドとしても機能する。

How –釣り方

基本的には、タックル①で一般的なバズベイトや、現地式ストレートバズ(ペラルアー)で撃ち流していけばいい、そして、普段の回収スピードレベル、高速巻きが基本(ゆっくりや、逆に限界スピードの超高速巻きが効く事もある)

ストレートバズからペラを取り外した“ジャンピングフロッグ”も、このタックルで扱う。

(某国内メーカーに依頼されハンドメしたジャンピングフロッグにて)

抵抗の小さな水受けカップでも頭を振るぐらいの高速巻きが基本だが、要所で首振りなどを交えてもいい。

水深があるリザーバーなどでは、クランクにも対応させる。

オープンスペースでも沈んだ木が多ければスピナベ、飛距離が出ないルアーだが、インドネシアの湿地帯のような細い水路を撃って進む近距離戦では他の追随を許さない。

稚魚ボールを見つけたら②のパワータックルにシフト。

ケースバイケースで③のタックル(ルアーはクランクやミノー)とローテーション、1時間でも2時間でも投げ続け、結果怒って反応するケースも体験済みだが、10分程度イジメてダメならそっとしておく余裕が欲しいところ。

そしてまた、タックル①で撃ち流していく……これを最終日前日まで繰り返し、ダメなら、最終日は1匹釣れるまで④を握るといいだろう。

text by Takuya Kozuka(情報は2025年1月現在。以後随時加筆訂正)

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