こうして「HYDRO」は始まった。SL ? TL ? ジャイアントベイトって釣れるの?初心者が作って試してみた(前編)

こんにちは!

関東在住テスターの禾です。

いきなりですが、皆さんは「ジャイアントベイト」という言葉に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

上写真は伊藤秀哉テスターの釣果(以下しゅうや君)ですが、

「一部の、(敬意を込めて)クレイジーな釣り人がやり込んでいる、”縛り”の釣り」

などという印象を持っている人も少なくないのでは、と思っています。

自分はシーバス釣りにおいて、数年前まではスタンダードサイズのルアー(~SL20㎝)を用いた釣りがメインでした。

ここで言う「SL」というのは、「Standard Length/標準体長」の略記になります。

SL(標準体長)は魚類学や水産業で重視される計測法で上アゴから尾ビレの付け根までの長さを表します。

釣り人的には、ビッグベイトのボディ長(テールを外した長さ)と考えていただければ。

一方「TL」というのは「Total Length/全長」の略記で、上アゴから尾ビレの先端までの長さです。

一般的に、ルアーサイズはTL(Total Length/全長)で表記します。

ただ、「ソフトテールを装着した製品が多い、いわゆる“ビッグベイト”の場合、テール形状によっては形状やボリューム感(重量)のイメージに誤解が生まれやすいのでは?」として、小塚さんが会話の中で多用する概念が“SL”です。

少なくとも私がテスターに就任・ビッグベイトの開発が始まる2023年段階で、以下、小塚さんのロジックはほぼ完成していました。

ルアー開発に際して、私が小塚さんに説明を受けた概念をまとめてみます。

有名どころを例に挙げると「ジョインテッドクロー178」の場合TLは178mm(公式)ですが、SL計測では155mm(実測)です。

「ジョインテッドクローマグナム230」の場合TLだと230mm(公式)で、SLでは195mm(実測)。

「ジョインテッドクロー303尺ONE」の場合TLでは303mm(公式)で、SLでは260mm(実測)。

上画像がTL、下画像がSLでの計測になります。

……この“SL”という概念で、ルアーの捉え方がどう変わるか?

参考までにジャイアントベイトの新定番であるクラッシュゴーストはSL25cm(実測)です。

テールは様々販売されており、最長でTL330mm……この情報だけでは私のような初心者には「尺ワンよりゴーストの方がひと回り大きなルアー」という印象を受けがちです。

一方でSLという概念で考えるなら「尺ワン(SL26cm)の方がゴースト(SL25cm)より若干大きい」と、ルアー選択・ローテーションに際して思考を整理することができますね。

「……なので、ルアーサイズの認識をボディ長(SL)で構築する方が、アングラーにとって有益ではないか?」

というのが小塚さんの考え。

「そんな新しい考え方を提案する意味でも、モンキスのビッグベイトは実用的かつンプルな“SL20”サイズからいこうと思ってる!」

そんな説明を受けて、開発は始まりました。

“SL20”(cm)といえば、先述したジョインテッドクローマグナムがSL195(mm)でレングス感で言えば同等、重量は4オンスクラス(テール・フック無しで110g前後)。

ビッグバンディットも、こちらはTL=SLで195mm 77g(テール・フック無し)

図らずも、東京湾シーバスにおける上記2つの定番ルアーが“SL20”なわけです。

現在テスト中のモンキスのビッグベイト『HYDRO』(ハイドロ)シリーズも、最初の製品化予定はSL20。

既に80個ほど3Dプリンタで印刷・トライアンドエラーを繰り返しててきましたが、重量は70g前後に着地しそうかな……。

つまり、SLという概念で捉えるなら、

「なるほど、レングス感はジョイクロマグナムやバンディットで、ただボリューム感(厚み)はバンディット寄り、薄いのね。であればアクションの性格は……」

といった具合に、さまざまな情報が整理され、イメージが膨らんできませんか?

全魚種対応を目指す「HYDRO」は、牙魚対策を第一にソフトテールを付けないこと前提で開発しており、然るべきタイミングでネーミングの由来等もまとめてお伝えできればと思います。

閑話休題。

話がずいぶん回り道しましたが、あらためて2024年秋シーズンのシーバス釣行の話に戻します。

普段「ビッグベイト(~SL20㎝)」を用いた釣りがメインである自分ですらも、それ以上のサイズのルアー、ジャイアントベイトに対しては「本当に釣れるの?」というような懐疑的なイメージを持っていました。

そんな「ジャイアントベイト初心者」の僕が、「ジャイアントベイトオンリー」のシーバス船に乗ってみた、というのが以下レポートの趣旨になります。

重ね重ね、タイトルにもある通り、僕はジャイアントベイト初心者です。

全くもって、やり込んでいる人間ではないので、タックルや所作については現場でしっかりとやり込んでいる、伊藤秀哉テスター(以下いつもの呼び方で「しゅうや君」)のレポートを参考にして頂ければと思います

2024年秋シーズン、まずは乗船一日目

季節は10月上旬、小塚さんにお誘い頂き、東京湾のPayback号に乗りました。

こちらの船長さんは、「ウチはジャイアント専門船!」と明言され、近年流行している「ヘッドショット」システムの生みの親ですので、もちろん全員「ジャイアントベイト」&「ヘッドショット」で挑みます。

説明不要かもしれませんが、「ヘッドショット」とは、特に大型ルアーにおいて、頭部にバイトが集中するため、頭側のアイに専用のアシストフックを搭載するシステムです。

非常に簡潔で美しいシステムですが、一匹釣れるまでは「本当にこれで掛かるの?」と疑ってしまうほどフックポイントが少ないシステムです。

この日はベイトが抜け気味でシーバスたちの活性は低く、日中は船中ノーバイトでした。

初心者なりに重たいジャイアントベイトを投げ続けますが、やはり反応が無いと「ルアーが大きすぎるんじゃないか」、「実はバイトしてるけどヘッドショットに掛かっていないのではないか」などと色々疑い始めてしまいます。

そんな中、夕マズメのタイミングで、しゅうや君が沈黙を破ってくれました!

サベージギアの「マグナムシャイングライド」での釣果、このルアーもSL20cmクラス、もちろんヘッドショットでした。

超かっこいいランカーの魚。

自己記録79cmの自分には羨ましすぎる魚です。

その直後、またしてもしゅうや君にヒット!

今度は尺ワン(SL26cm)での釣果でした。

なんと前の魚よりもさらにサイズアップ。

目の前でこのように見せられると、急にジャイアントベイト&ヘッドショットが釣れそうに見えてきます(笑)

終了間際、今度は小塚さんにヒット!

なんと更にフックポイントを減らし、ジャイアントベイト(メガバス/アイスライド265R)に1本針でキャッチされてました!

巨大なルアーの鼻先に、針がちょこんと1本ついているだけ。

これで掛かっちゃうのか……。

残念ながら、この日は自分はノーバイトに終わりました

ただし、この失敗から2つ、重要な点を学びました。

まず一つ目は、「ウェイト調整」

船長さんとしゅうや君曰く、この日は深めのレンジで食っていたとのこと。

持参していたビッグベイト用の軽いシンカーでは、ジャイアントベイトの沈み具合を大幅に調整することができず、この日は正しいレンジにルアーを持っていくことができませんでした(上級者は、ルアー操作で結構な深さまでレンジを入れたりできるみたいですが、初心者の僕にはそんなことはもちろんできません)

そして二つ目は、「止めること」

同船していた経験者の方々の「しっかり止めて、食わせの間を作るべき」というアドバイスを生かせずに、この日僕はルアーを連続でジャークしてしまっていました。

シーバスがしっかりとルアーの前まで回り込んで頭から吸い込むまで、間を作らないといけないということを痛感しました。

そんな苦い経験をした2024年秋シーズン最初のボート釣行でしたが、初心者なりに「ウェイト調整」「止めること」の重要性を学んだ釣行となりました。

時は進んで、11月下旬。

また小塚さんからお誘い頂き、同じ船に乗せてもらいました。

まずは一本獲って、成功体験を得たいと思い、船長さんがウェイトチューン・市販されているヘッドショット仕様のDEPS /スライドスイマー250HS(HS:ヘッドショットの意)で挑戦。

通常のジャイアントベイトは淡水仕様で浮力が高すぎたり、トレブルフック想定のウェイトセッティングゆえにヘッドショットをつけると動きが変わってしまったりと、ユーザー自身でチューニングする必要があります。

しかし、このHS(ヘッドショット)表記のスライドスイマーは最初からソルト仕様かつヘッドショット仕様にウェイト調整されているので、ノーチューンのままシーバスに使えます

僕のようなジャイアントベイト&ヘッドショット初心者には大変ありがたい製品です。

船長さんからのアドバイスに従い、しっかりとステイを入れながら誘っていきます。

コノシロの群れがざわつき始めた夕マズメ、連続ジャークからの長めのステイで、ガツーンと気持ち良いバイト

使用していた「MX-∞」(「MX-PROGRESS15R」を追加)は、ジャイアントベイトのアクションのキレを出すために振り切ったバリ硬仕様なので、ファイト時はシーバスには超オーバースペックです(笑)

強いタックル、太目なラインセッティングなので、躊躇せずとにかくゴリゴリ巻いて、一気にランディングまで持っていきます。

体感10秒ぐらいで決着がつきました(笑)

上がってきたのは87㎝のシーバスでした。

それまでは自己記録が79㎝と、ランカーすら釣ったことなかったので、一気にサイズアップしてしまいました。

「ビギナーズラック」とはこういうことですね。

そんなこんなで、乗船2日目で、無事ジャイアントベイトで一本魚を手にすることができました(スライドスイマー250がジャイアントベイトなのかについては、現在所説ありですが.……笑)

もちろん、東京湾という素晴らしいフィールドで、さらにジャイアントベイト特化の船(操船)という、初心者には贅沢すぎる環境で釣りをしていた訳ですが、それでもこの短時間で結果が出てしまうぐらいには、現実的なラインの実釣能力を持つ釣りなのではないでしょうか?

人間視点からは「大きすぎる」ように見えるジャイアントベイトは、意外にも魚にとっては「美味しい」サイズ感なのかもしれません。

一匹釣れて安心したので、これ以降は3Dプリントルアーの本領発揮、モンキスで作る「ハイドロ」の巨大化版と、オリジナル形状(テール有り)のジャイアントベイトに切り替えて楽しんでみました。

写真上からSL45cm、SL40cm、SL35cm。

「この形であること、の意味を検証してみよう」と大小作ってみたハイドロのサンプル。

先ほどのスライドスイマー250が、小さく見えてきます……おかしいなぁ笑

「ルアーサイズはどこまで大きくできるのか?」

検証も兼ねて、「後編」ではルアーをサイズアップして挑みます。

<関連ページ・レポート>

大学入学時に3Dプリンターを購入、以後3年間ルアー設計に明け暮れてきた頭脳派ルアークリエイター。都心への通学に際しモバイルロッドを導入、机上の空論ではなく、日々のアーバンフィッシングでトライ&エラーを繰り返す。2023年、講義中に閃いた構造アイディアを検証するため、ビッグベイトシーバスの世界へ。先入観に囚われない柔軟な発想と、自ら生み出したルアーの力で、初年度から高実績を重ねている。長期休暇は離島へのロックショア釣行など日本全国へ遠征、在学中に海外への挑戦も計画中。