ショア(岸)、LDリール、ジャイアントベイト…そして「Giant Syndrome」。“ジャイシン”で手にした文句ナシのGTの話。

テスター森園です。

ジャイアントベイトでのショアGT、釣捕しましたのでレポートします。

初回レポートでお伝えしましたが、2024年4月に鹿児島県の沖永良部島に移住しました。

南西諸島での釣りについては、出張や旅行の合間で幾度か経験しましたが、この3年間は、「離島で暮らしながらの釣り」。

一つの釣りにある程度の期間が掛けられるということで、『ショア(岸)から、GTを”ジャイアントベイト”で釣ること』を目標の一つに設定しました。

この時点で、”GT”と呼べるロウニンアジを釣った経験はゼロ。

良くも悪くも、舐めてました。

色とりどりのコーラルリーフに囲まれ、春には数百m先で鯨が潮を吹き、生命感に溢れる沖永良部島ですが、実は鹿児島の離島の中でも釣りに関する情報が特に少ない島。(屋久島、トカラ列島等に比べ)

GTに関しても「生息域からして居ることは居るはずだけどな…」くらいの曖昧な認識での釣り開始となりました。

4月。

移住初日から、「ジャイアントシンドローム」を手に島を周ります。

硬いバット部の有無と2種類のティップで、4種類の組み方が出来るジャイシンですが、エクステンションバット(progress42G)有り+硬ティップ(全長8フィートのハード&ロング仕様)で使用しました。

足場や地形を考慮した長さ、ジャイアントベイトの操作とキャスト時の振り抜きに必要な硬さを両立したセッティングです。

リールはラインキャパとドラグ性能に優れた大型レバードラグリール

ラインはPE12号を200m程+アシストライン60号を3m+自作ワイヤーリーダー50cmというシステムで挑みました。

これは鹿児島本土でのサメの大型ルアーフィッシングで使用していたもので、僕の経験上、外洋でのジャイアントベイトや大型ルアーの釣りに絶対的に必要な強度。

安易にヒット率だけを上げる為に、これより強度を落とすことは一切考えていませんでした。

好条件時にルアーをピッタリ嵌めれば、ルアーの大きさや糸の太さは無効になる……これまでの釣りで何度も経験してきました。

ルアーは35〜45センチ前後の使い慣れたジャイアントベイト達に加え、GT用のポッパーも使用して、先ずは兎に角GTからの反応を集めました。

最初の反応は移住3日後、大潮の最干潮でリーフエッジにエントリーした時でした。

向かい風の中で飛距離を出す為に使用したポッパーの回収間際、リーフの切れ目で10キロ程のGTがバイト!

が、フッキングせずに反転していきました。

その後数回、同じ個体がチェイスしましたが、結局ヒットすることはありませんでした。

「ちゃんと、居る」

「このラインシステムでも喰う」

これが分かれば十分。

このままポッパーの釣りで、なら多少時間は掛かっても出ると確信しました……が!

一度しかない人生初GT

“とりあえずの1匹”よりも、最高のカタチで迎えたい!

という思いが強くなり、当初の目標通り、その日からはジャイアントベイトをメインに切り替え、
珊瑚帯、漁港、砂浜、岩壁など、時間の許す限りエリアを巡りました。

とは言え幼い子供を連れて家族での離島移住。

「休日は全部釣り!」なんて愚行が許される状況ではないので、釣りはもっぱら平日の出勤前でした。(早朝、暗闇の中で誰も起こさず玄関を通過するにあたって、どこにもぶつからないモバイルロッドの”静音性”には非常に助けられました笑)

最初の反応こそ早かったものの、そこからはチェイス止まりの日々が続きました。

ほぼ無反応で2ヶ月が経ち、海面でトビウオが飛翔する6月、リーフエッジの釣りで遂に何かが水面を割りました!

ルアーは皮革ジャイアントベイトのデニイロ343。

それなりに引くけど多分GTじゃないな……ジャイシンと大型LDリールで容赦なく巻き取り、数十秒で足元に見えた魚体は、15キロ程のバラクーダ!

キバがデカくてかっこいい!と思ってたらその後ろに真っ黒な巨大GT

バラクーダの横っ面に掛かっているデニイロに鼻先まで接近して、凝視した後に去っていきました。

リーダーを掴んでバラクーダをリーフに引き上げ、同僚を呼んで撮影。

デカい魚にデカいルアー。

待ち望んだ瞬間でした。

うれしい。うれしいけど、なんか物凄いヤツ、居たな……。

その後も同じように短時間釣行を続けました。

7月には小塚さんと吉田さんも来島。

3日間、灼熱のリーフエッジでジャイアントベイトを投げ続けました。

とんでもない日差しと暑さの中、集中して投げ込みましたが、3日間とも見事にノーバイトでした。

言うまでもなく、ジャイアントベイトのショアGTは未知の釣りです。

狙うポイント、タックル、ルアーに指針はなく、全てが手探り。

試行錯誤する過程で最適解が出ていても、それがGTの回遊に当たらなければ当然結果は出ません。

この釣りは、「魚が居ない」なのか「居るけど食わない」なのかの判断が非常に難しく、「釣れない」という結果だけが虚しく積み重なります。

・・・そして季節はあっという間に台風シーズンの秋。

この時期から、明るい時間帯に大きく潮が引かず、昼間のリーフエッジの釣りは出来なくなります。

その日は岩礁帯の上からキャストしていました。

水深は最深部で2メーター程度のエリア、底にはサンゴ礁が広がっています。

シャローではありますが、回遊があれば活性の高い個体のはず。

数投目、青白いナニかがギラギラコウゲキをチェイスするのが見えました。

すかさず同じコースで投げ直しますが、特にチェイスはなくルアーは足元に戻ってきます。

見間違いだったのか……そう思ってルアーをピックアップしようとした刹那、手元に違和感が。

ピックアップの勢いそのまま、上がってきたのは4、5キロ程の”ロウニンアジ”。

まだまだ小型、ではありましたが、念願の「ジャイアントベイトショアGT」への光明が見えた日でした。

そんな成功イメージを掴んだ翌日、ついにその時が訪れます……。

翌日はポイントこそ異なるものの、前日同様にリーフのシャローエリアにエントリーしました。

少し風があり、水面にも波が広がっています。

選んだルアーはギラギラコウゲキ。

このサイズ帯のルアーの中では飛距離が出る為、シャローを広く探りたい時には重宝します。

しかしこの日も1時間程の短時間釣行。

序盤中盤と特に反応はなく、いつも通り、「無数の釣れない日」になりかけていた時でした。

約30m先、水面直下をグライドしているはずのルアーの辺りで大きな水柱。

水面の異様な光景に思考が停止してしまい、びっくりアワセすらもできませんでしたが、それが功を奏したのでしょう。

直後、手元に衝撃が走りました。

凄まじい勢いで12号のPEをLDリールから引き出し、ヒットポイントから沖へ向かった巨大魚。

しかしこちらも怯んでいるヒマはありません。

体勢を整え、魚に対して一直線になってしまったジャイアントシンドロームを必死に起こすと、魚もファーストランを止めました。

なんとか、いけるか……?

と思った途端に、魚は横に向かって走り出し、ラインの接水点が水面をバチバチと切りながら追従を始めました。

実はサメ釣りでも、この横方向の水圧だけで何度か糸を切られたことがありました。

なのでその位置は3mのSSアシストで水圧切れ対策済み。

徐々にドラグを締めていくと横ランの勢いも収まり、更にドラグを締めてじわじわと寄せに入ります。

途中リーダーが珊瑚に接触するイヤな感覚もありましたが、自作のワイヤーリーダーとSSアシスト、そしてジャイアントシンドロームを信じて巻き続けました。

10分弱のファイトでした。

近くの砂のエリアまで誘導して、リーダーを引き寄せ、遂に目前に横たわった巨体は120cm、29kg。

”ロウニンアジ”ではなく、”GT(ジャイアント・トレバリー)”と呼べる魚。

自身初GTの頬には、ジャイアントベイトが添えられて、文句無しの”ジャイアントベイト•ショア•GT”釣捕の瞬間となりました。

Dear Monster GIGAS MGX-∞∞」、サブネームは”Giant Syndrome”、直訳で(巨大症候群)。

言わずもがな、巨大魚を仕留める為の竿です。

さて、巨大魚の定義って何でしょうか。

10キロ?100キロ?1メーター?自分の身長を超えたら?……結論、答えは有りません。

その解釈は人それぞれで、曖昧で。

各個人の経験の中で相対的に「巨大」な魚、ということになります。

でもそれは単に大きさ(長さ重さ)だけでなく、「大きな意味を持つ魚」こそが巨大魚ではないかと思うのです。

初めて釣った魚、苦労の末に掴んだ釣果、探し求めていた魚種、大きなルアーで釣れた魚。

他人から見たら特別でなくとも、自分にとっては紛う事なく巨大魚。

そんな魚を求めて、僕はこの竿を振っています。

無駄に感じながらも信じて積み重ねた、その1日1日が、オセロが翻るように一気に価値を持つ、そんなGiantsyndrome”巨大症候群”な世界。

一緒に楽しんでみませんか?

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鹿児島在住。フィールドに恵まれた九州で生まれ育ち、10代で既にジャイアントベイトスタイルに到達。ルアーによる“シャークキャスティング”の先駆者となる。ジャイアントベイトおよびサメ釣りのあらゆる可能性を探究し、道無き未知を遊び心を持って爆進。バイトシーンをドローン撮影し、動画発信するなど「サメ釣りの楽しさを伝えたい」と常に新しい試みを続けている。YouTube「サメ釣り研究所」所長。