「Shinkirow KEARSHI 72/77MS」“怪魚ハンター”のルーツの景色。

モンスターキス代表の小塚です。

いよいよ3月、モンスターキスの新しいモバイルロッドシリーズ「Shinkirow」が発売となります!

開発したスピニングシリーズ全7機種ラインナップの中で、私自身がテスト・使い込みまで行ったバーサタイル系モデル2機種、うち長尺の「Shinkirow KEARSHI 72/77MSを紹介させていただきます。

バーサタイル・オブ・バーサタイル、新しい時代の汎用ロッド。

かといって、何にでも使える汎用=ボンヤリ中途半端、ではない。

周年、車に積んでおいて、日々ワクワクできるような、そんなロッドを目指して作りました。

近所の海を、仮に1本で釣り遊ぶとしたら

近所の海を、仮に1本で釣り遊ぶとしたら……日本の多くの地域で、ロッドのレングスやパワー感は、“エギングロッド”くらいに着地するのではないでしょうか?

具体的には、レングスは7ft代後半〜8ft程度で、一般的なミディアムライト(メバル竿)よりは強く、ミディアム(シーバス竿)よりは柔らかい、そんなロッドに。

私の住んでいる富山・北陸を例としても、周年遊んでくれるチヌやマゴチを狙う5〜20gのルアーにピッタリ。

春のホタルイカパターン(10g前後でのプラッギング)のデカメバルやギガアジには、むしろエギングロッドぐらいのパワーが必要、シーバスやチヌも混じる可能性が高い。

初夏までのタケノコメバルや、盛夏のキジハタにはライトテキサス(シンカー14g程度)で、楽しく遊べる。

秋のエギングは〜3.5号(20g前後)まで……春でも、4号は要らないかな?

……多少地域差はあるかと思いますが、対象魚を絞らす周年車に積んでおく1本となると、先述の“エギングロッド”あたりに着地するのではないかと思ったわけです。

こと、富山県が全国的に見ても多い(と思う)キジハタは、かといってサイズは30cm前後まで、本格的なロックフィッシュ専用ロッドでは強すぎて、エギングロッドを流用して楽しんでおられる方が多い印象です。

“怪魚ハンター”が海で釣るべきエモノとは?

「“怪魚ハンター”が、エギングロッド?」と思ったそこの貴方、ご指摘ごもっともです。

では、逆に聞かせていただきたい。

“怪魚ハンター”(淡水大物釣り師)が、海に新たなる挑戦を求めるなら、何を狙えば“らしい”のか?

マグロ?GT?カジキ?……少し違う気がしませんか?

僕は頭足類、イカとタコだと思います。

僕が世界を旅してきた理由、それは、その土地に行かなければ出会えない魚に会うため。

ならば、“海だからこそ”は、イカとタコ、頭足類の釣りにあると思うんですね。

イカとタコは淡水域には生息していない、“海だからこそ”のターゲット。

また、イカタコを狙う釣り方、エギ(餌木)は、北欧のスプーンとルーツを異にする、現代ルアーフィッシングのもう一方のルーツ。


日本発祥のグローバルスタンダード、世界に誇るべき疑似餌釣りの起源(の1つ)。

“海”、“日本”……「Shinkirow」で“怪魚ハンター”がバーサタイルロッドを作るなら、いわゆる“エギングロッド”こそ、チャレンジすべき1本なのではないか?

……かくかくしかじか、こうして「KEARSHI 72/77MS」は具現化しました。

あくまで“エギングロッド”を超えない

まずは、ロッドにも表記されている基本スペックから。

KEARSHI 72/77MS
Length : 7’2″-7’7″
Lure : Max 20g
Line : Max PE 1.5

時々湧き上がる「バットを強くしたい衝動」を抑え、〜3.5号エギ(20g前後)が最も気持ちよく振り切れるパワーで着地。

尖ったエギング専用ロッドのような、超先調子セッティングで目感度に配慮した竿ではなく、エギ以外のルアーも投げやすく、動かしやすい、オーソドックスなレギュラーファーストテーパーを採用。

標準的なエギングロッドと比較して比較してレングスは短め、ティップにもハリがあり、手感度はソコソコかなと思います。

地元・富山のホタルイカパターンや、バチ抜けなどライトなシーバス釣りまで想定し、超小径ではなく、PE1.5号にリーダー20ポンド程度までを軽快に扱えるガイドセッティング(ティップガイド4.5mm径)になっています。

ブランクスのパワー感はエギングに基準を求めましたが、グリップ周辺の作り込みに際して重視したのは、50cm×5ピースという、モバイルロッドとしての設計の美しさ。

「77ロングモード」は、ベーシックなチヌ“ポッパー”にちょうど良い、一定間隔で直線的にポコッ、ポコッと動かすような操作に向いていいます。

エクステンションシャフト(有効レングス5インチ)を抜いた「72ショートモード」は、個人的にはチヌ“ペンシル”にちょうどいい、ポッパーを使う場合でも首振りタイプを細かく、丁寧に動かして誘うような向いています。

つい最近、日本と同じ温帯域で、季節が逆転するオーストラリアで最終テスト(確認)を行ってきましたが、「72ショートモード」でポッパーを操作し、狙っていたキビレギス(Yellowfin witing)をキャッチ。

オーストラリアでは日本のチヌトップの要領で“キストップ”が楽しめます。

ご覧の通り、日本のキスをまんま大きくした外観で、口が小さくフッキングにコツが入りますが、チェイス確認からの“食わせ”の連続首振りアクションには「72ショートモード」の操作性が上手くハマってくれた印象です。

朝夕のマズメ時にはタックルそのまま、桟橋からエギング!

これまた日本のアオリイカにそっくり、ややエンペラが菱形のオーストラリアアオリイカが連発。

色々試してみましたが、標準仕様の「77ロングモード」がエギ(3.5号)にはオススメ

とはいえレングスが短くなればロッド自体のパワー感を下げることが可能ですから、3号以下のエギを使うシチュエーション、たとえばサイトフィッシングなどでは「72ショートモード」の方が扱いやすいケースも出てくるかなと思います。

“可変レングス”構造、転じて“可変パワー”構造という認識でお使いいただけると、更に釣りの幅が広がるかもしれません。

……そんな、「72ショートモード」「77ロングモード」の2レングスの他に、こんな使い方もできちゃうのが「KEARSHI 72/77MS」なんです!

ニッチをつなげる「77ジギングモード」

KEARSHI 72/77MS」は、エクステンションシャフトをグリップの間に挟み込んだ「77ジギングモードで、SLJを筆頭にバチコンやティップランなど、港湾部のボートフィッシングにも広く対応します。

「72ショートモード」「77ロングモード」「77ジギングモード」の3モードが、それぞれアップロックとダウンロックでリールシートを上下2仕様、1本で3×2=6通りの使い方ができます。

さてさてそんな「77ジギングモード」。

少なくとも僕の地元・富山湾西部沿岸域で遊ぶにはぴったり、“長くて柔らかいバーチカル・スピン”として、ボートフィッシングの新しい領域を拓き続けています。

イベントで触ってくださった方からは「このモデルは、ひとつテンヤに良さそう」なんて意見もいただいています。

水面が騒がしければ、「77ジギングモード」からエクステンションシャフトを引き算、「72ショートモード」でジグをキャスト……なんて芸当も意のまま。

ナブラが離れていけば「77ロングモード」へとエクステンションを組み込み直し、ロングキャスト……こんな感じで表層の青物(カンパチ等)をお土産に追加したことも何度かありました。

「77ジギングモード」で成立させたかった“バチコン・アマダイ”も達成!

重りとしてのジグは海底ベッタリ、数グラムのジグヘッドを“中ジンタ”にして食わせた、狙い通りの1匹!

その他“バチコン五目”では、マダイやキジハタ、ウッカリカサゴ、といった定番種が次々と。

水深60m前後でジグにじゃれつくアタリを感知、コウイカがシングルフックで獲れた事実は、長くて柔らかい「KEARSHI 72/77MS」の性格を物語ってくれるかなと思います。

“長くて柔らかい”の特性を生かかし、こんな釣りも。

PE0.8号を300m、C3000番程度の汎用スピニングリールに30〜40gのマイクロジグ(+適宜ジグヘッド)で深海釣りを楽しむ……“LT深海”の入り口がここにある。

深海へもバチコン……象徴的なところではアカムツでしょうか?

そして、「“ディープ・キス”、達成!」……これがやりたかった!(言いたかった!笑)

ニギスは口が柔らかいため、富山湾では沖で3m近い長竿を使う全国的にも珍しいサビキ釣り@150m水深が確立していますが、KEARSHI 72/77MS」のような竿の登場で、ルアーフィッシングのターゲットとしても可能性が広がっていけばなと思っています

他にも、自身初釣獲となるカイワリやタマガンゾウビラメ、ずっと狙っていたスミツキアカタチに、極め付けは味と匂い付ワームをつけてヌタウナギ等々……。

KEARSHI 72/77MS」によって、ある意味マンネリしていた地元の港湾ボート釣りがアップデート、自身初魚種に多く出会えた2023年シーズンになりました。

「77ジギングモード」で、一気に広がった可能性と、際立った個性。

定番の釣りは、過不足無く。

ニッチな釣りに、他に無い対応力。

バーサタイルロッド=ボンヤリした竿、は過去の話。

“この竿だからこそ”がちゃんとある、懐の深さと尖った個性が共存した、新しい時代のバーサタイルロッドが完成したかなと思います!

最後に。〜「KEARSHI」のネーミングに込めた想い〜

“海だからこそ”のイカ・タコの釣り、“ジャパンオリジナル”の餌木という釣り文化

“海”と“日本”、「Shinkirow」のコンセプトを“怪魚ハンター”的に解釈したこの1本。

富山県の雨晴海岸が全国的にも有名な「気嵐」(けあらし)にあやかり、「KAERSHI」(ケアラシ)と名付けさせてもらいました。

キンと冷えた空気が、比較的暖かい海面上の水蒸気を冷やすことで生み出される幻想的な霧。

富山湾沿岸では珍しいこの小磯場(雨晴海岸・女岩周辺)でヤドカリや巻貝を獲り、最寄りの漁港(現・雨晴マリーナ)キス釣りの餌に使っていた小学生の頃。

そんな小学4年生(10歳)の夏の日、まだまだ珍しかったルアー釣りで、当時憧れだったヨネズ(キジハタの地元名)が釣れるのを目撃したところから、僕のルアー釣りの歴史が始まった。

“怪魚ハンター”のルーツ・オブ・ルーツの景色、ターゲット。

昨年亡くなった母の生まれ故郷、雨晴……文字通りの“母なる海”と、個人的にはその象徴種。

Shinkirow」シリーズのイメージ写真にも、この雨晴海岸の景色を採用させてもらいました。

ジャングルから北極圏まで、遠く旅して立ち還る“原点”。

日常を刺激的に更新し、母なる海と豊かに対峙する“エギングロッド”……富山的には“ヨネズ(キジハタ)ロッド”かな?。

今だからこそ作れる1本「Shinkirow KEARSHI 72/77MS」、どうぞお楽しみに。



<関連ページ・レポート>

株式会社モンスターキス代表。怪魚(巨大淡水魚)を追いかけ、これまでに世界56か国を釣り歩く。物心つく前から魚(釣り)に熱中し、30年以上経った今日も継続中。北陸・富山に生まれ育ち、小学4年時にキジハタからルアー釣りを開始、中学・高校時代はバス釣りに熱中。大学進学以後は「今しかできない釣りを。遠くから行こう!どうせなら大物を狙おう!」と世界の辺境を目指した結果、いつしか“怪魚ハンター”と呼ばれ、それが仕事になり、旅は今も続いている。著書多数、近書に「怪魚大全」(扶桑社)。剣道3段。趣味はハンティング(鉄砲)