「そこに怪魚がいる……ハズだから」。自分にしか描けない釣旅、“沢ヤ”菅野の探検釣行@ラオス。

あけましておめでとうございます、テスターの菅野です!

新年一発目のレポートは海外ネタ。

「真に怪魚を求めるなら僕はアルパインスタイルで頂(怪魚)を踏みたい」。

コロナ禍前のラスト海外遠征レポートで僕は最後にそのように綴りました。

それは自分自身への呪縛でありインスタント化する怪魚と言うモノへのアンチテーゼでもあります。

情熱だけで完結した釣旅を、技術を持って超えてゆく、”釣旅のその先”の自分にしか描けない釣旅がしたかった。

その渇望を具現化すべく2022年11月、約2年半ぶりに僕の海外釣旅が解禁しました。

向かったのはラオス北部に位置するパック川。

水系的に僕が探す魚が居るかもしれないと言う僅かな望みに全てをかけ、無人地帯の60キロ区間を単独で開拓しました。

前々回のレポート同様に、現地人の同行も一切なしの完全単独行。

長年思いを馳せる魚がこのパック川にいる確証はない。

釣れるかわからないという心理的葛藤との戦いでもありました。

全ては書ききれないので一部抜粋してお伝えします。

製品の発信はもちろん大事ですが、勝手ながら僕が伝えたいのはそれだけじゃない。

それがモンキスの良さだと信じていますが……さて?笑

少々ダラダラと長くはなりますが、お付き合い下さい(文体も変わります)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

入渓2日目。

初日から単調な河原歩きが続いたが突然と広い空が狭くなり両壁が切り立つゴルジュ地形にガラリと変わった。(※ゴルジュとは両壁が狭くなる地形の意)

先の見えぬ深く長い大渓谷の中腹に足を踏み入ると思うと足が震えたのは正直なところ。

この探検行は数年前から温めてはいましたが、一番の壁は技術的な問題でした。

2022年春から高知県に移住をきっかけに、僕は某登山メーカーの販売スタッフとして働きながら山や沢登りの経験を積むことに注力しました。

特に店長が“沢ヤ”だったこともあり、この探検行に繋がる沢登りをイチから教わります。

(※沢登りとは沢筋を辿る登山のこと。限りなく水線を辿る、道はなく泳ぎ、滝を登ることもある。クライミング技術やロープワーク等を用いる為一般的な登山に比べ危険性は非常に高い。沢登り愛好家のことを“沢ヤ”と呼ぶ)

最初は技術を学ぼうとだけ思っていましたが、沢の面白さにどっぷりとハマってしまい今では釣り同等の存在になっています。

そして最低限の技術を携え僕はラオスの奥地にやって来ました。

口を開けた大渓谷を目の前に引き返すわけにはいかない。

釣れるかどうかではなく、この渓谷を突破したいと言う感情が足を進めた。

釣り人としてではなく、いち“沢ヤ”に憧れた自分が足を進めたのだと思う。

この先に未だ見ぬ魚が居ることを信じて。

意を決し足の着かない濁った川へ飛び込み、ヤツメウナギのように壁にしがみ付きながら進んだ。

休み休み数百m進むと激流に行手を阻まれる。

先に進むには対岸に泳ぎわたるしかない、流れを読み漂着点を見極める。

呼吸を整え激流に飛び込み死に物狂いで泳ぎきった。

足が着いた時の全身が震える生きてる感覚は言葉にできない中毒質なものがあります。

ひたすらこの繰り返しが一日中続き流石に心身ともに疲労困憊。

竿を出す余裕などは無かった。

入渓3日目

ビチョビチョで不快極まりないネオプレン(薄いウェットスーツ)を着るのが朝の大仕事。

長時間行動するために即席麺を啜り、余ったスープにアルファ米をブチ込む高カロリーな朝食が日課となった。

幕営地から数百m進むと前日の行程が可愛いく思える絶望的な光景が広がっていた。

谷はより険しくグネグネと折れ曲がった谷の隙間から激流が流れ込んでいる。

ここに至るまで人跡は少なからずあったがこの区間だけは一度も見ることはなかった。

泳ぎ、登攀、懸垂下降(ロープで降りる意)を交えながらジワジワと距離を稼ぐが、たった1キロ進むのに2時間も掛かっていた。

この渓谷の核心部は間違いなくここだろう

水線は流れが強く左右は高い壁に囲まれ簡単には進ませてくれない。

15キロのバックパックを背負っての登攀や泳ぎはなかなかにシビアなものだった。

特に海外となると怪我は死に近い。

進むと同時に自身の安全を確保し生を獲得する。

単独の難しさであり面白さでもある。

最後はいつ折れてもおかしくない、か細い木に命を預けて決死の懸垂下降で難所を突破した。

満身創痍、這いつくばりながら岩場を登りふと後ろを振り向くと絶景が広がっていた。

これが、僕が求めていた”釣旅のその先”の光景なのだろうか

竿を出すことすら許されず、魚は手にしていないが、今までにない充実感に包まれ僕はその景色を目に焼き付けた。

足には親指くらいのヒルがパンパンなっていて指で弾くと満足そうに転がり落ちた。

入渓4日目

相変わらず渓相は悪く険しい岩場を進む。

昨日の疲れもあり足元見ながら歩いていると湧水でできた水たまりがあった。

何気なしにみると青いヒレがキラリと光った!

「まさか!?」

ささっと「MX-0」を取り出し、ついに僕は全人未釣の片”鱗”を見た。

それは小さく、美しく、学術的には未だに名前のない小型のスネークヘッド(Channa.sp)だった。

技術的にも困難な難所を超え単独でこの魚に出会えたことに一人歓喜した。

インパクティブな魚だけが怪魚の全てではないことを、果たして分かってもらえるだろうか……その時、そう思った。

それからさらに3日間歩き続け、7日目にしてようやく文明のある場所へとたどり着き無事に人間の世界に戻ることができた。

他にも狙っていた魚はいたけども影すら見えず、出会うことは叶わなかったけれど、また一つ気になっていた開拓候補を潰すことができたので良しとしよう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分にしか描けない釣旅とは何か?を考え続けた2年半を経て、真に怪魚を求め真に単独を極めたこの探険行は、釣果以上にこの行動には意味があったのではないかと実感しています。

結果的に未知なる魚にも出会えるという理想的な結末を得ることができ、個人的には非常に満足度の高い釣旅となりました。

そしてこの探険行により、できることが増え、より構想が広がった……そんな旅でもあります。

この旅を更新していく、そんな旅をまた次回に構想中。

誰の為でもありませんが、次回もお楽しみに。

……おっと、このままだとただの自己満釣行記になってしまうので最後はテスターらしく。

この探険行では軽量化の為ハードケースは使わずディアモンの「メジャーシート50」(通称くるくるシート)のみでしたが、持ち込んだロッドの破損は無く、釣り以外での強度という面でも安心して使えるということを改めて実感しました。

以上、モンキス製品の耐久テストレポートでした!笑(無理矢理〆る)

<追伸>

“自分にしか描けない釣旅”の報告なので、他者が同様の釣行を試みた際の安全性、生命の保証は致しません。

参考までに、以下探検行に持参した道具になります。

■釣具

·モンスターキス/「Dear Monster MX-0

·モンスターキス /「HT-6×4S」「HT-6/7」「HT-7/8

■沢道具

·モンベル/サワートレッカー

·モンベル/ライトクリマプレン上下

·モンベル/LWドライシットハーネス

·モンベル/トランゴmoor(ビレイ機)

·ペツル/タイブロック

·9.5mmロープ20m

·カラビナ各種

■その他

·モンベル/ULドームシェルター

·モンベル/ダウンハガー#3

·モンベル/レインダンサー上下

·モンベル/アルパインパック50L

·グレイル(浄水器)

·Moraナイフ

·エアマット(メーカー不明)

■食料

·アルファ米10食

·棒ラーメン5本

·リゾッタ5食

·ペプチエイド

1999年茨城生まれ、青森育ち。小学5年生で釣りを覚え、コイやナマズを釣りながら“怪魚”への憧れを膨らませて成長。高校1年生の冬に「まだ誰もやったことがないことをしよう!」とタイへ単独釣行。以後、高校在学中の3年間で計4回、5か国を釣り歩く(資金はすべてアルバイト代)。一応は大学に進学したものの、ムベンガを釣るために半年で退学し、コロナ禍で足踏みを余儀なくされるまでに計7回8か国へ釣行した。海外釣行が難しい現在は、「HUNTERS」を手にシーバスをライフワークとして日本各地を飛び回っている。趣味はルアー作り。