2024年冬期海外遠征レポート③・ガンジス源流のヌシを求めて(グーンシュ編)

こんにちは、テスターの藤田です。

南部マハシール編北東部マハシール編に続きインドレポート第三部、今回は北部エリアにてグーンシュを狙った釣行記をお届けします!

北東部での滞在を終え、また首都デリーに戻ってきました。

ブルーフィン、ゴールデン、チョコレートと、それぞれ良い出会いがあり、今回のマハシール旅はこれにて一段落!

次の目標はグーンシュ。

コイの仲間も大好きですが、「怪魚」好きとして、インドに来たからには狙わねばなりません。

目的地は北部エリア。

ガンジス川水系の支流・源流域に近い、その筋では有名なラムガンガ川を目指します。

……ですが、2月末のこの時期、インド北部では寒い日が多くオフシーズンにあたると思われました。

旅も残すところ少なくなってきていて、グーンシュ狙いに割ける日数はうまくいって5、6日といったところ。

今回の条件で、いきあたりばったりの旅でいくには少々難しそうです。

「まぁダメ元で行ってみて、やれる限りをやってみよう。情報収集の旅になっても次に繋がるし」

といった気持ちで、デリーからの夜行バスに乗って目的の町へ移動しました。

早朝に到着し、町行く人たちに聞き込みをして、そのままバスを乗り継いでさらに田舎の町へ向かいます。

ラムガンガ川、見えた!

日本にそのままあってもおかしくない、澄んだ小さな渓流です。

ラムガンガ川のほとりにある軽食屋さんの前で降ろされたので、店のお兄さんに「釣りしにきたんだけど」と言うと、「知り合いにガイドがいるから紹介するよ」とのことで……。

やってきたのは、デカい男。

動作の遅さや風貌から40代後半くらいかな?と思っていたら、なんと自分と同い年(32才)でびっくり(笑)

一緒に撮ろうというので、自撮りツーショット。

「今はゴールデンマハシールオンリーだ。グーンシュはシーズンじゃない」

「俺はフライフィッシャーマンだ」

「おれは何でも知っている」

「アイノウ、エブリシング」とよく言うこの男。

風貌や言動から判断するに……いや、ここは個人ブログではないので、言及はしないでおきましょう(汗)。

「時期が悪いのは知っている。それは承知の上で、現地に行ってこの目で確かめて、やれるだけやってみたい」

とこちらの気持ちを伝えてみると、いくら払えるのかお金の話になりました。

時間がないし、今回はこのまま行ってみようか……。

話がまとまらない中、急に「近くに大きな淵があるから見に行くぞ」というので、バイクに二人乗りして川を見に行くと……巨大なワニが淵の底から浮いてきました。

北部エリアで印象的だったのが、強烈な日差し。

肌寒い気温の中でも、日向はかなり暑く感じられます(逆に日陰はものすごくヒンヤリしています)。

その日差しを求めて、日向ぼっこしに上がってきたようで……「きっと川底のグーンシュも、寒くて動けないんだろうな」と、陸に上がって気持ちよさそうに日光浴するワニを見て思いました。

ワニを横目に今後の釣りの話をまとめようと試みますが……。

「夜通しキャンプで釣りをするなら、特別なパーミッションが必要になる」ということで、それを取得するとなると、今の手持ち残金ではとても支払えないような金額がかかることが発覚しました。

ガイド氏から「釣りは昼間だけにして、夜は近くの町に滞在するのはどうだ?」と提案があったので、妥協して今回はそれでいくことに。

実釣時間は朝8時~日が暮れる夕方7時前まで。

日数は5日間。

オフシーズンのグーンシュに挑むにはナメているようなスケジュールだと思いましたが……今回のやれる限りを尽くそう。

翌朝、ガイド氏のバイクに二人乗りして、ラムガンガ川沿いの荒れた道を進んでいきます。

落石に注意しながら、グーンシュの有名ポイント「セカンドブリッジ」を通り越して、さらに数十キロ上流へ。

山が開けて現れた素朴な田舎町。

今回はこの町を拠点にして、ここから10キロ程上流にあるという淵で竿を出します。

ラムガンガ渓谷は想像していたような秘境感はあまりなく、意外と川沿いに小規模の町や村が点々とありました。

こんな、人の生活圏のすぐそばを流れる小さな渓流に、マンサイズのグーンシュが潜んでいるとは……なかなか想像しずらいことです。

町中の宿に荷物を置き、早速ポイントへ向かいました。

ガイド氏が事前に連絡をしていた現地青年M君が待っていてくれて、前日に投網で捕まえたというカラバスと呼ばれる魚を2匹受け取りました。

持ち込んだワイヤー仕掛けをセットして、餌はこんな感じ(下写真)に。

「ワイヤーで、シングルフック2本仕様」が確立されたスタイルであることを知っていたので、熱収縮チューブを使って出国前に仕上げてきたのでした。

ロッドは「MX-∞」を2本出し。

リールはAVETのLX & HXのMC RAPTORモデル。

メインラインはPE12号を150m巻いてきました。

リーダーは220lbを、と思いましたが、「それは太すぎる。グーンシュは糸を見ているんだ」と訳の分からない事を言うガイド氏……。

ひとつひとつ書き始めるときりがないので触れていませんが、ここまで衝突しそうになることも多かったわけで。

チームの雰囲気を悪くはしたくないので「まぁ、180lbでも切れることはないだろう……」と、180lbを10m入れました(後に、後悔することになります)。

(※釣りを終えてのグーンシュ、ラインシステム考。ラムガンガ川での減水期なら、石鯛PE20号100mにリーダー220lbを最低20m以上、入れられるだけ。増水期ならPE12号200mにリーダー220lbを20m。このくらいが適正値かと自分は思います)

さて、タックルを組み上げ仕掛けを淵に投入し、岩で竿に重しをかけて置き竿にしてあとは待機。

アタリが来るのを、ひたすら待つ、待つ、待つ……。

釣り場の背後は崖になっていて、上まで登ると淵を見下ろすことができます。

M君が言うにはたまに川底のグーンシュを目視できるとのことで、何度も崖上まで登って確認しましたが、今回は姿を見ることはできませんでした。

何の反応もないまま2日が過ぎました。

この2日間、天候は曇りや小雨。昼間でも手持ちの服を全て着こんでやり過ごすぐらいの寒さでした。

3日目、早朝はどんよりとした空模様でしたが徐々に雲が晴れていき、快晴となりました。

気温も一気に上がって強烈な日差しが降り注ぎます。

思わず竿から離れて日陰に逃げたくなりますが、きっとこれはチャンスでしょう。

先日見た淵のワニのように、グーンシュも動き出すかもしれない……。

「この気候はチャンスだぞ。強い日差しはグーンシュにとってグッドだ」

珍しくガイド氏と同意見です。

3日目も日が暮れるまで粘って何の反応もなく、迎えた4日目も快晴。

予報では明日は曇り雨の予報で、今日がラストチャンスになるかもしれません。

この日は昨日よりもさらに気温が上がり、シートを屋根替わりに日陰を作ってしのぐほどの暑さでした。

一昨日までインナーダウンやフリースをありったけ着こんで過ごしていた事が嘘のようです。

昼過ぎ、投入していたデッドベイトを、M君が捕ってきてくれた活きの良い30cm程のカラバスに付け替えました。

投入し直して夕方前。

「チリン」

穂先につけている鈴が一度だけ鳴りました。さっきカラバスを付け替えた方の竿です。

「カラバスが泳いでるんだな」とだけ思いましたが、続けて竿先に反応はありません。

が、それから数分もしないうちに、

「チリン、チリンッ、チリンッ」

3、4回連続して鈴が鳴った直後、ヌンッと大きく竿が入った!!

アベットのクリッカーが壊れているため気づきませんでしたが、走って竿まで駆け付けると、結構な勢いでラインが引き出され続けています。

「グーンシュなら、食ったらその場から動かないだろう」と予想していたので焦りました。

急いで重しの岩をどけて竿を手に取り、体勢を整えてから、竿に重みが乗り切って身体が持っていかれそうになる一歩手前で、フッキング!

ゴン、ゴン、ゴン、ゴンと4、5回ほど、太い針を深く食い込ませるイメージで追いアワセを入れました。

ズリズリズリ~……っと、リーダーが岩に掛かったままのファーストランとなり、なんとかPEは岩に触れることなく止まりました。

が、今度は全く動かない……。

ていうか、本当に来たぞ!!

後ろでガイド氏が色々言っていますが、グーンシュと自分の対決に集中します。

岩の下にでも入り込んでロックしてるのか?と思い、下手に力を掛け過ぎず相手が動くのを待ちますが、時たま「ヌンっ、ヌンっ」と頭を振っているのが伝わってくるのみで、大きな動きはありません。

「対岸から引っ張ろう」とガイド氏。

これは同意見でした。

アタリを待っている間、もし掛かった場合を考えていて、上流側の浅い瀬を渡って、対岸の浅い方から引っ張るのがベストだと想定していたのでした。

岩にラインが噛んでいるようなことはなく、ただグーンシュが川底に張り付いて動かないだけだと判断したため、リールをフリーにして対岸へ渡りました。

立ち込んで、PEラインが岩に触れないようにしてからゆっくりテンションをかけていくと、動いた!!

ゆっくり、ゆっくり、怒らせないように寄せて、遂に黒い影が水中から現れました。

ブレイクを乗り越えさせて、手前の浅瀬へ誘導して……。

できる限り刺激しないように静かに寄せて、そのまま浅瀬に座礁させたいのに、真後ろに立ち込んで色々しゃべりながら動画を撮影しているガイド氏。

僕らの存在を嫌がったグーンシュが暴走して、一気に元いた淵へ戻っていきます。

「水から出て、もう少し後ろにいてくれ!」

リーダーがさけるチーズのようにズタズタに傷んでいることが見えてしまい、気が気じゃありません。

その後も数回、浅瀬へ寄せてはラインを引き出されて淵へ戻りを繰り返し、何度目かに寄せた時、グーンシュがバランスを崩して横向きになり、白い腹を見せました。

ようやくグーンシュの動きを封じ、浅瀬に引き上げることができました。

グーンシュに触れる前に、ガイド氏が「何キロあると思う?」と聞いてきたので「40~50キロくらいか?」と言うと、「お前何言ってんだ。この魚は70キロクラスだぞ」と……。

魚の腹下にヒザを入れて、水中で抱いてみると、確かに巨大だな……。

やれる限りを尽くしてはいましたが、正直、今回の挑戦で釣れるとは思っていませんでした。

死ぬほど嬉しいはずなのに、何故かいつものような感情の爆発はなく、「俺より年上かもな」とか、それに伴う敬意とか、そんな気持ちがわいてきます。

自分の成し遂げたことながら、なんだか不思議な感覚でした。

写真もそこそこに、ロープを解いて逃がしてやることにしました。

蘇生の必要もなく、体を支えてゆっくり揺すってやると、一気に力強く住処の淵の底へ帰っていったのでした。

「ヌシ様、会いに来てくれて、ありがとう!!」

さっきまであれほど暑かったのに、夕方になると肌寒くなってきました。

入水したことでびしょ濡れ、ガタガタ震えながら焚火を起こして温まります。

「もうグーンシュは生涯狙わないよ。2人(ガイド氏、M君)とも、ありがとう。明日はオフにして3人で散策でもしよう。もちろんお金は変わらず払うよ」

明日の約束をしてM君と別れてから、宿へ戻る道中余韻に浸っていると、「今回のグーンシュでビジネスをするぞ!ケンゴ、お前はSNSで俺のガイドが素晴らしいってレビューを書くんだ。そして俺のポストもシェアしてくれ」と一人で話続けるガイド氏。

これだけはハッキリ言ってしまおう。

悪気がないのはわかる。

でも、この時だけは、すげーウザかった!(笑)

宿に帰ってからもまた「俺のことを素晴らしいって書いてくれ」と言うので、僕の精神論(あのグーンシュへの敬意があるから、あんたのビジネス?の為だけに嘘は言えないという事)を語ってみました。

するとすんなり「理解した。フェイスブックには俺が投稿するから写真を送ってくれ」と言います。

「俺は英語のスペルとかわからないから、お前が文章を考えてくれ」と言われて、それぐらいはやってあげて、彼のSNSに投稿しました。

悪い奴じゃない、どっちかと言えばいい奴なんだけど、最高にウザい言動を、予想通りのタイミングでかましてくるタイプなんだよな……笑。

翌日は一日村を散策して、飯食べて、お別れしました。

最後に「俺のガイドは、どうだった?(良かっただろう?のニュアンスで)」と聞かれてちょっとイラっとしたけど(笑)、色々一緒に考えてくれて世話になったのは事実。

次はマハシールを狙いに一緒に遠征しようと約束しました。

ありがとう、また会おう!

現地協力者の青年、M君にもあらためてお礼を言ってお別れ。

M君は、素直で真面目なナイスガイでした。

あのタイミングで活きのいい餌をとってきてくれたから、グーンシュが釣れたようなものです。

彼との写真がなかったから、2人で入水した写真をかわりに。

もうこの地を訪れることはないかもしれません。

少なくとも、この先グーンシュを釣ることはないでしょう。

そんな「生涯で一匹」級の、究極の魚達に出会うことができた今回のインド旅。

上出来すぎる結果だけじゃなく、そこに至るまでに素敵な人との出会いがたくさんあって、辛いことよりも楽しいことのほうが多くて、やり切った達成感もあって……こんな旅も、たまには、ね!(次はまた、ツライことのほうが多いアフリカかな。笑)

また、こんな怪物を抱いてこんな顔できる日まで。

これからも自分の釣り旅を続けていこうと思います。

以上で今回のインドレポート3部作は完結となります!

最後まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。

マハシールは一段落したけれどコイ科の旅はまだ続く……というわけで帰国してすぐに、アオウオを追って利根川へ(笑)

そこでの模様は、次回レポートしますね~。

それでは、また!

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幼少期から魚類に興味を持ち、6才で釣りを始める。バス釣りに熱中していた中学時代に小塚と武石が開設していたホームページと出会い、“怪魚”の世界に強い憧れを抱く。大学進学を機に北海道に移住、稚内から与那国島まで、アジアからアフリカまで、国内外を釣り歩いた。サクラマスの研究で大学院を修了、その後も北海道に残り、トラウトやロックフィッシュなど北の大地の釣りを楽しみながら、世界への旅を軸に据えた生活を送っている。