結局イイ魚はこのロッド……“番狂せ屋”「MX-5S」のトリセツ&開発秘話。

モンキス代表の小塚です!

ディアモンの新作「Dear Monster MX-5S」に関して、そういえば自分から解説してなかったことに気づきまして、旧ブログでは新作紹介記事の恒例となっていた“私的サブネーム”の発表含めて書いていきたいと思います。


スペックは、以下。

Length:5’4”ft
Power:ミディアムライト
Action:レギュラーファースト
Lure capa:1〜15g
Line capa:~PE2号
Leader capa:~50lb
Weight:105g
継数:5
仕舞寸法:48cm
トップガイド:5.5mm
リールフット以下:約22cm(アップロック)、約24cm(ダウンロック)

“ディアモンらしさ”から外れる例外は一切無し、50cm仕舞寸や、オールダブルフットガイドなど、「ディアモンの、M“X”のライトスピニングはこれしかない!」と言うセッティングとなっています。

……スペックを見てお気づきの方もいるかもしれませんが、“「MV-55」のスピニング版”と考えていただけると、イメージから遠く無いかと思います(もちろん、そのままブランク流用ではありません)。

長く“珍魚ロッド”と呼び、近年は“モンスターフィネス”なんてコトバも造語してみた、「基本、遊びの竿だけど、間違ってデカいのかかっちゃってもなんとかなる、するっ!笑」って竿です。


本格的に製品化に動き出したのは、2020年の夏。

イワトコナマズを狙ってクランク(メガバス・SRXグリフォン)をPE1号で投げていた際に、目の前に現れたこのビワコオオナマズ(120cm)がキッカケでした。

MX-55」開発時にさまざまテーパー、パワー感を変えて作っていたブランクから自分専用に特別カスタムしていたスピニングロッド、いわば“MX-5S・プロトゼロ(叩き台)”でのメモリアルフィッシュ。

その後、北海道の竹内テスターに送って試しに使ってもらうと、すぐにこんな報告が。


グリップが30cm弱なので……メーターくらいはあるか?

渓流でイワナを狙っていた際に、まさかのヒット。

「やっぱこういう竿、“柔らかいけど強い”やつ、あると心強いですよね〜(小塚)」

「送ってもらったうちで、一番硬い竿(「MV-55」ブランクパワーそのまま、スピニングのガイド設定に変更)が好みです!(竹内)」

「……その辺りの匙加減は、こちらにお任せください笑(小塚)」

こんなやりとりを経て、大型魚が混じる状況で、心のゆとりを持って“遊べる”竿として、製品化に向けて本格的なテストが進んでいきました。

具体的には、スピニングリールでのキャストフィーリングを考慮し、ベリーを1段階柔らかくする方向をメインに細部の調整を進めました。

以下、自分によるテストの過程を、旅先(海を渡っての釣行)に絞ってピックアップしてみます。

■2022年1月/北海道・朱鞠内湖

朝方はマイナス20度にもなる環境でのアイスフィッシング。

凍ったガイドからパキパキ氷を剥がしながらの釣り。


ショートレングスであることは言わずもがな、ディアモンを、MX-5S」を特徴づける、ライトロッドとしては異例とも言えるダブルフット・ダブルラッピングセッティングの恩恵を再確認しました。

■2022年4月/北極圏(アメリカ・アラスカ州)


ワクチンを3回打てば帰国後隔離がなくなる(=事実上、海外旅行解禁)というタイミングで、約2年ぶりの海外へ。

正直、ロッドはなんでも良かったとは思いますが、“ディアモンであること”のプライド。

昔話から妄想で作るロッドではなく、現在進行形で、海外でのテストを経てリリースしたい。

同じアイスフィッシングでも、朱鞠内湖では大きくてもC2000番(ボディ1000番)までのリールで使っていましたが、ターゲットがメーターオーバーと大きいので北極圏ではC3000番(ボディ2500番)をメインに。

加えて、環境が環境であり(最高気温で氷点下)、必然的に、いつものPE(水を引っ張り凍りつく)ではなく、スプールからの放出時に膨らむモノフィラ(ナイロン、バリバス/ビッグトラウト・カッチイロ5号前後)がメインの釣り。

MX-6」のスピニングモードがある中での使い分け(後述)、スピニングリール専用設計で、バットガイドを大きくしたことによる、より大きなリール(大径スプール)を使えるメリットを確認しました。


■2022年7月/小笠原群島

写真が残念ですが(夜間で冷えてるとはいえ置き撮りなら水を撒くべきでしたね、反省)、夕飯後の腹ごなしなど、宿から近所の漁港でサクっと遊んでササっとリリース……常夜灯周りのライトゲームでも活躍しました。


7gのメタルバイブ(メガバス・オニマル)で、五目釣り。

旅先でのメバルプラッキング程度の釣り、ハードルアーでの攻略にちょうどいいと思います

本気の“アジング”、ジグ単の釣りには最適とまではいえませんが、南国の常夜灯周りでヒットするアジは、アジはアジでも上写真のような“メ”アジ。

文字通り目が大きく、メバルとアジが交雑したようなパワー感で、「MX-5S」がピッタリ。

この旅ではやりませんでしたが、エイやサメなど泳がせ釣りのエサ確保などにも重宝するかと……旅先で大物釣りをやった人ならわかると思いますが、エサ確保をいかに迅速にできるかは、結構重要だったりしますよね?


と、そんな時に想定外のサイズ感の魚がヒット!

改めて、「MX-5S」のラクさを感じましたね。

メーターオーバーのアオヤガラでしたが、抜き上げランディングで迅速キャッチ&リリースでした。

■2022年9月/インドネシア(ボルネオ島)

旅のメインターゲットではなかった(そちらは「MX-6Pro」の好敵手)のですが、30Lバッグ1つに荷物をまとめるバックパッキングスタイルでの釣行、「限られた荷物の中で、1本スピニングタックルを持っていくなら何かな?」という旅でセレクトしたのは「MX-5S」。


同時期、「MZ-6S」(仕舞40cm)をはじめ何本かテストしたいスピニングロッドがありましたが、先述のように「MX-6Pro」(仕舞50cm)が旅のメインロッドだったので、

「(より仕舞寸の長い竿を持ってく以上)仕舞40cmの『MZ-6S』(トルザイトチタンガイド・シングルラッピング)よりは、ハードな行程を見据え、「MX-6Pro」(仕舞50cm)と同じ仕舞寸のヘビーデューティーなガイド&セッティング(SiCステンレスガイド・ダブルラッピング)の『MX-5S』を持っていこう」

といった思考回路で選んだわけです。

結果、「これがベスト!」では無いけども、成り行きで小〜中型ライギョ相手の釣りをすることになった際にも、痒い所に手が届く1本であることをを実感しました。


こう言う釣りでは、「MX-5S」のブランクはもう少しバットパワーが欲しい(そんな場合は「MV-55」がベストマッチ)ものの、まぁ、バス用の小型フロッグでブッシュ周りを攻略することも、できなくはなかった。

スピニングでこの釣りをするなら、既存のディアモンでは「MX-6」のブランク、スピニングモードの方が適しています。

同行してもらった川上テスターには、同タイミングで、投げ比べてもらいました。

一見「MX-5S」に見えますが、ブランクは「MX-6」(小径ガイドにご注目)で、リアグリップだけ「MX-5S」に交換してあります(「MX-6」の標準仕様より数センチグリップエンドが延びます)。


MX-6」のスピニングモードは、バットガイドが小さいので、スピニングリールはスプール径の小さな500番(新型ナスキー)をセッティングし、渡しました。

ブッシュまわりで、仮に“怪魚”(10kgオーバー)クラスがかかる可能性があるなら、やはり“6系統”以上がオススメ。

MX-5S」「MV-55」といった“5系統”は、大物狙いに限っては主役は張れない、と思って選んでいただけるとミスマッチが減ると思います。

「この状況、ベストマッチは『MZ-6S』だな……」なんて、日本に置いてきたことを後悔しつつ、とはいえ「MX-6」(スピニングモード)&超小型スピニングリール(PE2号、「怪魚PE Si-X VAMOS」直結)で必要十分に対応できました。

余談になりますが、冒頭のビワコオオナマズ120cmも500番のスピニング(旧型ナスキー)でのキャッチ。

軽くてコンパクト(かつ安い)500番のスピニングリールは、旅人には特にオススメ、もちろん「MX-5S」とも好相性です。

MX-5S」ならでは、の釣りで言うと、基本的にオープンスペース、時にこんなややこしい場所(背景に写り込むこんなスリット)に、3gのスピナーを通すような釣り!


今回スピナーにヒットしたのは、綺麗なオセレイトスネークヘッドでしたが、狙っていたのは昆虫食性の強い「レッドチーク」と言う珍魚。

下写真は2018年の釣果、当時はプロトのベイトロッド(“黒いディアモン”……以後、HUNTERSやMZに分化、一部継続テスト中)で手にしたレッドチークです。

釣れたは釣れたけど、タックルセッティングに改善の余地は大有り。


昆虫など、小さく軽いものを食べる魚を狙う際、つまり軽いものを投げる際に、海外でもライトなロッドが必要な状況があり、かつ、時にバットパワーが要求される。


比較的オープンスペースに群れているこの珍魚、この時は、ハチ(日本のアシナガバチくらいの大きさ)にハッチしている状況でした。

5gメインに下は3gまでスピナー(飛距離が出るマイヤーパンサー)を投げてましたが、1gクラスかつキャスト抵抗の大きな(=飛ばないがゆっくり引ける)、小さなスピナー(ARスピナーなど)をストレスなく投げられたらな、とか……ライトな状況になればなるほど、要求が細分化するので、そんな旅先でのワガママを懐深く受け止められるテーパー、パワー感に「MX-5S」を着地させました。

旅先に持っていくライトロッドは、どんな竿を選べばいいか、楽しくも悩ましいですよね……。

このあたりの匙加減、「どんな状況に遭遇する可能性があるか?」という“状況の分母”は、数字で語れる部分で2023年2月現在、56カ国・1430日(計66回)を釣り歩いてきた私・小塚の経験を信頼していただければと思います!


■2023年1月/ブラジル

仕様確定後、“テスト”と言うよりは“答え合わせ”になりますが、先月はブラジルにも「MX-5S」を携えて行ってきました。


ボルネオ島でのバックパッキング“旅”(荷物をできる限り減らしたい)とは異なり、現地サービスを事前手配し、ロッジを予約していくスタイルの“旅行”だったため、テスト中のロッドは、ありったけ持って行きました。

その上で今回、「MX-5S」がハマったな〜と言うのは、こんな釣り。


“フルーツ・ポンチング”と命名して楽しんだ、木の実(フルーツ)のノーシンカー。

エサ釣り的にいえば完全フカセで狙うパクー類を狙う釣りに、ズバリでした。

先のボルネオ島のレッドチーク釣りでも「軽いものを投げる際に、海外でもライトかつバットに力があるロッドが必要な状況がある」と紹介させていただきましたが、今回のアマゾンでは、昆虫ではなく、柔らかいフルーツのキャストにそんな状況が。


同行した吉田テスターも近々まとめてくれるようですが、このパクーと言う魚、同体重比なら、淡水魚で1番引くかと。

パプアンバスよりスピードがあり、ジャンプする!

……でありながら、食うのは木の実や昆虫、水草など、小さく軽いエサだけ。

今回は、木の実を専食している季節にあたり、そこにハマりました。


他には、こんな釣りにも。

ボートマンに「クリンバ、と言う魚を狙うぞ!」と言われ、どんな魚かもわからず挑戦したのは、トレブルフック1つを使った、原始的な吸い込み釣り。


「どんなアタリが、その本命のクリンバかもわからんが……まぁすぐ釣れるだろ」と軽い気持ちで釣り始めましたが、終わってみれば半日やって、ボートマンと1匹ずつと言うシビアすぎる釣りモノでした(笑)

アタリも、掛けて「魚、デカっ!」とビックリしたほど、小さい。

舐めるような捕食スタイルなんでしょう、掛からない。

日本式の吸い込み仕掛けがあれば勝負は早かった気もしますが、持ってきていないわけで。

突然訪れるこんな状況、決してベストな狙い方ができない状況を、臨機応変にカバーする。

めちゃめちゃ苦労して釣り上げた“怪魚”クリンバは、時間をかけた割にはコイに収斂進化したカラシンとでも言うべき地味な魚でしたが笑、個人的には思い出深い1匹になりました。


以上、「Dear Monster MX-5S」に関して、開発の経緯から、テストの過程、自分なりの使い所やメモリアルフィッシュをざっくり紹介させてもらいました。

個人的なサブネーム(印字はしない)を、“UPSETTER”(アップセッター、番狂せ屋)と呼んでいるこのロッド。

ライトロッド=小物用、なんて誰が決めたの?

2023年現在も、ビワコオオナマズの自己ベストは「MX-5S」(の叩き台サンプル)です笑。


手にしてくださった皆さんも、大事に酷使してもらえたら嬉しいです!

株式会社モンスターキス代表。怪魚(巨大淡水魚)を追いかけ、これまでに世界56か国を釣り歩く。物心つく前から魚(釣り)に熱中し、30年以上経った今日も継続中。北陸・富山に生まれ育ち、小学4年時にキジハタからルアー釣りを開始、中学・高校時代はバス釣りに熱中。大学進学以後は「今しかできない釣りを。遠くから行こう!どうせなら大物を狙おう!」と世界の辺境を目指した結果、いつしか“怪魚ハンター”と呼ばれ、それが仕事になり、旅は今も続いている。著書多数、近書に「怪魚大全」(扶桑社)。剣道3段。趣味はハンティング(鉄砲)