「君は尽くしても尽くし足りない女神」西パプア遠征(総括編)

このレポートでは、遠征の最後に釣れた魚と、今回の西パプア遠征についてを総括して報告したいと思う。

大きなGTが釣れたことを仲間に話すと自分のことのように喜んでくれた。

感動を分かち合えるのも、友人と行く遠征の醍醐味だと思った。

でも、その上で……。

次の出船には1人で乗りたいことを伝えると、僕の想いを汲み取った2人は半ば呆れながらも快く送り出してくれた。

連日、炎天下での釣り。体温を奪う突然のスコール。

情け容赦ないGTと向き合って疲労はピーク。

だけどもう、ここからは自分だけの時間。

そして舞い戻ったいつものポイント。

見慣れた景色。

上げ潮いっぱい。

ベイトも充分。

向かって吹く風にライナー気味にキャスト。

MGX-∞S」の張りを持たせた7’10″ショートモード用ティップは、まさにアゲインストでも軽快にルアーを投げるために作った。

気がつけば、大口径ポッパーをあえてリーリングで動かす、ぼくらが「ぶん回す」と呼ぶルアーアクションを無意識に試していた。

腕の痛みと引き換えにできる泡の軌道。

それは、引き出しの一番奥に仕舞っていた技術、初めてGTを釣ったときの動かし方だった。

そして、それをGTは選んだ。

猶予のない暴力的な引きに反射で応えた。

フッキングは決まったように思ったが、ドラグの悲鳴が不安を掻き立てる。

船ごと引っ張って浅瀬を目指すGT。

とにかく巻いて距離を縮める。

小舟の少ない利点は、魚が船ごと引っ張るのでよりプレッシャーがかかること、そして、魚の真上に移動しやすいことだった。

真下に走るGTを受け止める一番辛い時間。

「相手も辛いぞ」と自分を鼓舞する。

MGX-∞S」も限界まで曲がり、魚をしっかりと受け止めてくれた。

体重は正義。

健康を犠牲に得た力。

魚との距離が詰まるにつれて、ドラグを調整して魚が首を振ったとき急にテンションが緩まないようにした。

船底にラインが擦らないようにコントールしながら、最後の力を振り絞る。

そして、水中に見えた白い魚体に一生に一度のお願いが叶ったことを確信した。

釣り上げたGTはこれまで見たどの魚よりも大きかった。

夢が叶った実感がこみ上げる。

たどり着くまでに時間がかかった。

でも、それは必要な時間だった。

旅も終わりに近づいていた。

あの魚を釣り上げたあとも釣りを続け、遠征の目標としていた20キャッチを達成することができた。

最終日、最大魚と同等かそれ以上のやつを掛けたがフックアウトしてしまった。

そいつは70cmほどのバラクーダを追いかけまわしていた。

フィールドで時折感じる、魚への畏怖と憧れが入り交じった特別な感情。

海の上で、もう笑うしかなくなるたびに、この釣りを一生続けていきたいと思う。

終わりを常に見据えていた青春時代の旅と、一生終わらないことを願うオトナな遠征。

どちらも体験した上で言えるたった一つの真実は、最後の最後は必ず「またいつか」と思うこと、そしてそれは「そのうちきっと」叶うということ。

【まとめ】

最後に忘備録として箇条書きで情報を書き残したい。

・今回の旅の予算は7泊8日で約60万円、個人で手配した分他の地域よりも少し安い。

・淡水は3人でパプアンバス2匹、バラマンディ4匹、その他グルーパーやメッキなど。

潮のコンディションが釣果を左右したように思う。

GTは全員で40匹、そのうち自分は23匹。

1人で海に出た時(ボート1艇釣り人1人の時)に数を稼げたのがよかった。

ポッパーでの釣果が2/3ほど。

ダイビングペンシルやシンキングルアーとローテーションが効果的。

・日焼け&虫対策は必須、出国前の体調管理は万全に。

・最終日の飛行機が乗客不足でキャンセル、保険に入っておけばよかった。

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高校時代に小塚の著書「怪物狩り」を読み、それきっかけに大学進学後は南米アマゾンのジャングルや、アフリカの大地溝帯、果ては中東イスラム圏まで、計7ヵ国を旅する。学生時代の9回の釣り旅はすべて、行き当たりばったりの“旅的”スタイル(個人釣行)にこだわった。大学卒業後は一般企業に就職。ライフスタイルの変化に対応し、オフショアに目を向け、GTやヒラマサのキャスティングゲームに没頭。直感的に行動した結果、報われてこなかった半生を反省し、「感じるな、考えるんだ」と竿を振る。