前回のレポートでは西パプアでの淡水について報告したが、今回はGTをターゲットに絞ったキャスティングゲームについてお伝えしたい。
淡水の釣りでは幸いにもパプアンバスとバラマンディを手にすることができた。
状況は思わしくなかったが、一緒に来た友人がサイズアップを狙いたいと言うので、もう一日だけ村での滞在を延長することになった。
自分は淡水の釣りに満足していたので、友人とは別れてガイドと2人で海に出てみることにした。

GT釣りを始めて4年。
聖地と呼ばれたコモド島やインドのアンダマンにも行ったが、サイズに恵まれることはなかった。
海外のフィールドもたくさん釣れたのはかつての話で、いまでは昔ほどの爆発力が息を潜めていることもよく耳にした。
今いる西パプアも、日本人が入り始めた10数年前は1チームで100キャッチというパラダイスだったようだが、直近で行った方やインドネシアの友人に聞くとアベレージは10~20kgで数もそこそこという具合だった。


普段よりもライトなタックルを持っていくことを勧められたが、行くと決めた以上はそのフィールドで一番大きい魚を狙いたかったので、タックルは日本で使っているものをそのまま持っていくことにした。
トルク重視の「MGX-∞S」を2本に、操作性に長ける「MGX-8S」を1本。
14000番のリールにPE10号を目いっぱい巻いた。

島から走って30分ほどでポイントについた。
海原の真ん中でベイトについたGTを狙うらしい。
地形にまったく依存しない狙い方は新鮮だった。
ベイトを探して船を走らせながら、マグロのナブラ撃ちのようにベイトが水面をざわつかせている真ん中にルアーを打ち込む。

船からのぞき込むと水深は30m以上はあるようなので、アピール重視でポッパーを選択した。
ボートが小さく、立ち位置から水面まで近いことも総合判断して、「MGX-∞S」は硬く短いショートティップの7’10”仕様で使用する。
前回、遠征で行ったアンダマンでのことを思い出しながら、ロッドを水面にたたきつけるようにルアーを動かしていく。
3アクションして派手に水面を賑わせた後、弱った魚をイメージして長めのポーズで漂わせておくと水面が炸裂した。

乗っているボートは、日本のもの(一般的なオフショアキャスティング船)よりも小さく、足場が悪く安定しない。
不慣れなファイトで浮かせたのは、25~30kgのGT。
この遠征での1匹目にしては上出来だ。

その後も千本ノックのごとくベイトボールを打ち続け、6匹のGTを手にすることができた。
海外の魚影の濃さに圧倒されるばかりだった。


拠点を別の島に移して、残りの4日間はGTのみに集中することにした。
拠点となる島は白い砂浜が広がる、まさにリゾート。
足元にはたくさんの小魚が泳ぐ。
景色に心は癒されたが、釣りに使われる船はやはり木造の小舟。
魚探無し、落下防止のレール無し、ランディングネット無し、ボートマンは村に住むおじさん……。
限られたカードでの勝負しなければならない状況に、遠征が徐々に旅的になって来たのを感じた。

1日を費やして目ぼしいポイントを全て回ってもらうことにした。
ポイントは基本的に島の周りで、目についたベイトボールを狙えと話すボートマン。
このエリアではGTがベイトに依存する傾向が強いらしい。
前のエリアと同じようにポッパーの3アクション後のロングポーズが効いたので、この釣り方で組み立てることにした。
また、ボートマンからは特に戦略的な意図を感じなかったので、ポイントの移動やボートのつける場所などは自分で指示を出すことにした。
遠征も終わりに近づいてきたので、無駄な時間を使うのは避けたかった。
ポイントを回る中で一か所、じっくりと腰を据えて釣りをしたい場所があった。
40mからなだらかに駆け上がり、トップは海底が見えるほどまで浅くなる馬の背に潮が走る大場所。
そしてなぜかベイトが大きい。
一発の大物を狙って、このポイントに一日も何度も入る直すことにした。

そんな決意を決めたものの、翌日ポイントへ向かうと潮がなく、ベイトも浮いていない。
これまで好調だったポッパーにも反応がない。
それでも時合は来ると信じて、ここで粘ることにした。
ルアーローテーションをしながらキャストを繰り返す。
ダイビングペンシルに小さいのが出た。
魚の活性は徐々に上がっていると感じた。
ふと、「今日はベイトを水中で捕食しているかも?」と思い立ち、これまで通してきたポッパー&7’10”ショートモードから、シンキングルアー&8’3″ロングモードに変更する。
キャスト後の10カウントしての巻き始めで竿を引ったくられる。
水中で食わせたので疑心暗鬼だが、GTならばいいサイズに違いない。
幸い、馬の背のトップは過ぎていたので、ドラグを緩めて落ち着いてファイトすることにした。
「MGX-∞S」のロングティップが柔軟に引きを受け止めてくれる。

船際でざばりと姿を現したのは40キロを超えると思われるGT。
おじさん(ボートマン)では1人で船に上げることができず、自分はルアーを掴んでフォローし、2人で強引に引き上げた。

これまで遠征を重ねてきたが、このサイズにはなかなかお目にかかれない。
ポイントもルアーも自分で選んでの一匹が、さらに喜びを大きくした。

この魚はきっと自己最大に違いないが、早くリリースしたかった。
次のキャストが待ち遠しい。
きっともっと大きな魚がいる。
その確信が持てるこの海はまさに楽園だった。

釣りはここで終わらない。
次のレポート(総括編)ではこの遠征の最大魚について報告したい。

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